第70話 女王と厄災

《side厄災の魔女ベリベット》


 可愛いあの子。愛しいあの子。あなたが私の物になってくれるなら、世界なんて崩壊しても構わない。

 あなたを手に入れるためならば、私はどんなことでもしてあげる。

 

 だからこそ、私がしなければいけないことは、あなたを手に入れる準備よね。


 どうして世界は、私の邪魔をするのかしら? あなたを迎えにいきたいだけなのに。


 もう仕方ないじゃない。


 世界には、余計な障害が多すぎるの。


「んんん〜♪ ん〜ん〜♪ ん〜ん〜♪」


 準備をしているのは楽しいわね。どうしてこんなにも楽しいのかしら? 自然に鼻歌が漏れてしまうわ。


 歌いながら、ある人に会いに行くの。これもあの子を迎えにいくための準備なの。



「貴様! 何者だ! ここがどこなのかわかっているのか?!」


 あら、邪魔をするのね。


 たくさんの魔導騎士たちが私を取り囲む。

 だけど、ダメよ。

 あなたたちのような下級魔導士では私を止めることなど叶わない。


 本物を連れてきなさい。


 だけど、本物を連れてきてももう遅いかもしれない


「んんん〜♪ ん〜ん〜♪ ん〜ん〜♪」


 話しかけてくる子の首を刎ねて、可愛いシモベにしてあげる。

 ふふ、強い個体は大好きよ。

 ここはいいわね。どんどんどん私の手下が増えていくのだから。


 私の手駒を提供してくれるなんて最高ね。


 厄介な相手であるアイスはとても強いけれど、数年をかけて私が何も準備をしなかったわけがないじゃない。


 昔の私はただ死んだ人間を兵士として使うことしかできなかった。


 今の私は、死んだことたちの魔法を使うことができるのよ。


 ああ、美しい。


 死とは一つの完成系なの。


 腐敗を止めるコールの魔法をかければ、永遠に美しさを保つことができるの。

 だからあの子を迎え入れる準備は全て整っているの。

 

 永遠に愛してあげるわ。


「お邪魔するわね」

「貴様! どうしてここに?!」

「ふふ、お久しぶりね。昔の友人に会いにきただけよ」

「何が友人だ! 貴様は王国から追放したはずだが?」

「あら、連れないことを言うのね。あなたが大勢の仲間たちと私を追い出しただけじゃない」


 王国の運営を取り仕切る顔をして、偉そうにする嫌な女。


 黒髪黒目の美しい容姿も随分と老いたものね。


「あなたは歳を取り、随分と魔力が衰えているようね」

「舐めるなよ。私の魔力は年齢とともに増している」

「ふふ、増しているからどうというの? 結局実践から離れて洗練された技術は失われているじゃない。勿体無い。20年前のあなたはとても美しくて強かったのに、今のあなたは魔力量だけが増えただけのただの老害よ」

「言ってくれる! 私が修行を怠っていたと本気で思っているのか?」


 真っ黒な魔力が放出される。


 ふふ、本当に綺麗ね。


 私と対になれるとしたらあなただと思っていたはだけどダメよ。 


 あなたと私の相性は別に悪くも良くもない。


 まだ、アイスの方が怖いと思ってしまうわ。

 だけど、それももう終わり。


「ごめんなさい。あなたの相手は私がしてあげたいけれど、もうあなたを倒す準備は終わっているの」

「なっ! 貴様! 魔導騎士たちを!」


 ふふ、ここに来るまでに近衛騎士として得られた魔導騎士は全て私の手下にしてしまったわ。


「私の可愛いシモベたちよ。あなたたちが守るはずだった女王様を殺してあげなさい」

「くっ、厄災の魔女ベリベットよ。貴様はどこまで死者を冒涜すれば、気が済むのだ」

「文句を言いたいなら、私を殺しなさい。それができない者に反論する資格はないのよ」

「我が選んだ近衛騎士たちよ。貴様たち悲しき想い。わかっておる。ベリベットよ。お前は私を怒らせた。死してその罪を継ぐなうがいい。デリート!」


 私の前にいた近衛魔導士たちが一つの魔法で消滅していく。


「へぇ〜やるじゃない」

「消去の魔法を貴様は知らないはずがないだろ。だからこそ、私も警戒をさせてもらう」


 油断をつくことは出来なさそうね。

 それにこれだけの近衛魔導士を一人で相手にできるなんて素敵ね。


 仕方ないわね。私も奥の手を使わせてもらうわ。


「死霊王」


 デュラハンよりも強力な私の奥の手。


 死を司る最上級の魔物を召喚して、ゾンビの軍団を生み出していく。


「芸の無いやつだ。貴様はそれしか出来ないのか?」

「ふふ、そうね。だけど一つの魔法を極めるからこそ強力に洗練されていくと私は思うわよ」

「いいだろう。効果範囲以内全ての物をデリート!」


 ええ、わかっていたわ。だから、あなたが見えない場所にあの子を置いたのよ。


「なっ!」

「ごめんなさい。見えている者しか消去できないあなたとは違うの。私が司る死んだ子は姿を消せる子もいるのよ」


 キャサリンの魔法を見たときに思いついた私の可愛い子。


「さようなら、女王様。あなたの時代は終わるの。これで新しいクイーンバトルをはじめられる。あの子を迎えにいくための準備は全て整ったわ。あとはクイーンバトル開催を待つばかり。ふふ、ふふふふふふふふふふふふふふふふウフフふふふふふふ」


 あははははははははっはあははははは母はハハハッはあっははははあっはっはははははあははははっはははははははあっはははあははっはははははっはっはは


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


どうも作者のイコです。


ちょっと最近忙しくて、推敲まで手が回っていなかったので、今週はここ数話を見直して推敲をしていこうと思います。


明日と明後日はお休みにして推敲に当てようと思います。


更新を止めることになりますが、しばしお待ちいただければと思います。

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