第62話 一年次パートナー戦 10
カグラが一回戦を余裕で勝利した。
入れ替わるようにブルームとグリーンのパートナー、クロード王子とグリーンのパートナーの戦いに続いていく。
第二試合は、ブルームとパートナーであるアスタルテペアが勝利を収め。
第三試合は、グリーンとパートナーであるツクシが勝利した。
グリーン・ムー・カーンは作戦など指示することなく、ただ傍観していただけなので、パートナーの女性たちは己の強さだけでここまで勝ち上がってきたのだろう。
そして、クロード王子は、パートナーの二人が倒れてマシロを残して後がなくなった。
「キャサリン、君に聞いておきたい。勝ちたいのか、負けたいのか? 選んで欲しい」
「私はマシロさんに勝てますか?」
「五分五分だ。能力的にはキャサリンとマシロに差はないと思う。クロード王子の作戦次第というところではあるが、相性はあまり良くない」
キャサリンは精神魔法が得意で、マシロは強化魔法が得意だ。
マシロの精神を乗っとれば、キャサリンの勝ち。
乗っ取られる前にキャサリンが倒されてしまえば、負けだ。
「ならば、パートナー次第というわけなのですね?」
「そうなるな。ならば、アンディウス様はどうされたいですか?」
「どうされたい?」
「はい。作戦を考えてくださるパートナー次第というならば、私はアンディウス様の意向に沿いたいです。アンディウス様が勝ちたいと思うなら、私も勝つために全力を尽くします」
キャサリンの瞳に映る覚悟は本物だろう。
「わかった。なら、勝ちに行こう。全力でやって負けるなら悔いはない」
「はい! 承知しました」
俺はキャサリンと共に第四回戦を行うために闘技場に入場する。
「いよいよ決勝戦第一回戦も最終試合になります。第一回戦で魔法を交えた男性パートナーがまたもここで激突です。第一試合では、カグラ王女とアンディウス君の勝利でしたが、今度は互いに女性は平民出身者でここまで勝ち上がってきた者同士。英才教育を受けた貴族令嬢とは違う力を見せてくれることでしょう」
実況の声が響いて、向かいの控え室からマシロとクロード王子が姿を見せる。
今更、何かを語る必要もない。
キャサリンは、目を閉じて精神統一に入っている。
マシロとクロード王子は俺に視線を向けているが、お前たちが戦う相手はキャサリンだということを教えてやる。
「キャサリン」
「はい! アンディウス様」
「作戦を伝える」
俺はキャサリンにマシロの攻略法を伝えていく。
「なるほどです」
「さっきも言ったが、それでも勝率は五分五分だ。だから、無理だと思えば降参してくれていい」
「ふふ、アンディウス様が考えてくださった作戦を実行するのです。降参などあり得ません! 見ていてください。魔法使いキャサリンの戦いを」
ショートボブで薄紫の髪を揺らして、彼女が戦場に立つ姿はとても美しい。
「マシロさん。こうやって向き合ってお話をするのは初めてですね。私はキャサリンと申します。アンディウス様のパートナーをさせていただいております」
「うん、知ってるよ。キャサリンさんはとっても綺麗な人だね。そして、賢くて優秀だってクラスの子が言ってたよ」
「ふふ、ありがとうとございます。アンディウス様もマシロさんは強いと言われていました。ですから、楽しみですわね。強化魔法を得意としているのに、魔導クラスを選んだマシロさん」
「私はどっちも強くなりたいって思ったからだよ」
「考えは人それぞれです。さて、あなたに一つ提案があるのですか?」
「提案?」
二人きりで何かを話しているようだが、それは俺の作戦にない行動だ。
だが、キャサリンは言われたまま動くのではなく、自分で考えて動ける人間だ。
「それでは決勝大会、第四試合を開始します」
キャサリンとマシロがどんな話をしたのかわからない。
だが、マシロの顔には動揺が見られ、キャサリンの表情には余裕の笑みが浮かんでいる。
「ハァアアアア!!!」
だが、開始の合図なされるとマシロは加速の魔法を使って、己の肉体を強化した。
それは速度だけでなく全ての能力をスピードで上乗せしていく。
「霧よ」
キャサリンはマシロの視界を奪うように、霧を作り出す。
精神魔法使いであるキャサリンが自然魔法を使えないわけではない。
むしろ、大規模な魔法は無理でも、応用式で使える属性の才能があれば問題ない。
キャサリンは水の属性に才能があり、それを霧状に散布することで、相手の視界を奪っていく。
「こんなことをしても無駄だよ!」
マシロは動きを加速させることで、霧を吹き飛ばすように動き出す。
しかし、霧が晴れた先にもキャサリンはいない。
今度は光の屈折を利用した蜃気楼を使って、姿や動きを撹乱していく。
何も属性は一つとは限らない。
カグラ王女のように全ての魔法に対して、才能がある者がいれば、一部が特化して得意な者もいる。キャサリンは、精神魔法を中心に相手を翻弄する魔法を得意としている。
相手を疲弊させるように翻弄することで、精神魔法が通じる下準備をしているんだ。
「ふぅ〜やっぱり私の予想通りだったね」
マシロはクロード王子に視線を向ける。
「好きにすればいい」
どうやらクロード王子なりに作戦を伝えていたようだが、上手くいかなかったようだ。
マシロは強化魔法を解除した。
ここからは学園に通い出したマシロが得た経験との戦いになる。
俺が知っているマシロは、学園に入るまでだからな。どれほど成長しているのか、実は楽しみだと思っている。
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