第43話 レオの試み
《sideレオガオン・ドル・ハインツ》
オレオの体調が悪かった日から、俺はどうしてもオレオのことが気になってしまうようになった。
彼女の鍛え抜かれた細くて柔らかい体。
手に残る感触がどうしても忘れられない。
「オレオ。俺と一手、手合わせを頼みたい」
「……また」
「うん?」
「なんでもない」
オレオが槍を構える。
武術クラスは、対戦をしたい者同士で手合わせをしながら、それを見つめる者たちがディスカッションを行うことで、互いを切磋琢磨させる。
授業内容としては。
・肉体強化(魔法の応用も可)
・実践形式対戦(対戦を挑まれた同士で同意して戦闘を行う。相手に大きな怪我をさせないように注意を必要とする)
・ディスカッション(戦闘を行った者同士や、見ていた者によって話し合いを行って互いに高め合う)
・必殺技の研究(自身の得意魔法に合わせて技を編み出す時間)
・型の練習(他者や自信で習ったものや、編み出した物を研究する)
・瞑想(女性は魔力を感知して、男性は心を落ち着ける時間)
・戦略授業(戦いは体を動かすだけでは勝てない。頭を使って戦い方を学ぶ)
・基礎授業(三つの基礎授業を習う)
「よろしくお願いします」
「お願いします」
俺様は剣を正眼に構えて、オレオの槍と向き合う。
剣と槍は、槍の方が有利だと言われている。
だが、それは槍の間合いに剣が入れないからだ。
だからこそ、剣と盾を使うことで、槍を受け流して、剣の間合いに入る。
しかし、俺様の剣は蛇腹で、鞭のようにしならせることも剣のように使うこともできる。
これはパワースーツの特性を考えて、特注で作ってもらった物だ。
パワースーツを手に入れてから、本当は師匠に指導を受けたかったが、それは叶わない望みだ。
だが、俺様はこれまで習ってきた剣術を、蛇腹剣に合わせて改良を食わせて独自の方法で戦えるように剣術を編み出した。
「行くぞ、オレオ」
「……いつでも」
オレオの槍はなんの変哲もない鉄の槍ではあるが、使いやすいように軽量化がなされて、オレオは槍をしならせて、伸縮自在の槍を生み出してくる。
魔法の力を使っているのかはわからない。
だが、それがあったとしても長年の鍛錬がなければ到達することができない領域にいる槍に少しでも触れていたい。
「はっ!」
オレオは俺様を間合いに入れてくれる。
だが、すぐに距離を取る。
そう、俺を油断させるために距離感を一気に詰めて、離れるとうフェイントを入れてきた。
くっ! 一気に詰められたことで、ドキッとしてしまった。
不意を突かれると思って、防御を固めるが、追撃はなかった。
「うん?」
「……」
視線を向ければ、一定の距離で待ち伏せをしている。
そうか、まだまだ俺様はオレオの領域には辿り着けていないのだな。
女性の方が強いことはわかっているが、力量さがあることが悔しい。
オレオに勝ちたい。
だからといってがむしゃらに突っ込んで行っても勝ち目はない。
「ふぅ、行くぞ」
だから俺様は技を使う。
「獅子王レオガオンとして、己の一撃に全てを込める。剣は我が身、俺様は剣なり」
「ツツツ!!! いいね。この一槍に私も全てを乗せる」
互いにポーズを決める。
なぜだろうか、オレオと一瞬、通じ合ったような気がする。
俺様が思うイメージにオレオのイメージが重なった。
俺様は、剣を上段に構えて一撃に全てをかけた。
蛇腹剣は蛇のようにその形状を変えることができる。
上段から振り下ろされる一撃によって、獰猛な蛇がオレオの槍を掻い潜って手元から喰らっていく。
「スネークバイト!」
「
こちらが間合いを誤魔化す戦いをしていたのにも関わらず、俺様が思っていた距離よりもさらに一伸びを見せたオレオの一撃が、俺様の右脇腹をかすめて服を切り裂いた。
「くっ!」
俺様の剣は届く前にこちらにダメージを喰らわせるとはやるな。
「ハァ、俺様の負けだ。さすがはオレオだ強いな」
破れた服を剥ぎ取り、置いていた上着をかけながらディスカッションをしようと、オレオに声をかけたが猛ダッシュで走り去っていた。
「えっ?」
ディスカッションをしたかったのだが、次にしようか。
周りを見れば、一気に見ていた物たちにも顔を背けられる。
「えっ?」
「よう、レオ」
「アンディ、珍しいな。どうしたんだ?」
「いや、サボっている間に色々回っているだけだが、上半身裸に上着だけ羽織っている状態では、女性たちの目のやり場に困るぞ」
「うん? なぜだ?」
「男性は、女性の前で極力肌を見せるべからずだろ? 上半身裸の時点でダメだろ?」
「うっ!」
貴族として、確かにはしたないことをしてしまったかもしれないな。
腹ぐらいはいいが、確かに穴が空いたからと服を破り捨てたのは、やりすぎた。
「そっ、そうだな。みんなすまない。今日は先に帰らせてもらう」
「「「「「「どうぞどうぞ!!!」」」」」」
アンディに指摘されなければわからなかった。
ハァー、これだからマシロにバカだと言われるんだろうな。
「まぁ、周りの女子たちからすればラッキースケベをしただけだからいいだろう。気にすんな」
落ち込む俺様の肩をアンディが叩いて、励ましてくれる。
ふぅ、オレオにもみっともないところを見せたな。
今度会った時に謝ろう。
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