第25話 親友がモテ出した

 座学の授業は始まってから、何故かカグラ王女に付き纏われるようになった。

 どの教室にいっても、カグラ様が隣に座ってくる。

 せっかく他の女子と交流を持てる座学の授業を選択しているのに、全て計画を邪魔されてしまう。


 俺に何の恨みがあるんだと訴えたい。


 カグラ王女は、兄であるクロードを攻略する際のライバルキャラだ。

 極度のブラコンで、クロードと仲良くなっていくマシロに何かと対抗意識を燃やしてくるのだ。


 女王の娘として生まれ、全ての能力が高くてクロードとの恋愛をする際には大きな障害となる。しかも、クロードをマシロに奪われた後は闇堕ちして、クイーンバトルではかなり厄介な敵として現れる。


 頭が痛くなる相手から絡まれている状況にため息を吐きたくなる。


「なぁ、レオ。武術の授業はどんな感じなんだ?」

「楽しいぞ」

「楽しい?」


 久しぶりにレオと二人で食事をしている。

 

「ああ、今までマシロや、アンディとしか剣を撃ち合っていなかっただろ? 色々な者たちと剣を交えることができて勉強になる」


 相変わらず、レオは真面目だな。

 最近は厨二病も発動確率が下がっているし、俺としては寂しいことだ。


「そうか、よかったな」


 正直に言えば、俺もマシロもそれほど剣術は得意じゃない。

 マシロは、拳で戦うことの方が得意で、俺は搦手を使う。


 最近はパワースーツとの相性がいいので弓矢を試しているぐらいだ。

 接近戦よりも遠距離や中距離で戦う方が俺は向いている。


「はは、まぁ二人とも強いからいい対戦相手ではあるよ。だが、ここに集まっている者たちは皆が剣術を好きで、子供の頃から剣術を習っている者が多い。それにアネモネ流剣術が珍しいらしくて、教えて欲しいと尋ねられるぐらいだ」


 授業中に演習場で剣を振るっている姿を見る。

 確かに、レオの周りには女の子が集まってきていた。


 攻略対象者の三人。


 クロードは、全ての授業を満遍なく習得している。得意なことも苦手なこともない。全てが万能タイプのバランス型。


 グリーンは、レオを同じく戦闘訓練が多いが、芸術の授業もとっていて、音楽が得意だ。


 ブルームは、魔法が得意なので、魔法の授業を多くとっており、ダンスが得意。


 それぞれの攻略対象者と多く授業を受けることで親密度を高めることができる。


 基本的な授業を受ける際には、クロードと。

 武術の授業や芸術の授業を受ける際には、グリーンと。

 魔法とダンスなどの礼儀作法を受ける際には、ブルームと。


 それぞれ親密度を高めやすくなる。


 マシロは、一年次では魔法を中心に武術と基礎学を学んでいるので、バランス的には誰かに偏ってはいない。


「そんな呑気なことを言っているとマシロを誰かに取られるぞ」

「うん? 取られるってどういうことだよ?」

「うん?」

「うん?」


 何故か? 意味がわからないという顔をされてしまう。

 てっきりレオはマシロに好意を持っていると思っていた。

 だから、からかえば反応的には照れたり、慌てたりすると思っていた。


「いいや。お前が思っていたよりもお子ちゃまだって理解した」

「ハァー! バカにしているのか?」

「全然、むしろ応援したくなってきただけだ。それより、剣術で色々質問されるってことは、好きな女子とか、可愛い女子でもいたか?」

「あ〜まぁ、そうだな」


 おっ! 反応が意外に満更じゃない。


「だっ、誰にもいうなよ」

「もちろんだ。俺たちは親友だろ?」

「おう! 五人も気になる子がいるんだ」


 俺はワクワクしながら恋バナをするつもりだが、いきなりレオがぶっ込んできた。


「五人?」

「ああ、五人とも素晴らしい剣術をしていて、しかも美人で、俺に対して優しく声をかけてくれるんだよ。アカサはぶっきらぼうな感じで。イシキは優しく。ウスクはそっと寄り添うように。セエは体を触って指導してくれて、ソーコは気楽な感じでさ」


 うん、何だろう。


 優しくしてくれる女子全員に手当たり次第に惚れているような気もする。

 昔から、惚れっぽいやつだった。

 カグラ様のことも見てすぐに気に入っていた。

 

 それなのに、マシロとシルバー様には、全く反応しないのは何故なんだろうか? ただ親友として俺がいうことは決まっている。


「レオ! お前モテてるな!」

「だろ?! 俺もそう思うんだよ」


 俺たちは顔を寄せ合って、レオのモテ期を祝福するようにお茶で乾杯する。


「二人とも楽しそうだね。何かあったの?」

「よう、マシロ」

「ふっ、これは男同士の話だ」

「えー、仲間ハズレは寂しいぞ!」

「レオのモテ期がやってきた話だ」

「おい!」


 俺がマシロに教えてやると、レオが少しだけ慌てたような顔をする。

 おや? 少しはマシロを意識しているのか?


「え〜!レオにモテ期?」


 ジト目で俺とレオを見るマシロ。

 あれ? マシロの反応も思っていたのと違う。


「だからマシロには隠したほうがいいんだ。こいつが俺様の話を信じるかよ」

「そうか? レオはイケメンだろ? 剣術もかっこいいし」

「アンディ! お前はやっぱり親友だ!」

「相変わらず、アンディはレオに甘いね。だって、レオだよ。思考が幼稚なんだよ。大人っぽい雰囲気があるアンディなら何となくわかるんだけど」


 あら? 意外にマシロの評価は俺の方が高いのか? まぁ子供の頃から見ていると恋愛になる瞬間が難しいのかもな。


 だけど、高校生男子がするような会話を三人でしているのはやっぱり楽しいな。

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