第2話

「なんだ?犬か?猫か?」

 何だって、こんな日に…

人の玄関先で、捨てるんだ?

老人は思いっきり、顔をしかめる。

「いいえ、おじいさん。

 犬や猫じゃあないみたいですよ」

 妻はストンとしゃがみ込むと、そっとバスタオルを開いて

みせる。

そこには…まだ生まれたばかりの、小さな赤ん坊がくるま

れていた。

「おい、捨て子だ!警察に電話しろ!」

 厄介なことになったぞ!

老人は「どうにかしろ」とイラついた声を出す。

 だが、妻はそれを無視して、

「おとなしい子ですねぇ。

 こんな嵐の中なのに…ぐっすり眠って…」

老妻は、夫のように冷たい人間ではない。

「可哀想にねぇ~

 あなたのお母さんは、どこ?」

そっと、バスタオルごと、赤ちゃんを抱き上げた。

「おまえ…拾うつもりなのか?」

だが老人は、面倒ごとには巻き込まれたくはないのだ。

「そんなつもりはないけど…

 でも、この子、このままだと、死んでしまうわ」

それで、いいのですか?

妻の責めるようなまなざしに、老人はしぶしぶ引き下がった。



「ねぇ、なんでこんな日に…

 赤ちゃんを拾うわけ?」

 母親からの電話を受けて、娘は駆け付けるなり、早速キャンキャン

と噛みつく。

「そんなことを言っても…

 放っといたら、死んでしまうだろ?」

だが慣れた様子で、母親は聞き流す。

「で、頼んでおいたものは、持ってきてくれた?」

娘をねぎらう間もなく、彼女は手を伸ばす。

「もぉ~ちゃんと警察にも、連絡するのよ」

娘も鬼ではないので、しぶしぶ立ち上がると、紙おむつやミルクなどの

一式を取り出す。

「ホント、恩にきるよ」

はいはい。

娘は、自分の母親が言い出したら聞かない、とわかっている。

「で、オムツの変え方は…覚えてる?」

そう言うと

「見ててよ」

と、紙おむつと、お尻ふきを取り出した。

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