第4話 家族との過ごし方

 自室に戻った俺は、専属メイドの黒髪黒目の寡黙なメイドさんであるアンさん寝ること告げる。


「かしこまりました。ごゆっくりお休みください。夕食の時にはお声かけをさせていただきます」

「うん。お願いします」

「滅相もございません」


 アンさんとのやりとりを終えてベッドに入った。

 頭の痛みも限界に達していたので、すぐに眠ってしまう。

 

 眠りが浅くなり、体に暖かさと重みを感じて目が覚める。

 

 重み?


「兄様。おはようなの」

「うん? シンシア? おはよう。あれ? どうしてシンシアがいるの?」

 

 一つ歳下のシンシアは、赤毛のふわふわ髪で可愛らしい女の子だ。

 まだまだ発展途上の体はツルペタではあるが、甘えた雰囲気を醸し出している。


「もうすぐ夕食だから、声をかけにきたの。アンが寝ているって教えてくれたの。だから一緒にお休みしてたの」

「そうか、呼びにきてくれたんだね。ありがとう」


 シンシアの髪を撫でてあげると、気持ちよく嬉しそうな顔をする。

 前世では妹や姉がいた記憶はない、妹は可愛いものなんだな。


「そろそろ起きるよ」

「頭痛いの大丈夫?」

「あれ? そういえば痛みがマシになっているような?」

「ふふふ、私が回復魔法をかけたの」

「シンシアが? そうか、ありがとう。凄いね。ハインツ侯爵家の治療師が回復魔法をかけてくれた後も痛かったのに、シンシアの回復魔法だと痛くないや」

「よかったの。じゃあ、ご褒美が欲しいの」

「ご褒美?」


 俺が首を傾げていると、軽い感じで「ちゅっ」とキスをされてしまう。

 子供同士がするような可愛いキスだ。


「ふふ、兄様の唇を頂いたの」

「あ〜、ファーストキスだね」

「まぁ! それは嬉しいですの」


 俺の上で唇を舐める少女は妖艶に見える。


「ほら、そろそろ夕食に行こう」

「はいですの。兄様、大好きですの」


 抱きついてくるシンシアを抱っこしたまま立ち上がる。

 妹はこんなにも甘えてくれる存在なんだな。

 何故か、抱っこしたまま離れてくれないので、そのまま食堂へ向かうことにした。


「アンディ、起きたのね。シンシア、そろそろ離れなさい」

「は〜い」

「アンディ、怪我の具合はどうなんだ?」

「シンシアが、回復魔法をかけてくれたので、痛みがなくなりました」


 俺がシンシアの頭を撫でながら、お礼を伝えると嬉しそうなシンシアが抱きついてくる。


「シンシアは操作系の魔法が得意だから回復魔法もお手のものね」

「くっ、私はそっち方面は苦手だからな。アンディ、不甲斐ない姉ですまない」


 レティシア姉さんが悔しそうな顔をする。

 一つ歳上のレティシア姉さんは、母上に似て美人系の顔をして凛々しい。


「魔法にも得手不得手があるんだね。僕は使えないから、魔法が出来るだけで凄いよ」

「ふふん、アンディに褒められると悪い気はしないな」

「アンディ、私は? 母上は凄い?」

「もちろんです。母上の炎は綺麗で凄いです」


 なぜ、娘と張り合うのかわからないが、可愛く問いかけてくるので褒めておく。


「ふふ、ありがとう。そうだわ。今日は家族水入らずでお風呂に入りましょう。週末には社交界も有るし、年明けにはレティシアの学校入学もあって忙しくなるからね」


 仲の良い親子なんだな。

 俺は食事を口につけて、驚いてしまう。


「凄く、美味しいです」

「あら、よかったわね」

「アンディは、どこかやる気の無い雰囲気だったのに、今は元気になったように見えるな」

「そうかな?」

「そうね。私も、馬車で大好きって言ってもらっちゃった」


 母上は照れたように娘二人に自慢する。


「なっ! 母上だけズルいです。アンディ、わっ、私のことはどうだ? 好きか?」

「レティシア姉さんのことも大好きだよ」

「ふふん、そうだろ」


 なぜか自慢げに発展途上の胸をシンシアに向ける。


「シンシアは?」

「うん。シンシアも大好きだよ」

「私もアンディ兄様が大好きなの!」


 涙目でウルウルとしていたシンシアにも伝えると、また抱きつかれた。

 楽しい夕食を終えて、部屋に戻ろうとすると三人に捕まえられる。


「えっ?」

「どこにいくの? 次はお風呂でしょ」

「そうだぞ。今日は家族で入るんだからな」

「一緒に入るんですの」


 俺はそのままズルズルと風呂場に連れて行かれて、服を脱がされていく。


 十三歳の体はまだまだ子供だと思えるほどに、細くて筋肉が無い。

 ただ、すでに精通は終えているようで、皮はめくれていた。


「ふふふ、やっぱり家族で一緒にお風呂へ入るのが一番よね」


 そう言って全ての服を脱ぎ捨てた母上に手を引かれて風呂場に入っていく。


 風呂場には、すでにレティシア姉さんとシンシアが裸で待っていた。


「アンディ、ほら私が洗ってやろう」

「シンシアは私が洗うわね」

「わっ、私も自分で洗えるのです」


 まだまだ年齢よりも幼く見られているのかもしれないな。

 シンシアと共に洗われて、四人家族として、湯船に浸かる。

 嬉しいような緊張するような不思議なお風呂場の雰囲気だ。


「そうだ。母上、週末の社交界とは?」

「アンディは記憶が混濁して忘れちゃった? あなたと同い年の上位貴族を集めて、女王陛下に謁見するのよ。あなたが子供を授けることができるようになった年齢だと女王陛下に認めてもらうの。その後は、同い年の子達と話をするの。それを社交界デビューというのよ。あなたのエスコートはレティシアが務めるわ」

「ふふん、私に任せておけ」


 湯船に使っている俺へ、膨らみかけている胸を押し付けながら抱きつくレティシア姉さん。


 どうやら家族みんな仲が良くて、スキンシップも当たり前にしてくる。


 家族と裸の付き合いにもなれないとな。

 

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