第28話 王女との向き合い方

 俺は考え方を改めることにした。


 カグラ王女は、現在闇堕ちしているわけじゃない。

 それにマシロの敵対者でもない。

 もしも、カグラ王女が、俺と友好的な関係を結んでくれるなら、レオやマシロと敵対することなく協力関係を結べるかもしれない。


 マシロの最終目標は、厄災の魔女ベリベットを倒すことだ。


 俺やレオもあの日の出来事を、俺の無力さを忘れたことはない。

 

 レオと親友である以上は、レオを見ていれば、女性は近づいてくる。

 そのボジションを崩さなければ、美味しい場面には何度でも出会えるはずだ。


 ならば、考え方を変えて、カグラ王女を味方にするために動いた方が、将来のマシロやレオが戦いをするときに良い味方になってもらえるかもしれない。


「なっ、なんですの? どうして今日は起きているんですの?」


 俺は考え事をしながら、隣に座っているカグラ王女を見つめる。


 なぜかクラスの女性とから、ヒソヒソと声が聞こえてくるが、何かいけなかっただろうか?


「いいえ、俺は考え方を変えようかと思いまして」

「考え方を変える?」


 そっとカグラ王女の耳元に近づいていく。

 すると、それまでヒソヒソ話をしていた教室の女生徒たちから、何やから黄色い悲鳴が聞こえてくる。


「「「キャーーー!!!」」」


 カグラ王女は、顔を真っ赤にして何も反応しないので、別に耳元で語りかけることは問題ないはずだ。


「はい。もう少しあなたと仲良くなろうと思いまして」

「なっ!!! わっ、妾と仲良くじゃと!」


 動揺すると敬語が無くなるのか? カグラ王女の生態調査を続けた方がいいだろう。


「ええ、あなたが何を望み。何が好みなのか教えていただけますか?」

 

 望みを叶えてやることでこちらの願いを聞いてもらう。

 そして、好みを知っておくことで機嫌がとれるだろう。


「なっ! なっ! なっ!」

「どうかしましたか?」

「おっ! お前! わざとしておるであろう?!」


 真っ赤な顔で指をこちらに突きつけて怒鳴られてしまった。


「えっ? 何か気に触ることをしましたか?」

「むむむむむむむ、もしかして天然かえ? 厄介じゃ! こやつ!」


 今度は座って、一人でぶつぶつと言い出した。


 女心は全くわからん。

 モテモテになりたいが、女心を勉強しなければ攻略は難しい。

 マシロにでも今度聞いてみるか。


「少しずつ教えてくださいね」


 俺はカグラ王女にもう一度耳元で声をかけて、先生が入ってきたので、授業を開始する。


 男女比が1/10の世界なので、元の世界で男子校に女子が一人な感覚でいるんだけど、よくわからん。


 俺がチラリと他の女生徒に視線を向けると、顔を背けらられる。


 レオはあんなにもモテるのに俺は避けられる。

 くっ、これが美少年系イケメンとモブ顔の差と言うやつか。



《sideカグラ・ダークネス・ヤンデーレ》


 先日、妾が普通に接しよと言ったからなのか? だから、このような態度を取るようになったのか? 距離感がおかしいであろう。


 男とは慎みを持って行動するものじゃ。

 

 兄であるクロードは他の女性とは一定の距離を保っており、母上からクロード兄上を守ってあげてと言われておる。


 妾とて、クロードに触れる時は気を使っておるのに、どうして耳元で囁くように声を発する。

 

 そっそのようなこと


 破廉恥ハレンチであろう!!!


 おっ、男がむやみやたらと無防備な姿を見せおってからに、寝顔などチラチラと見てしまうじゃろ? 砕けた口調で話してくれたら嬉しいであろう? 


 それが自分だけに接近して、話をしてくれるなんて!!!!


 チラリとあやつを見れば、窓の外を見て物憂げな顔をしておる。

 

 無防備すぎる!!!


 この場に集まっている女子たちは才女ばかりじゃ。

 戦闘はもちろん頭脳でも我が国を支えてくれる逸材たちであり、理性を持って我慢をしておるが、このような無防備に色気を振り撒く男が街を歩けば襲われることは当たり前であろう。


 伯爵家も苦労しておったじゃろうな。


 家族の仲が良いと聞いておる。

 

 おっ、お風呂なども一緒に入ったことがあると、レティシアが自慢しておった。


 おっ、お風呂!!!!


 グッと鼻に込み上げてくる熱い物に妾は鼻を抑える。


「カグラ王女?」


 こちらの異変に気付いた様子で、心配そうな顔向けおる。


 ぐっ! 可愛い!


 クロード兄上はクールな様子がかっこいいと思ってきた。

 ブルームはあざと可愛いタイプじゃ。

 グリーンは何を考えているのかわからんが、その呆然とした雰囲気が良いと言うものもいる。

 

 侯爵家のレオガオンは顔は良いが、アホそうな言動が目立つ。

 それが接しやすいと言う者もおるが、妾はアホは好かん。


「鼻血ですか? よかったらこれ使ってください」


 そう言ってあやつはハンカチを差し出してきおった。

 

「いっ、いらん」

「いや、制服が汚れますから」

「はっ、ハンカチが汚れるではないか!」

「これは差し上げますので、鼻血が止まったら捨ててください」


 そう言って、鼻にハンカチが当てられる。

 血の匂いと、アンディウスの匂いが脳を破壊する。


「カグラ王女?」


 妾はそのまま立ち上がって教室を飛び出した。


 もう我慢できない。


 一気に鼻血を噴き出して、恥ずかしい思いをするぐらいならば、トイレで顔を洗ってサボる方がマシだ!!!



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る