第3話

タクシーに乗せた江角を『華しゃぶ』へ案内すると、森と矢田が入り口で待っていた。

「おっ、矢田ちゃんもいるの」

「お久しぶりです」

「こりゃ、拉致された気分だな」

冗談めかして言う江角を個室に案内する。

ここはしゃぶしゃぶの専門店である。江角は肉好きだ。

座敷に入ると、江角と森が向かい合い、森の隣に矢田、江角の隣に佐藤が座った。

ビールで乾杯し、ひとしきり当たり障りない世間話をする。

さすが高級店の肉は旨いねと、江角はしゃぶしゃぶを堪能しているように見えた。

小一時間も過ぎた頃、

「ええと、じゃあ、独り言を言うよ」

江角が言った。

矢田はすかさず手帳を取り出す。

「アクセスボックスA五台、B七台、カメラ百五十六台、センサー二百八十五台、金属探知機二台、モニター十七台、ヘッドセット二十台、かな。制御卓は三つ欲しいな、あとカメラはジョイスティックがいいな」

矢田が何やら技術的な事をニ、三質問した。

「この見積もりを来週半ばには欲しいんだけど」

「部長、予算はどれくらいです?」

森が聞く。

「先ず見積もってみてよ、どのくらいになるか」

江角にタクシー券を渡しタクシーに乗せると、佐藤たちは会社へ戻った。

矢田は工場へ電話しスペック概要を伝え、月曜までに見積もるよう言った。

「よしと。後は見積り上がってきてからだな」

森は言い、三人はそこで解散した。

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