第15話 ズーの遺跡 3
青いガチャを叩き割った。
「なっ! 痛い! 痛いぞ!」
首の後ろ、うなじを抑えて
体に焼き印が付く際の痛みを感じたのだろう大袈裟な奴だ。
「ハァハァハァ、くく、くあははははははは!!! そうか、これがパワースーツなのか?!」
喜びと驚き、自分になかった力を手に入れる瞬間、人は全能感を感じる。
普段から、厨二病チックなレオも努力をすることで剣術を手に入れた。
今では少しだけ厨二病はなりを潜めている。
だが、なんの説明もされないで、誰かが手に入れるはずだった力を奪った者にとっては、簡単に力を手に入れられたように感じるだろう。
「おい、何か叫び声をあげてこのパワースーツの機能を発動していたな」
「ああ、お前がそのパワースーツに感じる魂の呼び声を叫べ! 自ずとパワースーツが応えてくれるだろう」
「くくく、いいだろう。見せてやる」
ゲーム内で課金すれば攻略対象の男性キャラには全員分の変身パワースーツが用意できる。
それぞれの攻略キャラに合わせた変身を見たいと内心では思ってしまう。
ブルーム・ハーラー・マックーロの変身は……。
「ふふ、僕にこそ相応しい!! 青き
首筋から体を守る鎧が現れて、全身に纏われる。
「おお!」
感動している、ブルーム。
その姿は、小柄であざといブルームの印象とは違って、巨大な鎧によって厳つい雰囲気に見える。
「そうだ! 僕には男らしくてカッコいいパワースーツが似合うのだ! わかっているではないか?!」
明らかに防御特化した鎧にブルームは興奮している。
俺も変身した方がいいか?
レオ達を見るが、どうやらその必要はなさそうだ。
「レオ! 凄いね!」
「おう! 今までの修行の成果が全て出せるぞ!」
一年間、基礎トレーニングから武術の型、そしてそれぞれの戦い方に合わせた応用を作り上げてきた。
レオは剣術を得意としていたので、剣術を基本とした応用に入り、魔物を狩る際に剣術主体の戦い方で、随分と鍛えられた。
その成果が、巨大なロックゴーレムを相手にしても発揮されている。
「GUOOOOOO!!!」
レオ、マシロ、アスタルテさんの三人で戦うことで十分に倒せそうな雰囲気を放っている。
「ドケドケドケ! 僕のパワースーツで倒してやる!」
そんな戦力分析をしていると、突然ブルームが叫び声をあげてゴーレムに突撃していく。
「えええ!!! 坊ちゃん?」
「アスタルテ! 援護しろ。僕があいつを倒す」
「はっ、はい!」
「おっ、おい!」
「ちょっと!」
突然現れたブルームに三人も戸惑うが、力を手に入れて過信した奴は止まらない。
プロテクターのようなゴツい鎧を纏ったブルームは、そのままゴーレムに向かってショルダータックルを決める。
威力は上々で、ロックゴーレムがよろめいた。
「いける! 僕の攻撃でロックゴーレムがよろめいたぞ」
「ええ、ええ、凄いですね。坊ちゃん。だけど、一撃当てただけで勝ち誇らないでくださいね」
反撃を加えようとするロックゴーレムにアスタルテさんが追撃を加える。
攻撃要員が増えたことで、最初よりもこちらが優勢になっている。
「アンディ君、凄いね!」
「アンディ、どうする?」
「あっちが戦ってくれるなら体力を温存しよう。連携をとったことのない相手と無理に連携しようとするのはよくない。上手くいかないからな」
「うん。わかったよ」
「おう。それにしてもこれは凄いな」
レオが自分の腕に現れたパワースーツに感動している。
「レオ、それは成長するパワースーツなんだ。お前の成長にパワースーツも育っていく。アームだけなのは初期段階だからだ。これから一年、学園に行くまでに俺たちはこのパワースーツを育てるために修行するぞ」
「おう! 任せろ!」
「いいな〜! 私ももっと魔法が頑張って二人に負けないようにしないと」
俺たちが呑気に話している間に、ブルームとアスタルテさんが、ゴーレムを倒してしまう。
「くくく!!! これはいい! これはいいぞ! おい、ミルディン。今回はこれを僕に教えてくれたから、見逃してやるぞ。ありがたく思え! だけど、貴様らは目立ち過ぎだ! クロード王子様やグリーン様の邪魔にならなようにしろよ。それじゃあね」
ブルームは力を掠め取って、ロックゴーレムを倒したことで満足したようだ。
開かれた扉から出ていく。
「なぁ、これってどうやった消えるんだ?」
戦いが終わったことで、レオが腕に残るパワースーツを見る。
「体力が切れても消えるが、解除したいなら。《解き放て》と念じてみろ」
「ああ、解き放て!」
レオが言葉を発するとパワースーツは焼印に戻って、レオの腕が現れる。
念じるだけでいいんだけどな。
「スゲーな。こんな凄い宝物をありがとうな」
「これは師匠からの卒業試験なんだ。一年間の訓練が終わったという証明だって師匠は言っていた」
「お父さん! あっ!」
「マシロ、隠さなくてもいいさ。師匠は男なんだな?」
「何っ! そうなのか?!」
おいおい、レオ。
気づいていなかったのか? 観察が足りていないぞ。
「うっ、うん。隠していてごめんね。だからお父さんは魔法が使えないの。それで私に魔法を教えることはできなくて。だけど、世の中は男性というだけで襲われてしまうかもしれないから、いつもは女性の格好をして女性のフリをしているの」
「そうだったのか、話してくれてありがとう」
「俺様はビックリだ」
師匠が作中に登場しなかったのは、男性キャラとして必要なかったからかもしれないな。
「さぁ、そろそろ帰ろう。邪魔は入ったが、俺たちの目的は達成できたんだからな」
「おう!」
「うん!」
そんな俺たちが帰ろうと立ち上がった瞬間に、遺跡全体が地響きを上げて揺れ始める。
「これは!」
「何、何?!」
「おいおい、このままじゃ崩れるんじゃないか?」
「二人とも走れ!」
俺たちはやってきた道を全力で走り抜けた。
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