第67話 一年次パートナー戦 終
いよいよ決勝戦が行われようとしていた。
選ばれた八人の中から勝ち上がった二人が闘技場に立つ。
俺としては、本来マシロとレオが組んでこの場に立ってくれることをどこかで願っていた。
「どうかしましたの?」
「カグラ。マシロは強い。ここまでよく成長したと思う。イゾルデ戦では戦術でも彼女は俺の想像を超えてきた」
「ふん、それがどうしたというのです? それでもあなたは私が優勝することを約束したでしょ」
カグラの言葉は俺を信じていると言っていた。
だから素直に笑みを作ってしまう。
「ああ、問題ない」
「お二人とも頑張ってくださいませ」
「がっ、頑張ってくださいです」
最終戦ということもあり、キャサリンとトゥーリも廊下まで応援に着てくれた。
「もちろんですわ! 優勝するのは、カグラ・ダークネス・ヤンデーレの私ですわ」
カグラの自信が、マシロやレオとは違う勇気を俺にくれる。
「ああ、行こう」
闘技場に姿を見せれば観客たちからの歓声が上がる。
これまでの戦いを見てきた者たちからすれば、圧倒的な勝利を収め続けたカグラと辛勝を続けたマシロに見えるだろう。
カグラは順番もあって十分な休息が取れて、傷もほとんどない。
それに対してマシロは連戦で魔力もギリギリの戦いになるだろう。
一回戦のキャサリン戦、二回戦のイゾルデ戦、どちらも楽な相手ではなかっただろうからな。
「マシロさん。大丈夫ですか? フラフラしているように見えますよ」
「カグラ王女様! ご心配には及びません。戦うことに問題はありませんよ」
「そうですか、ならば手加減は無用ですね」
「はい!」
クロード王子は俺を睨むこともなくマシロを心配そうに見つめている。
もしかしたら、この大会でマシロ以上にクロード王子の方が、マシロを気に入ったのかもしれないな。
「一年次パートナー戦、決勝戦を行いたいと思います」
カグラとマシロが闘技場の中央で向かい合う。
魔力を使わない二人の格闘戦が始まる。
カグラ王女なりの気遣いなのか、それともマシロの意地なのか、ぶつかり合った二人が吹き飛んだ。
「格闘は互角ですわね」
「私はそれが専門なので、ちょっと悔しいです」
「私だって得意ですのよ」
カグラ王女が持つ鞭と、マシロが持つトンファーが鬩ぎ合いをする。
「カグラ様、気遣いいただきありがとうございます」
「そうですわね。観客もそろそろ私たちの死闘を見たいでしょうから」
「はい! 私も全力でカグラ様にぶつかりたいです」
「良いでしょう」
互いに強化魔法をかけた。
マシロの方が強化される魔法に力がある。
これは得手不得手の問題だ。
カグラは全ての魔法を満遍なく使うことができる。
対して、マシロはカグラほどの多彩な手数も、大量の魔力もない。
それでも意思の力は一切揺らぎがない。
「ハァァァァァァッァ!!!」
「ふふ」
残された魔力を高め、その全てを一つの魔力に込めるようだ。
「いいでしょう。あなたの全力を私の本気を持って迎え撃ちましょう」
そうか、カグラに奥の手を使わせるほどにマシロは高めてきたんだな。
「いくよ。
「神卸し」
光を纏ったマシロ。
神を降臨させるように全魔法能力を最大値に高めた。
「行きます!」
「来なさい!」
マシロの動きは光を超える。
瞬間移動も、高速演算も、そんなものは光を超える速さで動いていれば、問題ない。
「いいですね。いいですわね!」
光速で動いて攻撃に転じる瞬間を狙っている。
「やぁ!」
加速の最高潮に達して光の動きを見せるマシロは、カグラを圧倒するだろう。
だけど……。
「光速の動きは凄いですわね。だけど、それだけに直線的で面白くはありませんわ」
「えっ?」
確かに動きは早い。
演算スピードも一気に上がるだろう。
だが、それ故に見える景色は、ゆっくりとした景色を留めておくことはできないだろう。
「どれだけ早く動こうとも、動きとはクセがあるものです。私のパートナーを誰なのか忘れたのですか?」
「くっ!」
そう、俺がカグラに今回授けた作戦はアバウトなものだ。
少ない魔力で出来ることを考えれば、単純な作戦になってしまう。
だからこそ、カグラに伝えたのは、マシロの戦いと癖だけだ。
カグラはマシロの戦いを分析して、攻撃を先読みしているのだ。
「今の私は神そのものです!」
全知全能な感覚を覚えている今のカグラは圧倒的な存在として君臨している。
まさしくクイーン。
「あははははは!!!」
「それでも私は! ライトアップ!!!」
光が闘技場中を隠す。
「それも一度見ましたわ」
イゾルデやキャサリンの戦いがなかったら、カグラは厳しい戦いになっていただろう。
「神卸し!」
光を吹き飛ばすほどの力がマシロに迫って、振るわれる鞭が捕らえた。
「勝者カグラ!」
全ての魔力を使い果たしたマシロは、結局カグラに何もできないまま敗北した。
決勝戦では多くの魔女たちの力が披露されて、素晴らしい戦いを繰り広げられた。
戦いが終わりを告げ、レオに報告に向かうと。
レオとオレオの姿は忽然と消えていた。
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あとがき。
どうも作者のイコです。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
たくさんのレビューもありがとうございます!
応援感謝です(๑>◡<๑)
なんとか、区切りの良いところまでやってきました(๑>◡<๑)
今後もどうぞよろしくお願いします!!!
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