第4話

月曜日、朝一番に矢田が営業の部屋へやってきた。

森は佐藤に声を掛け三人で会議室に入る。

工場から上がってきた見積金額は九億五千万。

「矢田さん、この金額どう思う」

森が聴く。

「まぁ、こんなもんじゃないの」

「僕はちょっと吹っ掛け気味な感じがするんだけど、佐藤君はどお?」

「はい、今回のを福島システムと比べると、アクセスボックスの台数比なら七億九千万、カメラの台数比なら九億二千万になります。制御ソフトは変わらないとして数千万程度高い気がします」

「いや、工場が二日掛けて見積もったんだから、まともな金額だと思うよ。まぁ、多少は余裕持ってるだろうけど」

矢田が言う。

「いや、僕らは先方が予算どれくらい取ってるか考えてるんですよ。山下とそれで折り合いつかないって言ってんだから。ここで箸にも棒にも掛からない金額持ってったら、この話はそこで終わりですよ」

「いや、まぁ、それはそうだな。その辺は営業さんの腕に掛かってるわな。佐藤さん、なんか情報無いの?」

佐藤は森を見た。

「佐藤君は九億を切ったくらいの予算じゃないかというんだよね」

「江角さんがそう言ったの?」

「いえ、江角部長が具体的な金額を言ったことはありません。ただ向こうの会議室で江角部長がこの話を私にした時、まず山下へのボヤキから始まって怒ってましたね。で、うちにやらないかと話して、最後に『急な話になる』と言って、その後から『急は厳しいよね』って言ったんです。変な話ですけどこれ、江角部長、自分が言った『急な話』で『九』を連想し、山下との交渉を思い出してボヤくように言ったんじゃないかと思うんです」

「それが、九億は厳しいという意味だと?」

呆れたように矢田が言った。

「ま、この見積もり持って精査部行きますか」

森は言った。

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