第52話 一年次パートナー戦 1

【パートナー戦】


 パートナー戦は、本来はクイーンバトルを想定されて考えられた決闘形式のイベントを意味する。

 

 1、男性は、同学年の女生徒の中から三人を選んで、パートナーとする。拒否や人数不足は認めないため、男性が選べない際には学園側から成績優秀者をパートナーとして斡旋することもある。


 2、女生徒はパートナー戦に出場したい旨を男性に伝えて、パートナーを組んでもらう期間を一ヶ月設ける。これは実際の大人になった際に女性側が男性に声をかけるということに慣れてもらう行為であり、パートナー戦に参加したいと考えている女性は率先して、男性に声をかけるようになってもらう訓練だ。


 3、三人のパートナーが決まった男性は学園側に申告して、体調不良や、互いに気に入らないと判断した場合のみパートナーを解消できる。片方からの意見では解消はできないものとする。


 4、早くパートナーが決まった者たちは、なるべく生活を共にすることで互いを知り、より力を発揮しやすい環境作りに取り組む。本来のクイーンバトルに参加する際には、エンゲージと言われる絆を結ぶ行為によって互いの確かめ合える。この時に、傷が強ければ強いほど強い力が発揮できると言われている。


 5、大会は一対一のマッチ制度であり、21名の男性が選んだ63名の女性が、対戦をして勝ち上がってきた者たちで決勝戦を行う。


 6、決闘時には、審判として互いのパートナーたちにプラスして、教員が一名を同席させる者とする。この時に、対戦者以外のパートナーが手出しをすれば、そのパートナーも含めて失格、敗北とする。


 7、魔法を使う対戦のため、他者の介入以外では反則行為は認められないが、故意の殺人や大怪我を負わす行為は黙認しないため、十分に相手への配慮を行って戦闘を行うものとする。これは倫理観の問題であるため、学園側は審判が止められる範囲では防ぐものとするが、参加するならば最低限の魔法能力は示すべきであると考えるためである。


 8、以上の説明に則り、男女ペアでなんでもありの魔法戦を行い。勝ち上がった上位2名には、仮初のエンゲージリングを贈呈する。これ通常のエンゲージリングとしても使えるが、学園を卒業するまでは使えないようにロックがかかっている。


 また、これを手にした二人は、結婚する確率が高くなるため、学園内ではかなり評判がいい。



 トゥーリに癒された日から、俺の中で一つの答えを出すことにした。

 俺たちは成長の途中で、別々の道を歩むこともある。


 俺がカグラ王女と話をしているのも、トゥーリと仲良くなれたのも二人から距離を取ったからだ。


「あわわわわわわわわ」


 トゥーリは、最初眼鏡がないので俺が何をしたのか理解できなかったようだ。

 唇に当たる柔らかい感触。

 俺はキスをしながら、トゥーリのメガネを彼女に戻した。


 目の前に迫る顔によって、トゥーリが顔を真っ赤にして恥じらっていたのがとても印象的だった。


「何をニヤニヤしていますの?」

「ちょっといいことがあってね」

「ふ〜ん、まぁいいですわ。それではお二人ともよろしくて?」

「はい! 大丈夫です」

「はっ、はいです」

「彼は、優勝を目指していないと言っていますが、私はそうではありません。ですが、あなた方の考えによっては考え方を変えても良いと思っています。あなたたちはどの程度、パートナー戦へ意気込み気持ちがありますか?」


 カグラは優勝を目標にしていたようだ。

 まぁ女王の娘として当たり前のことなのかもしれない。

 だが、それならばクロード王子を組めばいいのにと思ってしまう。


「私も優勝は求めていません。アンディウス様に選んでいただいたことが光栄なので、それで満足はしています。元々魔導クラスは、戦闘特化というよりも、サポーターや生活強化の研究肌が多いので、トゥーリさんも同じだと思います」

「はっ、はい! 私も優勝は望んでないであります」

「そう、二人とも欲がないのね。彼とのエンゲージリングが欲しくないのかしら?」


 カグラの挑戦的な発言にも二人は動じている様子はない。

 むしろ、キャサリンは首を横に振り、トゥーリも両手を使って手を振ることで拒否を示した。


「とっ、とんでもないです」

「私も大丈夫です」

「そう、わかりましたわ。それでは遠慮なく、私はあなたたちに譲ることなく優勝を目指させていただきますわ」


 カグラ王女の宣言に三人で拍手を送っておく。


「どうして、あなたまで拍手をしているんですの! あなたも一緒に目指すのです!」

「は〜い」

「まぁいいですわ。皆さん、このような形でアンディウスを通して選ばれたのも何かの縁です。今後は、良き友人として過ごしてくださることを心からお願いします」


 そう言ってカグラ王女から歩み寄って二人と握手を交わす。

 キャサリンは、少し敵対心を燃やすような視線で応じ。

 トゥーリは恐縮するばかりだ。


「ふふ、面白い子たちを選んだんですのね」

「そう?」

「ええ、キャサリンはとても優秀な魔導士として力を示し始めています。トゥーリさんは秘められた魔力量が多いですわ」


 どうやらカグラ王女のお眼鏡にかなったようだ。


「皆さん。怪我がなく無事に大会を終えられるように尽力いたしましょう」

「「「はい!」」」


 カグラ王女がいるから仕切ってくれて楽だね。

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