第22話 学園のシステム

 王立学園では、カリキュラムは自分で組むように設定をされている。


 これは乙女ゲームシステムということだが、主人公であるマシロをどんな風に育てるのか、自由度を高めるために作られた制度であり。


 基礎知識として、歴史、礼儀作法、算術の三つは絶対に取らなければいけないことが決まっている。


 それ以外の己を鍛え育てるのは自分自身ということになる。


 自分が学びたいことに合わせて授業を選択できるために単位はないが、卒業時には規定の成績以上を取らなければテストを受けることができない。


 また、テストを受けても落ちてしまうと卒業ができないので、そこでバッドエンドを迎えてしまう。


 だからこそ、ある程度は勉強に、強さに、美しさにと育てなければいけない項目はしっかりと抑えておく必要がある。


「アンディはどんなカリキュラムを組むんだ?」

「えっ? うーん、あまり動かなくていいようにしたいね」

「そうか、そうか。座学を中心にするなら、こんな流れなどどうだ?」


 ブラコンのレティシア姉さんが、俺の隣で付きっきりでスケジュールを考えてくれるので、俺としては案外簡単にカリキュラムを組むことができた。

 基本的に、座学を中心に、どうしても必要な項目だけを抑えていくことにした。


「レオは、どうするの?」

「俺は魔法が使えないから、剣術を中心にした格闘術と、座学だな」

「そっか、私はやっぱり魔法を習いたいから魔法を中心にかな。格闘術はそこそこに入れるけど、魔法を覚えないと」

「いいんじゃないか?」


 二人が仲睦まじく話をしている姿を見てしまうと、俺としては嬉しくなってしまう。


「皆様、カリキュラムを相談なさっているところで申し訳ありません」


 そう言って、食堂にやってきて声をかけたのは、くすんだ黄色い髪をもつ美しい女性だった。


「レティシア姉さん。あの人は?」

「生徒代表の雷帝ラージニアス先輩よ。強さはお墨付きね。現在の生徒ランキング第一で、学内では女王に一番近い人って言われているわ」


 雷帝ラージニアス。


 彼女はクイーンバトル時に、敵として現れる存在で美しい描写と自然魔法(雷)を得意としている。


「生徒代表を務めておりまして、何かお困りなことがあれば、いつでも相談してくださいませ」


 三年間しかない学園生活で、雷帝ラージニアスと練習試合ができるのは、この一年だけだ。どこかでマシロに経験の一環として、試合をさせてやりたい。


「それでは失礼します」


 立ち去っていく彼女の姿を見つめながら、俺は何かできないかと思案する。


「アンディ」

「えっ? どうしたのレティシア姉さん」

「アンディはラージニアス様が気になるのか?」

「うーん、どれだけ強いのかね」

「なんだ。強さが知りたいのか」

「えっ? うん」

「ならば、闘技場に行くとしよう」

「闘技場?」


 レティシア姉さんの言葉にレオやマシロもこちらを見る。


「ああ、強さを知るための記録が残されているのだ。過去の戦士たちの成績や戦いを見ることができるんだぞ」

「それは見たいね」

「私も興味があります!」

「俺様も!」


 俺たちはカリキュラムをある程度組み終えたので、闘技場に向かうことにした。

 闘技場では、上級生が訓練をしていた。


 訓練をしている人たちは、そこまで強くは見えなかったが、様々な魔法を見ることができるので楽しい。


「うわ〜凄いね」

「パワースーツを着ている奴はいないな」

「男性は、ここで訓練しないのかな?」

「お前たちは何を言っているんだ。男性が訓練などするはずがないだろ?」

「えっ?」

「そうなんですか?」

「ああ、魔法が使えない男性は、闘技場ではなく、訓練所で体を鍛えるぐらいだ」


 訓練所は、闘技場の中にある運動器具がおかれた場所だった。


「危険な戦闘訓練ではなく。戦闘時に逃げる脚力や体力を鍛えるのだ」

「でも」


 マシロや、俺とレオを見る。


 師匠に師事してからの二年間で身長が伸びて、体格も良くなった。

 レオは剣術、俺は……。


「確か、三人は共に訓練をして冒険者をしていたと言っていたな。母上が、アンディが危ないことをするから心配だと愚痴っていたな。ふむ、ならば私と戦闘訓練をしてみるか?」

「レティシア姉さんと?」

「ああ、これでも私は上位貴族として恥ずかしくない成績を収めている。一位こそシルバー様に譲ってはいるが、同学年ではベストファイブに入れるほどには強い」


 俺はマシロとレオを見る。

 

「凄いね! レティシア姉さん。俺は戦うのは好きじゃないから、二人と戦ってやってくれないか?」

「アンディの頼みなら仕方ないな。いいだろう。二人まとめてかかってくるがいい」

「「よろしくお願いします」」


 魔物との戦いとは違って魔女の戦いは経験がものをいう。レティシア姉さんに胸を借りられるのはありがたい。


 二人を実践形式で鍛えられる。


 四人で闘技場に移動して、一区間を借りて訓練を開始する。

 広い闘技場はいくつかの実践形式のフィールドが設けられている。


「どこからでもかかってくるがいい」


 レティシア姉さんは、バーニングボディーという肉体強化の魔法を得意としている。全身に炎を纏って、火力が圧倒的な攻撃力を生み出す。


 同じ強化型のマシロは越えなければいけない壁だ。

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