第44話 創作意欲

《sideオレオ》


 あの日から、レオ様が私に話しかけてくるようになったことは非常に嬉しい。


 嬉しいのだが、私は話すのが苦手だからどう接すればいいのかわからない。

 なんて言葉を返せばいいのだろう。


 いつもは断ることなく、ただ立ち会うと周りの人たちが勝手に話をしてくれる。


 みんなはレオ様に話かけたいから集まってくる。


 見られているのも本当は辛い。


「オレオ。俺と一手、手合わせを頼みたい」

「……また」


 また私……。


 嬉しいけど、相手をするよりも、見ている方がいいのに。


 だけど、レオ様は強い。

 私と手合わせをするたびにドンドン強くなっている。


 だから、槍を交えるのにこれほど相応しい人はいない。


「行くぞ、オレオ」

「……いつでも」


 レオ様が私の名前を呼んでくれる。

 嬉しすぎて感動してしまう。


 私の家は、魔装と呼ばれる武器と一体になって魔法の力を使う、特殊操作系魔法を操る。レオ様に負けることはないが、それでも魔法を使わないで勝ちたい。


 レオ様は一分一秒ごとに強くなっている。


「はっ!」


 レオ様の掛け声に、一瞬だけ気を取られた瞬間に彼の剣が迫る。


 顔が近い!!! 近すぎる!!!

 

 猛ダッシュで後に飛び退いて距離をとった。

 レオ様は驚いた顔をしているが私は気持ち整理をする方が大事だ。


「ふぅ、行くぞ」


 最近何かを練習する姿を見ている。

 だから、レオ様が何かを仕掛けてくるのがわかった。 


「獅子王レオガオンとして、己の一撃に全てを込める。剣は我が身、俺様は剣なり」

「ツツツ!!!」


 あ〜!!!! カッコイイ!!!


 ナナナナナナナナナナナナあんななあんなななアナのナナナナナナナナナナナナナナナあんななあんなななアナのナナナナナナナナナナナナナナナあんななあんなななアナのナナナ。


 何そのかっこいいポーズ!!!

 私の心を掴みにくるのはやめてよ! もう最高にかっこいい!!


「いいね。この一槍に私も全てを乗せる」


 私も負けてられない!


 昔に考えたカッコいいポーズをレオ様に見せる!

 互いにポーズを決めて、視線を合わせれば、レオ様が認めてくれたような気がする。


「スネークバイト!」

一奏イッソウ


 レオ様が特殊な武器を訓練されていることはわかっていた。だから、私は小細工をしない。


 手加減をするのも失礼。


 だから、一本の槍として、私は魔装の槍を披露する。


 巻きつくレオ様の武器よりも早く! レオ様の体を捉える。


「くっ!」


 この距離で身を躱すレオ様。

 

 さすがだ!


「ハァ、俺様の負けだ。さすがはオレオだ強いな」


 だけど、脇腹に槍を受けたことで、レオ様は破けたシャツを脱ぎ捨てた。

 

 なっ、ナナナナナナナナナナナナあんななあんなななアナのナナナナナナナナナナナナナナナあんななあんなななアナのナナナナナナナナナナナナナナナあんななあんなななアナのナナナ。


 ご馳走様です!!!!!


 目の前でレオ様の生上半身を目に焼き付けて、私は猛ダッシュで逃げた。


 全部見てしまった。


 レオ様の上半身裸を見てしまったーーーーーー!!!!!!


 私は急いで寮に戻って、トゥーリがいるかいないのかなんて関係ない。


 一心不乱に紙に文字を書き綴る。


 ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ

 ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ

 ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ


 止まらない鼻血が落ちるのを拭って落とさない。


 全てが書き終わるまで、私のリビドーを止めることはできなかった。


「オレオ氏! オレオ氏!」

「あっ?」

「やっとであります。やっと意識を取り戻して下さったであります」

「私はどれくらい意識を失っていたの??」

「我が知っている限りでも、三時間は意識がないまま筆を振るっていたであります」

「そんなに……。トゥーリ見てくれないか? 私にとっての大傑作だ」

「拝見するであります」


 私は親友に今日感じた全てをぶつけて、物語を書き切った。


 あとは、私が書いた物からトゥーリが何を感じるのかだ。


「……オレオ氏。これは相当に生々しいでございますが? 大丈夫なんでしょうか?」

「我々は同志だ、トゥーリ。そして、我々の作品を待つ同志は、この学園だけでなく王都全土に広がっている」

「それはわかっているでありますが、これを絵にしてしまえば、とんでもないことが起きてしまうのであります」


 トゥーリが驚愕するのも無理はない。


 私は知ってしまったのだ。


 男性の色を。


 このような世紀の発表をしてしまっては、センセーショナル出来事として、世界はひっくり返るだろう。


「レオ様はピンクであった」

「ブッ! やっ、やめるであります! 鼻血を出しながら、言うことではないであります」

「私はここで出血多量で死んでもいい」

「わかったわかったであります! この文章を参考に自主規制範囲でなんとかするであります」


 私はそのまま力尽きた。


 物語は私、絵を担当するトゥーリ。


 私たちは同人誌を書いて描いて、販売をする同人コンビなのだ。


「うわ〜、あわあわあわあわわわわわわ」


 トゥーリも相当に興奮しているようだ。


 くくく、我、勝利を確信する。

 

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