第39話 主人公の戦い

《sideマシロ》


 野外学習が、レオ、アンディとは別々のチームになったことは、半分残念で、半分ホッとしていた。


 残念な理由は、やっぱり二人と一緒の方が嬉しいって思ってしまう私がいる。


 半分ホッとしたのは、どちらか一人だけと仲良くなるのが気が引けてしまうから、だから二人とは違うチームになれてホッとしてしまう。


「今回は我を守護する任を其方たちに頼む。クロード・ダークネス・ヤンデーレである。皆、無理する事なく安全に帰還することを心がけてくれ」

 

 黒髪黒目の王子様は、とても美しい人だった。


「はい!」


 同じチームのみんなもクロード様に声をかけていただいて、ときめく子は多いと思う。

 

 普段はカグラ王女様が寄り添っていて、お一人でいることは少ないから、こんな機会はないだろうと皆が声をかけにいっている。


 私は、レオやアンディと過ごしてきたから、特別クロード王子様に興味は出なかった。

 ちゃんとした男の人なんだと思ったぐらいだ。


「敵襲!!!」


 夜間に盗賊の襲撃を受けて、クロード王子様を守るように陣形を取る。


 襲撃者はテイマーで、魔物を連れてやってきた。


 私は冒険者をしていたから、魔物と戦うことに慣れていたおかげで、なんとか対処できた。


 だけど、座学クラスのお貴族様たちは遅れをとっていた。


 それを庇うようにクロード王子が前に出る。


「乙女を守るは、漆黒のペガサス! ナイトメア!」


 漆黒のパワースーツを身に纏ったクロード王子様が現れる。


 クロード王子様が魔物を倒していく。


 それを援護するように、魔導クラスの子達が盗賊を倒していく。


「マシロと言ったな。貴様の動きが一番素晴らしい。我と共についてまいれ」

「はい!」


 クロード王子様に言われて後に続く。


 その先にはブラックウルフが現れた。


 二人と協力して倒したことはある。

 だけど、クロード王子様と二人で倒せるだろうか?


「魔物の動きは我が止める。お前の魔法でブラックウルフを倒せるか?」

「何度か討伐したことがあります」

「よかろう。皆の者よ、盗賊の警戒を頼んだ! 我とマシロはブラックウルフ討伐に取り掛かる!」


 いきなりクロード王子様が私の腰に腕を回す。


「なっ、何を?」

「我がパワースーツは空を飛ぶことができる。上空から一気に加速する。一瞬で動きを止めるが故。トドメを刺すがいい」

「わかりました」


 私はクロード王子の言葉に従うように急降下していく。

 魔法を発動して、自身の体を加速させながら、腕に強化魔法を施していく。


「行くぞ。ナイトパレード!」


 クロード王子様が唱えた瞬間に暗闇が浮き上がって、ブラックウルフを捕えた。


「今だ! いくがいい」

「はい!」


 私は一点集中で貯めた力を拳に乗せて、ブラックウルフを討伐した。


「ふぅ、やりました!」

「うむ。よくぞやったぞ」

 

 私が倒して立ち上がると、クロード王子が私の頭をポンポンと撫でました。


「なっ!」

「うん? ああ、すまない。妹を褒めるときにするんだった。許せ」

「あっいえ」

「それと、貴様は他の女たちとは違うようだ。我と過ごしていても気後れすることがなく、我も共に戦えてよかった」

「……はい」

「それでは、後始末も済んだならば見張りを立てて警戒を強めよ」


 クロード王子様の指示に従っている間に魔導騎士がやってきて、私たちは保護されました。

 その後は学園に帰るまでクロード王子様が私の隣にいて、何かと話しかけられてしまったのです。


「マシロよ。此度はご苦労であった。我が守護の任に貴様がいたことを心から嬉しく思うぞ」

「いえ、私も共に戦えて光栄です」

「うむ。このような機会があれば、また共にしたいものだ。それではな」

「……はい」


 その後は同じ武術クラスの子たちに羨ましいと詰め寄られたり、座学クラスの貴族様たちに「調子に乗らないことね」と怒られたりもしたが、なんとか無事に戦いを終えることができてホッとした。


「二人の顔が見たいな」


 ずっとクロード王子様といたからだろうか、私は幼馴染の二人の顔が浮かんできて会いたい衝動に駆られてしまう。


 そう思って、二人が住んでいる寮に近づいたところで、不穏な気配を感じる。


「あなた、気づいたのですか?」

「えっ? あなたは」

「いえ、違ったようです。私はキャサリン。あなたは?」

「マシロって言います」

「そう、勘が良いのですね。またどこかでお会いしましょう」

「ええ」


 キャサリンと名乗った魔導クラスの美少女に圧倒されて、私は二人の顔を見にいくことをやめることにした。


 なぜか、二人に会いにいくと嫌なことが起きそうな感覚を味わってしまったのだ。



《sideキャサリン》


「あなたをアンディウス様に近づかせないわよ。マシロ」


 忌々しくも、アンディウス様の寵愛チョウアイされる平民の女を私が許すはずがない。


 私は暗闇の中で、アンディウス様の部屋を見つめる。


 部屋の中では、レオガオン様と共に碁を打たれている。


 お二人の至高の時間を、あのような下賤ゲセンの女に邪魔させるわけにはいかない。


「あなたは私が守りますね。永遠に……」


 アンディウス様。

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