出逢いの章 其の二 推し宅にお泊まりとか異常事態

 カタカタカタカタカタ……

 ボクってば、身を縮こませ、土下座しながら小刻みに震えていた。何か知らんが、目の前に杜宮もりみやあぐと、そのファミリーがいるのだ。まじで。


「ボ、ボクってば艶島斗威あでしま とうい17才。引きこもりニートのドルオタです」

ohオゥ君!杜宮もりみやのパパだよ!よろしくぅ!ハハッ」

「あのぉ、陽気なお父様。です……」

「足でま君!何だね、初対面でいきなりお父様とは!!」

「ヒィ、ヒィァア!スミマセンスミマセン」

「ダディと呼びたまえ!ハハッ」

「ちょっと、お父さん。恥ずかしいよ!」

 そうだよ、恥ずかしいよダディ。のんちゃんの言う通りだよ。てか、ボクの苦手な属性だわ……。


「のんちゃんを助けてくれたんだ。ありがとね!私は杜宮あ」

「存じ上げておりまするぅ!!杜宮あぐ17才、11月22日生まれ、宮城県仙台市出身、身長156cm、体重はひ・み・つ、好きな食べ物はプリンとずんだ餅、特技はフラッシュ暗算と乗馬、第4期『なな色イルミネーション』不動のセンターポジション、メンバーカラーブルーゥ!!ハァハァハァ……あ、しまった」

「ほほぅ……キミは『けやき』(ななイルファンの愛称)かぁ。しかも私推しの……」

 ちょっ……その氷のような視線!!そんなに冷たい表情はステージじゃ見た事が無い!


 ……嗚呼ああ、幸せ。


「ちょっと、何で嬉しそうなワケ?」

「え?イヤイヤイヤ、違います!ごめんなさい!」

「ふふっ、艶島君って、面白いのね」

 グハァァ!!まさかその笑みをこんなに間近で拝めるとは!!心の臓が破裂してまうでしょうが!!


「あの、あで、艶島さん……本当にありがとうございました」

「そんな!ボクの方こそ、こんなに手厚く手当てして貰っちゃって!あ、呼び捨てでいいよ!ボクは、『のんちゃん』って呼ばせて貰うから」

「じゃあ、艶島あでしま

「え……っと、名前の方が良いかな?!斗威とういで」

「あ、あ、名前!ごめんなさい!じゃあ、あの、斗威君……で」

 のんちゃんは、頬を桜色に染め、はにかんだ笑顔を見せた。あぐちゃんとはまた別の魅力で……ボクってば、今まで感じた事の無い不思議な気持ちになった。それは決して悪いものでは無く、なんか、こう、ドキドキするけど、心地良い気持ちだ。


、丁度ランチの時間だ。食べていきなさいYoヨー

「ええっ!そんな、滅相も無い!では遠慮なく」

「ふふっ。艶島君、やっぱ面白いわ」

 つい、2時間前とは180℃違う、正に異世界とでも言おうか……目の前には推しメンの杜宮あぐちゃん、美人な妹のんちゃん、そして……隣には派手なウザいオッサン。狐につままれたような……とは、この事だろう。


「ところで、のんちゃんはあぐちゃんのひとつ年下くらい?」

「え?いえ、わたしとお姉ちゃんは……です」

「そうよ。しかも一卵性いちらんせいだから同じ顔でしょ?いて言うなら、違うのは髪型くらいかな」

「えええっ!一卵……ボクってば、同じ顔には見えんのだが?それにOPの大きさも違……あ」

「は?」

「ヒィァア!!ごめんなさいごめんなさい!言葉のあや、いえ、失言と言うか、えっと……ちち、も好きです!」

「いや、フォローになってないから……まぁ、いいけど別に。しかし、同じ顔に見えないって初めて言われたなぁ。あ、ずんだ餅美味っ」

 フゥー!何かワケ分からんけど、助かった!あぐちゃん優しいなぁ、やっぱ神だわ!

「と、斗威君はどこに住んでるのですか?」

「えっと宇都宮だよ。てか、敬語いいから!」

「そうなんで……そうなんだ。じゃあ、東京には観光とかお買い物に来たの?」

 グハァッ!切れ味鋭い質問来たぁ!まぁ、隠しても仕方ない。

「あの、実は……カクカクシカジカ」

「うぷっ……ごめん、笑っちゃダメよね!でも、そのチャレンジ精神、男らしくてカッコイイと思うよ!」

「うん、わたしもそう思う」


 わぉぉおん!!分かっている、ただの慰めとは分かっていても、こんなに嬉しい慰めは初めてでしょうガァッ!寧ろご褒美。

「て事は、足でま君ホームのレスか!ハハッ。なら、家に泊まっちチャイナYoヨー!」

「うん。それがいい!のんちゃんも良いでしょ?」

「勿論!」

「ととととととととととと泊まりぃ!!そんな差し出がましい事は流石に!では遠慮なく」

 こんな事が起こっていいものなのか?まさか、死期が近い?ダメだ……幸せ慣れしてないから分からないのだが。

















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