お手伝いさんの章 其の十六 お誕生日に……
12月24日 クリスマスイブ
外の空気は冷たい。けれど、街の中心部は色を変え、温かい雰囲気に包まれる。デパートのショーウィンドウはクリスマス一色。どこからとも無く聴こえて来るクリスマスソング。装飾された大きなクリスマスツリーの前ではしゃぐ子供たち。その様子をスマホにおさめ微笑むママやパパ。サンタコスでケーキを売る学生のアルバイト。腕を絡めて歩く幸せそうな恋人たちは、いつもより増えているように感じる。目を輝かせてショーケースの中の指輪を見ている彼女。それを見て微笑む彼氏。12月24日は、皆が作り上げ、皆が幸せになる特別な日なんだ。
……が、それは一部の人間な。仕事が忙しくてそれどころじゃないヤツ。受験を控えてピリピリしてるヤツ。恋人たちのこの字も知らない純真無垢なヤツら。
クリスマスを派手にやって、その後1週間やそこらで神社にお参りするとか、どんだけ開放的な民族なんや……ブツブツ
と、こんな風に捻くれまくったボク
本日、
あー、全然寂しくねぇー。
……さて、ボクってば野心家だ。必ずや夢を叶える!いや、夢では無い!目標だ!来年、ラノベ作家デビューするのだ!!
そうだ、ボクに自由時間など無い。今日はひたすらペンを走らせる!今日の目標は2万文字……いや、5000文字にしておこう。無理は禁物、いいモノが書けなくなる。
フゥー、だいぶ進んだぞ。えーっと……430文字。
……さてと、気分転換だ。市松人形型ドローン『お松ちゃん』と遊ぼう。おおっ、流石に外は冷えるね。よしっ!起動!
ハタハタ……ブゥーン……
「さあ、飛べ!お松ちゃん!」
おおっ、黒髪がなびいて綺麗だよお松ちゃん。ほほぅ、こうして上空から望遠でカメラを覗くと、御用達のスーパーがちょっとだけ見える。凄い物を作ったな、のんちゃん。
あ!雪……どうりで冷えると思った。
「今年はホワイトクリスマスかぁ……クソが」
さ、風呂に入って温まろうっと。結構風呂でエピソードネタが浮かんだりするタイプなんだよね、ボクってば。
あー、いい湯だった。麦茶飲んで、続きを書こう。
フゥー、結構進んだぞ……860文字。気が付けば外は真っ暗じゃん。今日はこれくらいで勘弁してやるか。そろそろ『ななイル』が出演する歌番組が始まるしな。
確か19:00から20:00枠だったな。流石『ななイル』、ゴールデンタイムじゃないか!おっ!ほほぅ……KーPOPのグループも嫌いじゃないぞ。つい振り付けマネてしまうぜ。
あ!出ました『なな色イルミネーション』!
何だこのバースデーは。まぁ、しゃーない。もうひと筆やっとくか!
フゥー、ヤバッ!4740文字まで書けたわ。やればできる子なんだよなぁ、ボクってば。もう22:48かぁ……トイレ行って寝よ。
バン!
「ヒィィィ!え?停電?停電なの?」
何も見えねぇ……だが、耳が敏感になる人体の不思議。
カサ、カサカサ……タッタッタッ
「ヒィィィ!!」
ちょっ、誰かいるじゃん。確実にいるじゃん……何なんだよ。泥棒さんなの?それとも、この世の者では無い系?ヤダ、どっちも怖い!!
えっ!ちょっ……近い、絶対3メートル以内に、いる!
「誰だ!かかって来いオラァ!」
パッ
「えっ、眩しっ!」
「
「ダ、ダディ?!」
まさかのダディ……しかも、台車の上にやたらデカいプレゼントの箱。これ、あれだ……人、入ってるわ絶対。
「ん?てか、何でボクの誕生日を知ってるんスカ?」
「何で?って、雇用契約書に書いてあるよぉ!ハハッ」
あー、そうね……そりゃ知ってるわ。
「足でま君に、バースデープレゼントを用意したよ!ハハッ」
「イヤ、やたらデカいッスね……」
あ!こりゃあれだ!
「さぁ、ではオープン!ハハッ」
ばんっ!
「
え……?
黒髪ロングのお姉さん……誰?しかも綺麗な
「えっと……ダディ、コチラの方は?」
「よくぞ聞いてくれた!」
イヤ聞くだろ確実に……。
「この女性は、
「お、お手伝……あー!最近のんちゃん忙しいから?!代わりに?!」
「
……
……ハァア?!!クビ?今クビって言った!?
「イヤ、ちょっ……待っ!ボクってば、誕生日にクビィィ?!!」
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