第38話 やっと見つけた
《side厄災の魔女ベリベット》
ふふふ、やっと見つけた。
私は仕掛けをしておいた可愛い子猫の瞳の先で、愛しい彼を見つけてしまった。
死の匂いを常に漂わせて私を魅力した。
こんなにも恋焦がれさせたのに、あの日、私の前から姿を消したあなた。
あ〜、ず〜と会いたかったわ。
あの戦いで傷を負わなけれ、今からでも会いに行っていたのに忌々しい……。
ふふ、だけど、今はいいわ。
数年間、彼の姿を見ていない間に、彼は成長して、さらに強くなった。
それは果実が成熟して美味しそうに熟れ始めていくようにとても美味しいそうなの。ああ、あの時のアネモネを思い出すわ。
ふふ、死を持ちながらも、生にしがみつくあなたはどうしてこんなにも愛しいのかしら?
「こんなところに隠れていたのね。上手く身を隠すのが上手くなっているじゃない。それに前よりも力をつけて嬉しいわ。あなたのことをずっと探していたのよ」
瞳の向こうで煌めく炎を纏った彼。
その生死を思わせる美しさは、ただただ私を魅了する。
もう一度会いたい。
だけど、今の私は右足と右腕が動かない状態。
今のままではダメ。
「必ず綺麗に着飾ってあなたに会いにいくわね。そうだわ。あなたにプレゼントがあるの」
私はあの森に潜ませていた
生き物でなければ彼は信用しないだろう。
だから、今は我が身の生き写しを側に置こう。
可愛い子猫だけど、魔女の器はダメね。
魔力が邪魔をして、全てを支配することができない。
やっぱり命を狩らなければいけないわ。
その時が来たなら狩ってあげましょう。
今はまだ好きにしているがいいわ。
ふふ、精神が私に近くなって崩壊しなければ良いけれど。
「小動物になって、あなたに可愛がってもらえるなんて最高ね。ふふ、しかもこちらの方から魔力を送ることで、あなたにテイムされた状態にもできる。ああ、最高だわ。これでいつでもあなたのことが見ていられるのね」
彼からキュキュという名をもらってしまった。
嬉しい、彼の頭の上で寝転んで、彼に優しく抱きしめられる。
夜は一緒に眠りについて、授業で寝ている彼を守る生活。
ああ、いつぶりだろうか? まともに人と交流するのは何年、何十年ぶりだろう。
だけど、たった一人の少年に、ここまで心惹かれる日が来ようとは思いもしなかった。
「ねぇ、アンディ。あなたのことがもっと知りたいわ。あなたは何を思い、何を考え、何を大切にするの? その全てをあなたの前で奪って壊してしまえば、あなたは絶望して、私にひれ伏してくれるのかしら? 私だけを愛してくれるのかしら」
ふふ、ふふっふっふふふ。
ああ、早く私の物になって頂戴。
アンディ。
♢
《sideカグラ》
目が覚めると、自室のベッドに眠っていましたの
私はブラックウルフを討伐することに成功したせいで、魔力を使い果たしてしまったんですの。
ただ、それはまだ使いこなせていない力を使う羽目になり、自分の体へ負担が大きく。動くこともままならないほどに消耗してしまいました。
学園に帰る前に目覚めた私は、彼が遭難したことを聞かされました。
私が寝ている間になんてことでしょう。
何も知らなかった。口惜しい。
まだまだダメね。
あの戦いで、彼がパワースーツを着て戦っている姿を目の当たりにして、胸がドキドキして止まらなくなってしまいました。
「なっ、なんですの、これは?」
初めてクロード兄様を男性として意識した時に近い症状です。
あれは今でも私の初恋だったと思っています。
だけど、今のこの気持ちはその時以上に強くて、胸が痛い。
彼のことを考えるだけで張り裂けそうになるほどに鼓動します。
「とんでもない呪いを私に仕掛けてきましたわね。一体これは……」
野外学習が終わりを迎えて、休息日が与えられた。
その間に身体中に感じていた筋肉痛は次第に楽になっていく。
だけど、このまま毎回筋肉痛になるなど情けないですわ。
今回のような失態を犯していては、彼を隣に立たせる資格などありませんの。
「まぁ、なんてはしたないことを考えているのかしら? 彼を私の隣に立たせるだなんて。ふふ、その資格があるのか見極めるしかありませんわね。光栄に思ってもらわなければ。王族の隣に立つ資格がある男なのか」
不意に、あの戦場で彼の言葉を思い出す。
「俺を信じろ」
あの力強い言葉に勇気づけられ、私は己の隠していた力を使う決心ができましたわ。なんて生意気な。
真っ赤になって顔を隠したくなるほどに恥ずかしいですの。
「俺を信じろですって……。そんなこと言われてしまえば信じるしかないではないですの」
私はベッドに座って枕を抱き寄せますの。
何度もフラッシュバックするあの時の言葉と、キラキラと光るアンディウスのかっこいい顔が思い出されてしまいますの。
「キャーーーー!!! 何度も私の記憶に出てこないで欲しいですの!!!」
ここ数日は何度も何度もフラッシュバックされてしまっていますの。
学園が始まって、私はまともに彼の顔が見れるのでしょうか? あの眠そうにしている情けない顔が、それなのに戦いになるとカッコ良く私の前に出た顔が……。
「ハァー、かっこいいですわ」
もう、ずっと彼のことしか考えられませんの。
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