13

オリハルコン自体がほんのりと光を発しているので、日が沈んだ今でも洞窟の中は明かりをつけずとも、視界が利いていた。

エイヴァリに剣を向けながら、レウリオは少女へと目をやる。

「サナ、立てるか?」

少女は、再び驚きレウリオを見た。

今、レウリオは何と…?


「い…今…私のことを…」

「ああ、サナだろう?」


少女は何をどう言えばよいのか、口をパクパクさせた。

「自分も大変な役割を担っているというのに、他人の心配をするお人好し。

 その上、昼と夜で髪や目の色が変わるなんて面白い奴だ、是が非でもその変わる瞬間を見てみたいじゃないか」

レウリオがからかうように少女に向かいながら、いつものように笑っている。

思わず息を飲み凝視した。


「カイなんて、でたらめな名前教えて…それとも、サナのほうが嘘なのか?」

笑ったままのレウリオの言葉に、サナは答えることも忘れ、ただ目を丸くしているだけだった。

どっちも本当よ……。

その言葉は口から発せられなかった。


「で?…他に出入り口は?」

という言葉に、サナはようやく我に返り首を横に振った。

「い…いいえ、ないわ。ここの奥は、もう、遺跡があるだけで行き止まりよ。

あったとしたら、代々の守り人は、みんな逃げているはずだもの」

その言葉に、レウリオは、やれやれ、とため息をついた。

「やっぱり、お前、一人でこの場に残るというのが役目だったんだな、見張り役とやらの」

え? とサナは、ぎくりと肩を震わした。


「今はそんなことを話している場合じゃないな。早くしないと…」

そう言われて、サナは気がついた。

そうだ、早くしないと…

サナは対峙しているエイヴァリに目を向けた。

エイヴァリは、あの宝剣とやらを手にしている。

まともにやりあっても意味がない。

そう思ったサナは、手近にあったオリハルコンの塊を手にすると、エイヴァリに向かって力いっぱい投げた。

それはエイヴァリの左頬をかすめる。


「っ!!何をする…」

よろけながらギラリ、と光る銀の目で睨んでくる、彼の左頬は、火傷をしたようにただれていた。

そう、抗体を持たない生物がオリハルコンに触れるとこうなるのだ……

燃えるような金属…本当に、人をも燃やす金属なのだ。


「早く、今のうちに!!」

逃げて、という意味でサナは叫んだのだが、レウリオは剣を構えなおした。

「な…何をしてるのよ、逃げてよ!! 苦しいはずでしょう。オリハルコンの所為で!!」

サナの言葉通り、レウリオの足は若干ふらついている。

確かに良くない、と思い直したらしいレウリオは

「これ、一口でどれくらいの効果が出る?」

と懐から取り出したのは先ほど投げ渡した抗体だ。

それを見たエイヴァリは、一瞬でレウリオに近づく。

「それさえあれば、お前に頼らずとも…」

奪い取ろうと売れを伸ばした。

「いや、お前にはやらん」


レウリオは腰に巻き付けている道具入れの小さな鞄から丸い何かを取り出し、一瞬で火をつけ、サナとは別の方向のある一点を目がけ投げつけた。


サナもエイヴァリもそちらに気を取られる。

レウリオは次々と奥へと向かい何かを投げていた。

そして、手を伸ばしサナを引き寄せる。


その直後だった。

大きな爆発音が次々と起き、それと共に地響きがなる。



爆発のために起こった揺れのために、エイヴァリがバランスを崩した。

サナはレウリオに引かれるがまま、洞窟を出ようとしていたが、何かに強く足を取られレウリオから手を放してしまい、その場に転んだ。

振り向くと、エイヴァリがサナの右足首を掴み、銀の瞳で見つめている。

くいいるような視線には、エイヴァリのおびえと恐怖があった。

…ここで一人で埋もれるのはいやだ…

確かに、そう言っているのがわかる。オリハルコン自体がほんのりと光を発しているので、日が沈んだ今でも洞窟の中は明かりをつけずとも、視界が利いていた。

エイヴァリに剣を向けながら、レウリオは少女へと目をやる。

「サナ、立てるか?」

少女は、再び驚きレウリオを見た。

今、レウリオは何と…?

