拒まれた愛

「やめて」

「えっ?」

「離してよ」


亜香里は、ベッドから立ち上がり電気をつける。


「亜香里……あのさ」

「最近、ずっと変な事ばっかりしてくると思ったら……。結局、これ?」

「そんな嫌そうな言い方するなよ。俺達は、夫婦だろ?」

「夫婦だけど。私は、諒哉の性欲処理じゃないの。わかる?」

「どういう意味だよ」

「だから、自分の性欲ぐらい自分でどうにかしてって言ってるの」


亜香里は、あからさまに嫌な顔をして不機嫌になる。


「亜香里が好きだから、亜香里に触れたいって思う事はおかしいって事か?」

「おかしいでしょ?好きな相手が嫌だっていう事をやる時点で間違ってるでしょ?」

「だったら、他所の誰かとしろって事なのか?」

「その方が助かる。お小遣い渡してるんだからそうしてよ」


亜香里は、スマホを取って服を着替え始める。


「どこ行くんだ?」

「今日は、ホテルで寝る」

「男がいるんだろ?そいつの所に行くんだろ?」


つい口が滑ってしまった。

亜香里は、俺を睨み付ける。


「だったら何?」

「亜香里……」

「エッチの事しか考えてない諒哉と違うの。彼も私もお互いの将来をちゃんと考えてる」

「俺だって、亜香里との将来を考えてるよ」

「考えてないよ。私言ったよね?今は、子供が出来たら困るって」

「じゃあ、いつならいいんだよ」


亜香里は、苛々して服をボストンバッグに詰め始める。


「エッチか子供しか頭にない諒哉といるの……今は無理。冷静になれないから言い合いになるのわかる。だから、暫く頭冷やすから……明日には帰ってくるから」


亜香里は、寝室から出て行く。

パタンと扉が閉まる音がして、俺は崩れ落ちる。


不倫なんてしていないと【否定】してくれると思っていた。

だけど……。

違った。


女の人は、不倫すると旦那を無理になるんだろう?

昔、テレビの番組で言ってた。

亜香里は、もう俺が無理になったんだろう?


俺達……。

もう無理なのかな?


身体中にある亜香里への愛。

全部消えてしまえばいいのに……。

愛なんて消えてしまえば、さっさと別れられるのに……。


好きだから触れたい。

愛してるから抱かせろ。

なんて言わないよ。

ただ、俺は……。

亜香里に触れたいだけなんだ。


「亜香里……何で……」


拒絶された心が痛い。

亜香里にとって、俺は自分の性欲を押し付けるだけのモンスターなんだ。

隣に眠ってる時からずっと……。


だから、亜香里に触れられなかった。

こうやって、ハッキリ拒絶されたくなかったんだと思う。

だって傷口こころから流れた血を……。

一人で止める方法が思いつかないんだ。

俺には……。



結局、一睡も出来ないまま朝を迎えた。

朝一番で、会社に連絡をして休んだ。

俺は、キャリーバッグを取り出して荷物を詰める。

いつ帰宅してくるかわからない。

今の状態で、亜香里に、会いたくなかった。

俺は、乃愛さんにメッセージを送る。


もしかすると、この流れる血を……。

乃愛さんなら、止める方法を知ってるかも知れないと思ったから。


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