第59話 一年次パートナー戦 7

《sideキャサリン》


 何と言うことでしょう? 何と言うことでしょう? 私は自らの英断に心震えています。


 アンディ様の動向がどうしても気になった私は索敵専用の魔導虫をアンディ様につけておりました。


 私自身が近づいてしまえば、バレてしまう。


 アンディ様ほどの切れ者が、気づかないはずがありません。

 ですから、策を弄した私はとんでもない事実を知ってしまいました。


 メリッサさんは、私が揺さぶりをかけたことで尻尾を出してしまいました。

 

 ああ、嘆かわしい。


 ですが、ありがとうございます。

 きっとアンディウス様は思ってくださるでしょう。


 闇の結社の一派を退け、もしかしたらこれから押し寄せてくるかもしれないのに、自分の周りにはいないことだろうと思ってくれたでしょう。


 ふふ、本当にありがとうございます。

 私が声をかけた、次の日に動いてくれて。


 私がレオ様と合わすように取り付けたとアンディ様に話した後で。


 そのおかげで私の疑いは晴れて行くのですから。


「それにしても何という力でしょう?」


 アンディ様が見せた炎の力は凄まじいものがありました。

 オレオ様を救った不死火。そして、メリッサさんを消滅させた滅火。


 どっちも見たことのない魔法であり、いえ、パワースーツの能力なのでしょうが? それを完璧に使いこなしておられました。


 レオガオン様の獅子王姿も素晴らしいと思いましたが、アンディ様の鳳凰も如何ともしがたく。


 ハァ〜疼いてしまいますわ。


 私は黒いローブの中に手を入れて、濡れてしまった下着を脱ぎ去る。


「あなた様に相応しいのはやはり私だけなのです。アンディ様」


 どこまでも深淵に近い漆黒の中で、赤々と燃えたぎる炎を纏うアンディ様は私が理想とする悪の華を咲かせるのに相応しいお姿をされておりました。


「まだですね。まだなのですね。私がこの身を捧げるのに、私の力ではまだまだ足りないのです。ふふ、ふふふふふふふふふふふ!!! あはははははははっははは!!」


 素晴らしい。素晴らしすぎる。



《sideアンディウス・ゲルト・ミルディン》


 32名から、さらにレオの3名が行方不明となり欠場が言い渡され、第二回戦が29名で執り行われることになった。


 あの晩から、レオはオレオの付き添いをしているとトゥーリが教えてくれた。


「トゥーリは大丈夫か?」

「はいなのです!」


 健気に返事をしてくれているが、友人が傷ついた姿を見て、トゥーリが傷つかないはずがない。


 その後の二回戦はトゥーリも棄権をさせて、休ませることにした。


「仕方ありませんわね」


 カグラ王女はトゥーリの友人が怪我をしたのを聞いて、仕方ないと納得してくれた。その上でトゥーリを抱きしめた。


「ふぇええ」

「友人が傷つくことは悲しいことです。ゆっくりとお休みなさい。何か助けになれることがあるなら、いつでも言いなさい。同じ男性のパートナーになったのも縁です。私ができることは何でもしましょう」

「あっ、ありがとうございます! オレオさんも喜びます」


 美少女と美女が抱き合う姿はどうしてこんなにも尊いのだろう。


「アンディ、少しいい?」

「マシロか、どうかしたのか?」


 二人の戯れ合いで目の保養をしていると、マシロに声をかけられて二人から距離をとる。


「ごめんね。パートナーと一緒にいる時に」

「いいや、大丈夫だ」

「レオのことで、何かあったの?」

「どうしてそう思うんだ?」

「思うでしょ! レオのパートナーが全員行方不明になっているとって」

「……マシロは、どうなんだ?」

「どう言うこと?」

「クロード王子と上手くやっているんだろ?」


 俺の言葉にマシロが睨むように目つきが鋭くなる。


「そんな風に思っていたの?」

「俺は、マシロはレオか俺のどちらかのパートナーになってくれると思っていたんだ」

「……」


 俺の言葉にマシロは睨んでいた顔を背ける。


「もう子供じゃないんだよ。いつまでも一緒にいるなんて変じゃない」

「そうか、ならそう言うことだ」

「どう言うこと?」

「マシロがマシロの考えで動き出したように、レオはレオの考えで動いているんだろうな。そして、俺は俺の考えで動いている。三人の道が交わっているなら、俺はそれを壊さないようにしていたと思う。だけど、マシロやレオが各々の想いで動くなら、俺はそれを尊重する」


 マシロに伝えることは何もない。

 もしも、真実を知りたいと思うならば、自分で動くべきだ。


「アンディは変わったんだね」

「そう見えるか?」

「うん。昔はもっと私やレオのことを考えてくれてたはずだよ!」

「ふぅ〜、マシロ。その手を離したのはマシロ自身だろ?」

「えっ?」

「俺は、マシロに選んで欲しかった」


 本当はレオた結ばれる未来を望んでいた。

 だけど、それは俺の勝手な想いで、二人の想いが重ならないなら、勝手な想いを押し付けるわけにはいかない。


「道は別れたんだ。マシロはマシロの道を頑張れよ。いつか交わる時があるなら、その時はまた」


 俺はそれ以上の言葉を語ることなく、マシロから距離をとってカグラ王女の元へ戻った。


「勝手だよ」


 マシロの呟きは聞こえていたが、振り返ることはなかった。

 

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