第64話 一年次パートナー戦 12
マシロの強さが確認できて、キャサリンには悪いが俺の頬は緩んでしまう。
やっぱり主人公であるマシロが活躍するのは、見ていて楽しい。
キャサリンを応援しなければいけないと思いながらも、マシロに目を奪われていた。キャサリンを助けるのが少し遅れてしまったほどだ。
「とうとう私だけになってしまいましたわね」
「ああ、約束した通り、俺はカグラを優勝させる」
「ええ。当たり前のことですわ」
黒髪黒目の美少女が俺を見つめている。
「その言葉に嘘はありませんのね」
「もちろん」
「ならば良いです。マシロさんに心を奪われているのかと思いましたので」
「マシロに?」
「ええ、キャサリンの試合、あなたはマシロを目で追っていたわよ」
「よく見ているな」
「べっ、別に普通に見ていればわかります」
カグラにバレたということはキャサリンにも申し訳ないことをしたかもな。
「もう大丈夫だ。幼馴染の成長が嬉しいって思っただけだからな」
「本当にそうかしら? マシロさんのことが好きなんじゃなくて?」
「うん? 好きかどうか、あまり考えたことはなかったな。大切な幼馴染だとは思っているけど」
「まぁ、大切なんて」
何を言っているのだろうか?
「カグラはクロードを王子を大切に思わないのか?」
「えっ? お兄様は家族ですのよ」
「俺にとっては、マシロやレオはそれぐらいの関係だってことだ」
「あっ」
「さぁ、そんなことよりも試合だ試合。次の相手はブルームとアスタルテさんだぞ」
俺が話題を変えようとするが、カグラは罰が悪そうな顔をしていた。
「なんだ? どうかしたのか?」
「あなたにとって、マシロさんは家族のような方なのですね」
「そうだな。手のかかる妹だって今は思っているよ」
「……、ならば私はあなたにとってどのような存在なのですか?」
「えっ?」
控え室から出て闘技場に向かう途中で、カグラが立ち止まって俺にそんな問いかけをしてきた。これまでは面倒な王女様だと思っていた。
だけど、野外学習で頑張るカグラ。
彼女はみんなを救うために
パートナー戦が決まってすぐに俺に一番に声をかけてきた。
普段からも、他の女子が寝ている俺に話しかけない中で、隣に座って何度も話しかけてきた。
「そうだな。男の親友はレオだが、女性で友人がいるとしたらカグラが一番かもな。それに今はパートナーだしな。頼りにしているよ相棒」
「ふぅ〜、まだまだお子様なのですね」
「なっ! 誰がお子様だ!」
「まぁいいですわ。あなたにとって私がどのような存在なのか理解できましたから、それで満足しておきます。私は一番の友達で、相棒ですからね」
闘技場に向かう廊下は薄暗くて、ハッキリとはカグラの顔は見えない。
だけど、何故か赤い顔をしていたように感じる。
そのまま俺たちは闘技場へ出ていく。
「さぁ、決勝戦準決勝第一試合が開始されようとしています。第一試合でアオノ・クロードペアを撃破した、カグラ・アンディウスペア。そして、 イゾルデ・グリーンペアを撃破した、アスタルテ・ブルームペア」
向こう側に現れたブルームの視線は苦々しい顔をして、俺を射殺さんばかりの視線を向けてくる。
奴は、カグラのことを心から愛している。
だからこそ、俺がパートナーになったことに怒りを感じているのだろうな。
本来であれば、クロードに選ばれなかったカグラはブルームからパートナーの申し出があり、本編でもブルームの婚約者として登場する。
「カグラ王女様」
「ブルーム、何かしら?」
視線を俺から外してカグラに向けたブルームがカグラには穏やかな表情を見せる。
「ミルディンと私、どちらが優秀な男性であるのか見せてあげますよ」
「そう、それは私を倒すということかしら?」
「ええ、あなたを倒して僕は自分の力を証明する」
「いいでしょう。アスタルテさん。よろしくお願いしますね」
「坊ちゃんに勝利を」
互いの魔法使いが、闘技場で相対する。
オールマイティなカグラと、強化魔法のパワー系魔法使いのアスタルテさん。
この二年間でどれほどの変化を遂げているのかわからないが、ある意味で強化魔法は単純に己を鍛えれば鍛えた分だけ強くなれる。
それを強化していくので、単純なのだ。
マシロが加速を得意としているように、アスタルテさんはパワーを得意としている。繰り出される攻撃は強力で、一撃でも当たればカグラに対しても致命傷となるだろう。
「カグラなら答えは出ているだろう」
力技で来る相手に対して最も有効な手段は、マシロとキャサリンの戦いで披露されている。
「見えないであります!」
「バカ! お前のバカ力で風を起こして吹き飛ばせ」
ブルームの指示が飛ぶが、基本的に頑丈で強いアスタルテさんは、その強さで敵などほとんどいない。
だが、同等の強さを持つ相手や格上に対しては、弱点を突かれると弱くなる。
カグラはキャサリンやマシロとは違う方法で目眩しを作り出して、アスタルテさんの視界を奪い。
さらに、攻撃できないように自由を奪っていく。
「動けないのです」
拘束などは力技で破壊されるかもしれない。
だからこそ、外界との遮断をテーマにした。
「閉じ込めさせていただきましたわ」
第一試合でアオノが使った水魔法の応用で、液体の中にアスタルテさんを閉じ込めて天地の踏ん張りが効かない状態で、水によって拘束させる。
「勝者カグラ」
一つ一つの能力は高くなくても応用の力は偉大だ。
一つを突破した者は強いが、手数が多い者にとっては倒しやすい相手になる。
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