第6話 新たな世界

西暦2031(令和13)年2月17日 東京都 首相官邸


 戦闘から一夜明け、首相官邸の地下では上村うえむら統合幕僚長が南原達に報告を上げていた。


「敵軍は長崎市及び周辺地域へ、航空戦力を主体とした大部隊で侵攻しましたが、第4師団及び第8航空団が敵戦力を全て撃破。増援と思しき部隊も海上自衛隊第2護衛隊群によって迎撃に成功したとの事です」


『迎撃には成功し、これ以上の被害を阻止する事は出来た。次は五島列島を奪還し、全ての敵を排除するのみだが…』


 『代行者』はそこで言葉を止め、代わって南原が尋ねる。


「敵は、一体どんな勢力なのですか?一定数を拘束したと聞きましたが…」


「はっ…『使者』からの資料や聴取によると、相手は『パルシア帝国軍』、エスティア大陸を支配する超大国で、以前よりエスティア周辺の国・地域へ兵を送り込んで侵略を繰り返しているそうです。今回五島列島を占領し、長崎を襲撃したのも、その侵略行為の一環でしょう」


 上村は言い、南原と矢口は揃ってため息をつく。『代行者』は話す。


『どのみち、我が国はパルシアなる国と戦争をする事は避けられぬだろう。5年前の戦争の反省を活かして、資源の備蓄量はある程度余裕を持たせているが、それでも戦争は短期間で終わらせねばならん』


 この翌日、政府は『防衛出動の発令』を宣言。自衛隊全部隊に対して戦時体制が布告され、陸上総隊直轄部隊も即座に九州へ展開を開始した。


・・・


同日 沖縄県沖縄本島南西沖合


「特使、相手の艦が来ました。あちらさんも使者を乗せている事でしょう」


 海上自衛隊護衛艦「みくま」の艦橋にて、艦長の木本きもと二等海佐は隣に立つ外務省外交官に話しかける。その「みくま」の前方数百メートル先には、火砲を主体に武装した軍艦の姿。


 『テージア共和国』を名乗る国が接触を試みてきたのは2日前。


「艦長、テージア共和国の特使を乗せた内火艇が到着しました」


「よし…では出迎えに行こう」

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