マネージャーの章 其の一 なんと……

「うわぁぁぁん!ダディ、いや社長!何でボクってばクビなんですか?結構マジ半端なく頑張ってきたのにぃ!」

 情けない……まさか、ダディの胸にすがり付く事になるとは。そして、そのタイミングで双子ふたりは帰宅して来た。


「たっだいまぁ!艶島あでしま君テレビ観てくれた?って、何してんの?パパの胸で……」

「と、斗威とうい君……まさか、その綺麗な女の人を連れ込ん……」

 あぐちゃんは眉を八の字にし、のんちゃんは涙目で声を震わせた。

「違う!違うんだ!ダディがボクにクビ宣告したんだよぉ。うわぁぁぁん!誕生日なのにぃ」

「えええっ?ちょっと話に追いつけないんだけど?クビってどういう事、パパ?」

斗威とうい君、今日誕生日だったんだ……」

 現場は混乱した。双子ふたりはワケが分からない。そりゃそうだ、ボクにも分からんのだから。

 ダディは相変わらずのテンションで、双子ふたりに説明した。


「つまり、艶島あでしま君はクビで、そちらの方が新しくお手伝いさんに?!」

「黒田響子と申します。以後、お見知り置きを」

斗威とうい君は、クリスマスイブが誕生日で……ぼっち?!」

 のんちゃん、ちょっと話がズレてるよ……


Ohオゥ!言い忘れました!足でま君、キミは明日から『なな色イルミネーション』のです!ハハッ」


 ……


「ええええっ?!!!」

 双子ふたりとボクは、初めてハーモニーを奏でた。


 杜宮もりみや大器だいき……この男、とぼけたふりしてとんだ食わせ者だった!!

 つまり、こう!昨日まで17才だったボクは、労働基準法第61条により22時以降は働けない。しかし、だ!18才からは何時でもいいのだ!例え夜中だろうが朝方だろうが……コイツは、ボクを馬車馬の様に働かせる寸法だったワケだ!しかも、『なな色イルミネーション』のマネージャーだと?あん?一体どういうつも……えっ、『ななイル』?!ボクが推しのアイドルグループのマネージャー?!


「あ、あのぉ……ダディ、いえ社長様!何故、ボクのような下等生物をマネージャーに?」

「え?だって、足でま君『ななイル』好きじゃん?ハハッ」


 杜宮もりみや大器だいき……この男、とぼけたふりして変化球無しのどストレートオヤジだった!!

 つまり、こう!18才になったボクに、ガチのバースデープレゼントだったのだ!!クゥゥ!ボクってば、人生薔薇色でしょうがぁ!!


「あの〜、わたしは斗威とうい君が一緒にマネージャーをしてくれるなら嬉しいし助かるんけど。結構時間が不規則な仕事だし…その、ラノベ作家になる夢に支障が出たりしないかな?」

「の、のんちゃん……」


 嗚呼ああ……ボクの将来を心配して、いや『ななイル』に嫉妬かな?なんて可愛いんだ。大丈夫だよ、のんちゃんは『ななイルカノジョたち』に負けないくらい美しいのだからぁ!!


艶島あでしま君……心の声出てっから」

「えっ……」

 やってもぉたぁあ!!のんちゃんお顔が真っ赤っかじゃあーりませんか!

Heyヘイ!足でま君は小説を書くのかい?ダディに読ませてごらぁん!ハハッ」

 そうだ!畑は違うがダディもエンタメ界の王じゃないか!読んで貰おう!こりゃ、『マネージャー』と『ラノベ作家』二足のわらじも見えてきたぞ!!

「ダディ、実はもうすぐ完成の自信作があるんです!是非とも読んで感想を!!」


 ボク『渾身の一作』を杜宮もりみや家の皆に読んで貰う事になった。勿論ひいき目は無し、正直な感想を貰う!絶対的な自信があるし、皆の感動した顔が頭に浮かんでいる!ボクってば、日本製最高スペックのノートパソコンPAIOパイオをダディに手渡した。

 しーん……

 フゥ!この静寂と緊張感さえワクワクするぜ。

「ダディ、どうでしょうか?」

ohオゥ。ハハッ」

 ナ、ナンデストォ!このジジイ!あ、そうか!ラノベとか読んだこと無いに違いない。全くセンスが無いぜ、ちなみにファッションもな。

双子ふたりはどう?忖度無しで!」

「えっと、ごめん艶島あでしま君……?」

 ガーン!う、嘘だろあぐちゃん?

「のんちゃん、どう?遠慮なく言ってくれ!!」

斗威とうい君、ごめんなさい。あの、その……?」

 ガガーン!!に、日記……?!

「そうだ!響子さん、読んで下さい!マジのやつ、マジの感想を!」

 しーん……

艶島あでしま様、わたくし言葉にする事が苦手ですので、カラダで表現させて頂くと……こうです」

「オイィッ!膝でパソコンを逆関節に折ってんじゃねぇ!2in1のタブレットタイプじゃねんだよ!!うわぁぁぁん!ボクのPAIOパイオォ!がぁあ」

 ぐすんっ……一体どこが駄作なんだよ?


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

『転生しましたら賢者でございましたので勇者のパーティーに同行させて頂く話』


 俺の名、前はなんとペペロンチーノ。なんと一般の人だ。みそしる、を食、べたら○んだ。なんとドクが入、ってたのですよ。そしたらなんと転生しましてなんと賢者にな、りました。なんとギルドに行って、なんと勇。者にパーテ、ィーになりませ、、ぬか?と、なんとお誘いを受、けますた、なんと悪いヤツみたいなヤっツをやっつけにイクことになりま、し、た。なんと……

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 翌日……ボクってば、響子さんに引き継ぎをした。数日の準備期間を経て、『なな色イルミネーション』のマネージャーへ転生したのであった。



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