第27話 王女を回避しろ

 俺は決意をした。


 カグラ王女を避ける。


 彼女の側にいると、どうしても他の女子生徒が近づいてこない。

 俺だって、レオみたいなモテモテ薔薇色生活を送りたいんだ。


 だから、カグラ王女の接近を回避することにした。


 回避方法1、授業ギリギリに入室して、王女が座っている場所から遠い位置にさりげなく座る。


「ふぇっ!? ミルディン様!!!」

「ごめんね。来るのがギリギリになったからここに座らせてもらっていいかな?」

「もっ、もちろんです!」


 遅刻を装って、教室に入ることで前の席に座る。


 初めて話をする女生徒の隣の席に座って、教師がやってくるので、すぐに授業が開始される。


 物凄い睨まれるような視線をビンビンと背中に感じるが、この授業はクロードも受けているので、俺にかまっているよりもクロードをかまってもらいたい。


 回避方法2、授業をサボる。


 男性は、座学の授業を受ける義務が存在しない。

 基礎的な三科目だけは一般教養として受けなければいけないが、政治や経済、戦略戦術などは必須ではない。


 個人の自由でどんな授業に参加してもカリキュラムの変更は可能だ。


「あれ? アンディ。どうして魔法実技の授業にいるの?」

「みんなの魔法を見たくなって」

「サボるのは良くないよ。だけど、見たいなら仕方ないね。ウチのクラスは貴族の人がいないけどいいのかな?」

「むしろ、その方が嬉しい。皆さん、いつもマシロと仲良くしてくれてありがとう。今日は見学させてもらうけどいいかな?」

「「「「「「もちろんです!!!」」」」」


 平民出身の女性たちは明るくて可愛い。

 俺を受け入れてくれて、楽しくお話しをしながら授業の見学ができた。

 

 実際に、座学で習うのとは違って、魔法は目にすることで違いを知ることができる。個性と同じように同じ魔法でも使い手が変われば同じ結果にはならない。


 様々魔法が存在するので、見ていて本当に楽しい。


「何かあった? アンディが授業をサボるなんて珍しいじゃない。寝ているフリしていても真面目に授業を聞いているんでしょ?」

「うーん、ちょっと厄介な相手に絡まれているから逃げ回っているところなんだ」


 マシロは付き合いが長いので、俺のことをよくわかっている。


「厄介な相手? 私がぶっ飛ばしてあげようか?」

「やめとけ、相手はカグラ王女様だ」

「えっ! カグラ様?」

「そうだ。権力者にはあまり逆らわない方がいい。だから、適当に受け流しているんだ」

「なんだか、アンディも色々と大変なんだね」


 マシロに癒されて、平民の美少女たちに目の保養をして幸せを感じた。

 チヤホヤをされるってやっぱりいい。


3、授業に集中して、会話を受け流す。


 派閥の男子がいない際の授業はいつもの席に座ってカグラ王女が隣に座ってくるのを待つ。座ってこなければよし。

 座ってきても会話を合わせて仲良くなりすぎないようにする。


「あなた! やっと居ましたわね!」

「カグラ様、ご機嫌よう」

「ご機嫌よう! フン」


 挨拶、相槌、返答。


 この三つを駆使して、受け流すのだ。


「聞いているのかしら?」

「はい、聞いています。授業に集中もしていますが」

「寝ている姿勢じゃありませんの!」

「これが正式な態度です」


 何やら話しかけてくるのを受け流す。



 数日をこのように過ごしている間に絡んでくることが減るかと思っていた。

 だが、俺の予想は悉く覆されることになる。


「ふん、浅はかな考えですの」


 遅刻ギリギリにやってきて、カグラ王女から一番遠い席に座るつもりだったのに、先頭の席にカグラ王女が座っていた。


「なっ!」

「あなたの考えなどお見通しですのよ」


 授業をサボって、魔術の実技を見に行けば。


「凄いですね! カグラ様!」


 なぜかカグラ王女が、平民の女子に混じって魔法実技の指導を行なっていた。

 しかも好評な様子で、平民女子の人気を集めている。


「カグラ様の魔法理論って、凄く分かりやすいんだよ。悩んでいた子も解決できて助かっちゃった」


 味方だと思っていたマシロが取り込まれている。


「カグラ様、ご機嫌よう」

「ご機嫌ようではありませんわ。あなた適当に相手をしていればいいと思っているでしょ?」

「えっ? そんなことないですよ」

「私を蔑ろにして許されると思っておるのか?!」


 誰もいない場所でよかったのだが、どうしてこうも俺にこだわるのか理解できない。


「蔑ろにしてません。むしろ、邪魔をしないようにしていただけですよ」

「邪魔? なんの邪魔をしたというんですの?」

「いや、クロード王子様や、マックーロ様たちがカグラ様を支えているでしょ?」

「はっ? 意味がわかりません。ハッキリ言いなさい」

「いやいや、カグラ様を支えている者たちでしょが! 俺はどっちかと言えば、自由な陣営というか、そこには属していないので邪魔でしょうが」


 乙女ゲームではカグラ様は、クロードとマシロが付き合った際には、ブルームとペアを組んで登場する。

 マシロがクロード以外と付き合った際には、クロードのペアでクイーンバトルに参戦するので派閥としては完成している。


「そういうことですの。何を気にしているのかと思えば、私はそんなことにこだわりませんの。今まで通りにしていればいいですねの。なんでしたら、彼らに橋渡しをして差し上げても良くってよ」

「いや、結構です。俺、ハインツ家と仲良くしている方が楽なので」

「む〜、せっかく私が申し出てあげているのに! まぁいいですわ。とにかく態度を改めなさい!」


 なぜか、元に戻せと言われて叱られてしまった。

 

 くっ、どうすればカグラ王女から逃げられるんだ。

 

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