第65話 一年次パートナー戦 13
準決勝第二回戦を前にして、俺とカグラは決勝戦に進む権利を得た。
そして、対戦相手を待ち構えるために対戦相手の試合を見るために観客席にいた。
「あっあの、どうして私と来られたでありますか?」
「トゥーリは嫌だったかい?」
「いえ、決勝戦はカグラ様と戦うと思ったであります。どうして私なのかなって疑問になりまして」
「キャサリンと、カグラは決勝戦を戦って疲れているからね。キャサリンは、マシロとの戦いで相当に無理をしたから魔力枯渇して寝ている。カグラも二度の戦いで気丈に振る舞っていても、本当は疲れているんだ」
「あっ!」
別に俺は一人でも来ても良かったが。
それぞれが休むのにトゥーリがいることで気を遣ってしまうのが、カグラだという人間だそれぐらいのことは見ていてわかる程度にはなれたと思う。
「アンディ様は色々なところを見ておられますね」
「そうでもないよ。いつも自分の足りなさに後悔するばかりだからだ」
トゥーリの友人でオレオが傷つくことを俺は厭わなかった。
それは俺にとって大切な存在がオレオではなく、レオガオンだったからだ。
「そのようなことはありませんです! オレオ氏が本当の気持ちに素直になれたのはアンディ様のおかげであります!」
「そうかい? トゥーリにそう言ってもらえると助かるよ」
「アンディ様はご自身を大切にされないのでしょうか?」
「俺は俺自身を大切にしているつもりなんだけど、どういう意味だい?」
俺は自分の身を守るために厄災の魔女ベリベットから逃げて、身を隠した。
己の力を使わないようにして、昼行燈を演じることを選んだんだ。
「犠牲を厭わないと言われながら、悲しみを背負うようにされておられるであります」
「オレオ氏のことがなければ、私に優しくされることもなかったのではないかと思うと悲しくはありますが」
「何か勘違いしているようだね」
「えっ?」
「俺は女の子が大好きなんだよ」
「ふえ?」
誰もいない柱の影に隠れるように俺はトゥーリを抱き寄せる。
「トゥーリのことを大切で可愛い女の子だって思っているんだ。元々俺は複数の女性たちと子供を作りたいって思っている男なんだよ。最低だと思うかい?」
「おっ思わないのです。女性が多いので、たくさんの女性を愛してくれる男性は貴重なのです」
「うん。だから、カグラには申し訳ない気持ちもある」
「クイーンバトル」
「ああ、男性がたった一人の女性を選ぶというルールを俺は守ってあげられないと思うから」
トゥーリを小柄ながらも小さくて柔らかな感触を楽しみながら、メガネ越しに見える可愛い顔を見下ろす。
「あっ、アンディ様はとても素敵だと思うのです」
「ありがとう」
しばらくトゥーリとイチャイチャしてしまった。
うん、やっぱりトゥーリは可愛い。
「準決勝第二回戦を開始します」
「おっと、試合を見ないとね」
「そっ、そうでありますね」
互いに気恥ずかしくなりながら、俺たちは視線を闘技場に向ける。
♢
《sideマシロ》
決勝戦でアンディが待っている。
そう思うとだんだんと力が漲っていくような感覚を思える。
「マシロ」
「はい。どうしましたクロード王子」
「私はミルディンに劣ると思うか?」
「そうですね。性格の悪さなら絶対に劣っていると思います」
「性格の悪さ?」
「ふふ、はい! アンディは凄く性格が悪いので、そんなところが負けていても良いと私は思いますよ。ですが、性格の悪さではなく、作戦や経験は知識だと思います。それはこれから学べばいいことなので、一年生でそれを悔しむことはないと思います」
クロード王子は悪い人ではない。
勤勉で真面目で、昔のレオのような夢見がちなところがある。
だけど、それは経験がないから想像ができないだけだと私は思う。
「そうか、マシロは本当に他の者たちとは違う意見なんだな」
「そうですか?」
「ああ、他の者ならば、性格が悪いとか、経験が足りていないなんて私には言わないぞ」
笑顔を向けてくれるクロード王子はとても綺麗な笑顔をしていて、カッコ良いと思う。他の子達がクロード王子に憧れるのも理解できる。
だけど、私はやっぱり二人の顔が浮かんでくる。
レオの大切な人が傷ついたって聞いた。
本当はお見舞いに言ってあげたいけど、どうしてパートナー戦の最中なんだろう。
アンディもカグラ王女や他の子達と仲良くしていて、ちょっと嫉妬しちゃうな。
だけど、ここまでやってきてわかった。
私は強くなれている。
そして、二人を大切に思えている。
キャサリンさんとの戦いで、アンディの気持ちも伝わってきたように思う。
アンディは昔と変わってない。
意地悪でわかりにくい態度だけど、私とレオのことを考えてくれているのが伝わってくる。
「ふふ、クロード王子。それでも私たちは決勝でカグラ王女とアンディを倒してやりましょうね」
「ああ、その心意気だな」
私たちは準決勝の相手であるイゾルデさんと相対した。
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あとがき
どうも作者のイコです。
いつも《俺の親友は悪役貴族》をお読みいただきありがとうございます。
こちらの作品は、電撃の新文芸五周年コンテスト出品作品になります。
読者選考があり、⭐︎レビューが選考基準になるそうです!
もしもまだ入れていないよ〜という方がおられて、応援してやってもいいぜという方がおられましたら、どうか本日いただければ大変嬉しく思います!
どうぞよろしくお願いします(๑>◡<๑)
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