第23話 バトルシステム

 乙女ゲームの世界では強さ、美しさ、賢さが必要になり、強さを証明するのはバトルである。


 その中で、魔法を駆使して戦うわけだが、どうしても相性と言うのは生まれてくる。


 超人的な力を発揮することができる強化魔法は、自然魔法に対して圧倒的な優位を持つことができるが、操作魔法や精神魔法に対して、体の主導権を奪われてしまうと弱い。


 操作魔法は強化魔法に対しては強さを発揮できるが、自然魔法や、精神魔法に対して操作が困難であり、精神的魔法を受けると対応ができない。


 精神魔法は強化魔法や操作魔法に対して強さを発揮できるが、広範囲で放たれる自然系に弱く対応ができない。


 自然魔法は操作魔法、精神魔法に対しては効果範囲の外から攻撃ができるので強いのだが、強化魔法の超人的な動きに対して対応が遅れてしまう。

 だが、その火力をもって殲滅する力が強いことで集団戦に強い。


 具現化魔法は、生み出す道具の特殊性に異なり力の発揮度合いが変わるので、一概に良し悪しの判断ができない。


 特殊魔法は、具現化魔法以上に魔法の種類が不明であり、使い手も少なく攻略するのはもっとも難しい。

 逆に、特殊性が高いために普通の魔法は苦手な者が多いので、強化魔法の超人的な動きに弱かったり、自然魔法の広範囲にあっさり負けてしまう。


 そして、今回はレオとマシロがバディを組んで、レティシア姉さんと戦う。


 クイーンバトルでは、男女ペアで行動するために、ある意味でレオとマシロは、クイーンバトルの想定で戦うことができる。


 対して、レティシア姉さんは二人を相手にするので、どのような戦いをするのか楽しみだ。


「それでは模擬戦を開始します」


 審判を務める俺がモニタールームから、開始の合図を出す。


 模擬戦として使われる闘技場の訓練所はダメージカウントが行われて、一定数のダメージを受けると敗北になる。


 特殊な魔法結界があるからこそ行えることで、二人の方が有利に見えるが、どちらか一人が一定数のダメージを受けると敗北になるので、どちらが良いと言いづらい。


 レオは剣を使うことができるが、ここではバトルスーツの仕様を禁じている。

 ベルベットと戦った時よりも一年が経って、レオのバトルスーツは進化を遂げている。

今のレティシア姉さんとマシロの差なら、レオのバトルスーツの力で勝ってしまう恐れがあるからだ。


「まずは、小手調べだ。どこからでもかかってくるがいい」


 余裕を見せるレティシア姉さんが、二人に対して、構えを見せて受けの姿勢を見せる。それに対して、レオとマシロがアイコンタクトを送って行動を開始した。


 二年間も冒険者として共に戦ってきているのだ。


 これぐらの連携は簡単に出来るだろう。


 マシロがレオを守りながら戦うと思っていたレティシア姉さんは、二人が別れて左右から攻撃を仕掛けてきたことに一瞬だけ驚いたが、すぐに弱いと判断したレオへと向かう。


 当たり前のことだ。


 魔法を使うことができるマシロよりも、武器を使って戦うことしかできないレオを弱いと判断するのは。


 だが……。


「なっ!」


 レティシア姉さんの攻撃がレオに迫った瞬間に、マシロが横から現れて、レティシア姉さんの不意をついた。


「くっ!」


 レティシア姉さんは、マシロの攻撃を受けながら移動を距離を取ろうとしたところで、レオが待ち構える。


 二人の連携はレオを囮にして、マシロが奇襲をかけ、さらに相手がたまらずに逃げたところで、レオが攻撃に転じる。

 二段、三段構えの仕掛けがなされているのだ。


 魔物なら、今の流れで決まっていたかもしれない。


「バーニング!」


 だが、レオの剣を受けないために、レティシア姉さんが炎の柱を生み出した。

 アリシア母さんほどではないが、自然魔法を多少は使えるレティシア姉さんは得意な強化だけでは対応できないと判断したわけだ。


「ふむ。少々舐めていたようだ」


 炎の柱でレオを遠ざけたレティシア姉さんは、二人に対して受けの姿勢を見せていたから対応が間に合った。

 攻勢に出ている時に、距離が離れていない状態なら、決まっていたかもしれない。


「私は本能で戦うタイプでな。あまり頭を使うことは得意ではないのだ。だから余計な小細工はしないで行くぞ」


 レティシア姉さんの瞳が獰猛な獣のように光って、マシロとレオを捉える。

瞬間移動したように感じるほどの速さでマシロの前に現れる。


 マシロも加速は得意としているが、瞬発力の初速で言えば、レティシア姉さんの方が圧倒的に早い。


「えっ!」

「ガードしろよ」


 二人が追い切れない速度でマシロに迫ったレティシア姉さんは、マシロのガードの上から殴りつけて吹き飛ばした。


 さらに、切り掛かってきたレオの攻撃を、炎で受け止めながら反撃ができるだけの余裕すら見せる。


 これが魔法使い。


 魔女の力だと言わんばかりの力差を見せつけてくれる。


「勝者! レティシア・ゲルト・ミルディン!」


 勝利宣言をすると、レティシア姉さんはVサインを俺に向けて放った。


「レティシア姉さん。凄いよ!」

「ふふん。アンディの前だからな張り切ってしまったぞ」


 俺はモニター室から訓練所に入って、得意げな顔をするレティシア姉さんを褒めてから二人に近づいていく。


「どうだった?」

「凄かったよ。一瞬で何をされたのか分からなかった」

「俺様もだ。炎だと思って怯んだ瞬間には吹き飛んでいた」


 レティシア姉さんは炎に慣れているので、レオが怯むことを想定していたんだろうな。レオもバトルスーツを着ていれば、気にしないでいられただろうが、単純に姉さんが強かった。


「二人とも、まずはレティシア姉さんにお礼を」

「そうだね。レティシア様! ありがとうございました」

「レティシア様。ありがとう」

「何、君たち二人もよく訓練している。だが、魔法使いとの戦いに慣れていないからな。私以外にも他の者たちとたくさん模擬戦をしてもらうと言い」

「「はい!」」


 今回は、二人の実践経験の不足がわかる戦いだった。

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