第72話 レオガオンの葛藤
《sideレオガオン・ドル・ハインツ》
オレオが目を覚さない。
メリッサによって精神汚染を受けて、俺様の精神は一時的に制御ができない状態にされていた。
パワースーツの力を解放することで精神を取り戻すことができたが、その過程でオレオを傷つけてしまった。
意識を取り戻した俺の前には、俺様が傷つけたことで目を覚さなくなったオレオがいた。
どうして、俺様はあのような女に拐かされたのだろう? どうして、自分がオレオを傷つけたのだろう。
記憶がなくなって、いつから人を傷つけてしまっていたのか全く思い出せない。
このままの自分で良いのか……
「オレオ、俺様と共に来てくれるか?」
「……」
俺様は彼女を抱き上げて寒くないようにシーツで包む。
学園に居ても彼女が目覚める保証はない。
俺様は、己を磨きオレオを救いたい。
「母上、失礼します!」
「レオガオン! どうしたのです?」
オレオに医療を提供するためにハインツ家に戻った。
最高の医療技術と回復魔導士を呼び寄せて頂きオレオの治療に当たってもらった。
その間に俺は母上の元で修行を行うことにした。
「レオガオン、あなたが私に修行を願うとは思いませんでした」
「母上、俺様は自分の不甲斐なさに嫌気を覚えたのです。アンディはつねに先々を考え行動を行う。俺は剣術にかまけるあまり、精神魔法に乗っ取られてしまった」
「そうですか、あなたを操ろうとするやからがいたのですね」
母上の雰囲気が変わる。
母上はクイーンバトルで、女王に侯爵位を与えられるほどの功績を残した人物だ。
ミルディング家の炎に対して、音の称号を女王から授かっている。
「母上?」
「レオガオン。あなたを精神攻撃した者たちはどうなったのかしら?」
「……多分、アンディが処理したと思う」
「そう、あの子は相変わらず凄いのね」
「母上?」
「昔から、頭の良い子でした」
母上は立ち上がって、俺様に近づいてくる。
「レオガオン、どうやら母はあなたを甘やかしてしまっていたようですね」
「えっ?」
「精神汚染に乗っ取られるなど、その者を許せませんが、すでにアンディが処理しているなら仕方ありません。ですが、私がいたなら」
母上が体を震わせると音が反響して、遠くにあった花瓶が割れた。
「なっ!」
「良いですか、私が教えられるのは音に関する魔法と、それに対抗する戦い方です。そして、これはレオガオン。あなたの精神を成長させるための訓練だと思いなさい」
「えっ?」
その瞬間、母上が俺様の頭に触れて魔力を注ぎ込んだ。
「あなたが選んだ女性は大切に私が育てましょう」
母上の声を最後に俺様は意識を失った。
♢
そこは何もない空間に思えた。
「レオガオン様! 私を見て」
「なっ! メリッサ! 貴様がどうしてここにいる?」
「ふふ、それは当たり前じゃないですか? あなたの心に私は住んでいるのですから!」
「なんだと! 俺様の心はオレオの物だ。貴様にくれてやるつもりはない!」
「そんなこと言っても、もう遅いのです。あなたは私の手の中。我が肉体が滅んだことは悲しいですが、そんなことはどうでもいい」
肉体が滅んだと言われて、メリッサの体が透明なまま空中のまま彷徨っている。
幽体となったメリッサは魔物になってしまったのか? そういう魔物がいることは聞いたことがあるが、どうなっている?
「ふふ、ふふふふうふふっふ。レオガオン様、混乱しておられますね。ですが、大丈夫。私に身を委ねればあなたは楽になれるのです」
「何を言っている!」
「だって、ここはあなたの深層心理なのですから、私と良いことをすれば幸せにしてあげます。あなたの肉体を使って、男神様を降臨させるのです! あ〜なんと幸福なことなのでしょう?! あなたはこの世界で最強になられるのです。そのための生贄ですよ」
メリッサの目的はそういうことだったのか……。
こいつは俺様のことなど見ていない。
どうしてこんな女に俺は精神を乗っ取られたのだろう。
今となってはわからない。
「獅子王よ」
ここが精神世界だというなら、使えるのではないかと思って俺はパワースーツの名前を呼んだ。
全身に纏わせることができるようになった獅子王のパワースーツ。
メリッサに精神を汚染されたことで、暴走した。
そのおかげでは俺様はアンディよりも先に全身を纏う技術を手に入れることができた。
「どうしてパワースーツを着ているのですか?」
「確かにお前は俺の中に魔力を流し込んで止まっているのかもしれない。だが、俺様は獅子王レオガオン。貴様のような女では物足りぬ。王に相応しい相手は王自ら決めるのだ。残念だが、貴様のような女は俺様に必要ない」
獅子の爪は空間を掴むように、メリッサを捕らえる。
「なっ! どういうことです?! どうして魔力だけの私が掴まれているのですか?!」
「どうやら俺様は、新たな力に目覚めたようだ。貴様が与えてくれた力だ。感謝ぐらいはしてやろう。一撃で楽にしてやる」
「やめっ! やめてーーーーー!!!」
断末魔の悲鳴を聞いて、俺様は初めて魂を消滅させた。
だが、心には爽快な気分だけが残された。
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あとがき
どうも作者のイコです。
最近、新たな挑戦を色々しておりまして忙しい日々になってきました。
申し訳ありませんが、更新頻度を下げることになると思います。
こちらの話は火曜日と金曜日には更新をしていこうと思います!
完結までは書き切りたいと思いますので、どうぞお付き合い頂ければ嬉しく思います!
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