「い…今…私のことを…」

「ああ、サナだろう?」

少女は何をどう言えばよいのか、口をパクパクさせた。

「自分も大変な役割を担っているというのに、他人の心配をするお人好し。

 その上、昼と夜で髪や目の色が変わるなんて面白い奴だ、是が非でもその変わる瞬間を見てみたいじゃないか」

レウリオがからかうように少女に向かいながら、いつものように笑っている。

思わず息を飲み凝視した。

「カイなんて、でたらめな名前教えて…それとも、サナのほうが嘘なのか?」

笑ったままのレウリオの言葉に、サナは答えることも忘れ、ただ目を丸くしているだけだった。

どっちも本当よ……。

その言葉は口から発せられなかった。

「で?…他に出入り口は?」

という言葉に、サナはようやく我に返り首を横に振った。

「い…いいえ、ないわ。ここの奥は、もう、遺跡があるだけで行き止まりよ。

 あったとしたら、代々の守り人は、みんな逃げているはずだもの」

その言葉に、レウリオは、やれやれ、とため息をついた。

「やっぱり、お前、一人でこの場に残るというのが役目だったんだな、見張り役とやらの」

え? とサナは、ぎくりと肩を震わした。

「今はそんなことを話している場合じゃないな。早くしないと…」

そう言われて、サナは気がついた。

そうだ、早くしないと…

サナは対峙しているエイヴァリに目を向けた。

エイヴァリは、あの宝剣とやらを手にしている。

まともにやりあっても意味がない。

そう思ったサナは、手近にあったオリハルコンの塊を手にすると、エイヴァリに向かって力いっぱい投げた。

それはエイヴァリの左頬をかすめる。

「うっ!!何をする…」

よろけながらギラリ、と光る銀の目でサナを睨んだ。

左頬は、火傷をしたようにただれている。

そう、抗体を持たない生物がオリハルコンに触れるとこうなるのだ……

燃えるような金属…本当に、人をも燃やす金属なのだ。

「早く、今のうちに!!」

逃げて、という意味でサナは叫んだのだが、レウリオは剣を構えなおした。

「な…何をしてるのよ、逃げてよ!! 苦しいはずでしょう。オリハルコンの所為で!!」

サナの言葉通り、レウリオの足は若干ふらついている。

確かに良くない、と思い直したらしいレウリオは

「これ、一口でどれくらいの効果が出る?」

と懐から取り出したのは先ほど投げ渡した抗体だ…

それを見たエイヴァリは、一瞬でレウリオに近づき、その瓶を奪い取ろうとした。

「それさえあれば、お前に頼らずとも…」

「いや、お前にはやらん」

レウリオは腰に巻き付けている道具入れの小さな鞄から丸い何かを取り出し、一瞬で火をつけ、サナとは別の方向のある一点を目がけ投げつけた。


サナもエイヴァリもそちらに気を取られる。

レウリオは次々と奥へと向かい何かを投げていた。

そして、手を伸ばしサナを引き寄せる。


その直後だった。

大きな爆発音が次々と起き、それと共に地響きがなる。



爆発のために起こった揺れのために、エイヴァリがバランスを崩した。

サナはレウリオに引かれるがまま、洞窟を出ようとしていたが、何かに強く足を取られレウリオから手を放してしまい、その場に転んだ。

振り向くと、エイヴァリがサナの右足首を掴み、銀の瞳で見つめている。

くいいるような視線には、エイヴァリのおびえと恐怖があった。

…ここで一人で埋もれるのはいやだ…

確かに、そう言っているのがわかる。


それを見たサナは優しく笑う……そうだね、今回の守人は私だもの…

最後は、ここで終わった方が筋というものかもしれない。


「サナ!!!」


直後、ものすごい音と共に、洞窟の天井が、そのままの形で、落ちてくる……



 

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