出逢いの章 其の一 これ壺とか買わされるパターンのやつ
「あ、あの……わたし……」
ボクってば、一瞬お嬢さんが
「あ、ごめんなさいね!全然違った!マジ人違い。あぐちゃんは超絶可愛いけど、キミは……キミは、綺麗だ」
「え……?」
お嬢さんは、一瞬曇った表情を見せた後、口元に手を添え真っ赤な顔で目を泳がせた。
「え?ご、ごめん!ボボ、ボクってば、何を言ってんだ?あの、決して変質者とかではあり……ま」
ヤバイ……どうしよう。
「あの……ボクってば、ただの『豆もやしメガネ』でありまぁす!なんちゃって〜(つまんな)では、これにて失敬!テヘっ」
逃げろ!逃げなければ、ホームがレスな上に犯罪者になってまう!!
「あ!お嬢さん。帽子落ちてますよ。これ、どうぞ。では、失礼しまぁす!」
「あ!!」
「ひ、ヒィァア!ごめんなさいごめんなさい!警察だけは勘弁し」
「大変!血が沢山出てます!来て、一緒に来て下さい!」
「え……?」
そう言って、お嬢さんはボクの手を引いた。とても必死な、青白い顔で……ボクを連れて走り出した。
ボクってば、この時初めて女子と手を繋いだ。その手は、白くて細くて、そして……とても温かかった。
出血とパニックで、その後の記憶は曖昧だけど結構走った、と思う。お嬢さんは、オロオロしながらボクのブチ腫れた醜い顔を心配そうに見つめていた、と思う。でも、ずっと手を繋いでいたのは、間違いなく覚えている。暫く走ると、お嬢さんは大きくて立派な御屋敷の門前で足を止めた。
「えっと、あの、ここは?後、その……手ぇが」
「え?手?わぁっ!ご、ごめんなさい!わたしったら……。あの、ここ
どうやら、お嬢さんはパニクって無意識に手を繋いでいたようだった。それにしても、こんな大豪邸住みとか、マジでお嬢様じゃんか。
門をくぐると、日本庭園が広がっていた。手入れされた松の木、大きな池に錦鯉、玄関まで続く
「ここに座ってて下さい。今、救急箱持ってきます!」
「あ、はい……」
オイオイ、何だ?この展開は何だ?まさかボクってば異世界転……?んなワケない。あ!知ってるぞ、このパターンはアレだ!なんか、こう、壺とかパワーストーンを買わされるやつぅ!ヒィァァ!勢いで連れて来られたが、何て事に……。身体にイラストが描かれている怖い
オロオロ……
「お待たせしました!」
「ヒィァア!つ、壺はいら」
「大丈夫ですか?痛いですか?!」
あれ?怖い方は……出て来ない。てか、普通に手当てされてるボク。ハゥ!近い、近いぞ!女子とこんな近距離は初めてだ!しかし、何て綺麗なお顔なんだ。熟練のドルオタであるボクが見ても、アイドル並み……いや、それ以上かも?!
「はい、終わりました!」
「あ、なんかスミマセン。ありがとうございます。それで、あのぉ……キミは?」
「あ……ごめんなさい!家まで連れて来てしまって!わたしは『のん』と言います。平仮名で、のん」
さっきまで、戦地のナイチンゲールだったのんちゃん。ふと、我に返って恥ずかしがり屋さんに。ヤベェ、マジで綺麗。ショートカットに真っ白な肌。清楚な雰囲気だが、それに似つかわぬデカパ……イヤ、ボクってば何を考えている!!こんちくしょーめ!
ガツンッ!ガツンッ!ガツンッ!
「ちょっ!どうしたんですか?ダメですよ、自分のお顔を殴っちゃ!あ、また出血が!」
「あ、ごめんなさい。ちょっとした発作です。あ、ボクってば、
ガラガラ……パァン!
ビクッ!
「と、扉……優しく開けろ!ビビったでしょうが!てか、オッサン誰?服のセンス、派手すぎない?」
しまった!また心の声が!!
「
「あ、お父さんただいま」
「っ!!おと、お父……様」
「ん?あれれ?そこの痛々しい
「ハハッ、初めましてボクは艶」
「のんちゃんおかえりぃ!いつ帰ってきたの?……ん?そこの男子は、誰?」
「あ、お姉ちゃん。ただいま」
お姉……ん?えっと……ネズミ色ジャージ上下に、黒縁メガネ、ボッサボサのアホ毛ロングヘアの女子。あの、アレだ!ボク、のんちゃんのお姉ちゃん知ってるわ。そう、彼女は日本一のアイドルグループ『なな色イルミネーション』のセンターポジション……ボクの推しメン、
「杜宮あぁぐぅうちゃん?!!」
「え、私?……まぁ、そうだが。よく分かったね?」
ボクってば、クッソ驚いた!ブチ切れた猫のように毛が逆立ち、呼吸は大型犬、全身は鳥肌、アニマルのオンパレード!今ボクってば、17年間でダントツトップのブッサイクな
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