第12話 討論! 凛 vs 樹
凛が口火を切った。
「まず、私から質問させていただいてよろしいですか?」
「宮島議員、どうぞ」
凛は樹の方をしっかりと見た。
「白岩さん、まずお聞きします。確かに粒子散布は太陽光の強度を制御する期待の技術の一つです。しかしながら今進めていらっしゃる分裂型の粒子は、基本的に分裂度合の制御が非常に難しいですよね。下手をすれば制御ができなくなって、過度に日光を遮断し長い冬を引き起こしかねません。そのリスクをどうお考えでしょうか?」
基本的で、かつ最も重要な問題である。
しかし樹も負けていない。待っていましたとばかりに即答する。
「凛議員。確かにおっしゃる通りです。しかしながらこれは避けて通れないハードルです。幾つかポイントがあります」
樹は自信ありげに続ける。
「一つ目として、これは世界中で開発競争が繰り広げられている技術であり、我社は事実上日本の代表です。他社では外国勢に太刀打ちできません。我が社はこの技術で負けるわけにはいかないのです。政府からも強く期待されています」
「二つ目として、弊社には非常に優れた研究者がおります。彼女らの力をもってすれば、何とか技術リスクを回避できるものと考えています。」
「そして最後に、これは地球温暖化に対抗する最もコストパフォーマンスに優れ、効率の高い夢の技術なのです。多少のリスクを負ってでもこの夢を実現させる事こそが人類の未来を創るのです」
凛と樹はこれらの観点で数分間、討論を交わした。
かつてバッテリーであった二人。真剣なピッチング練習の様だった。
会場からも意見が出た。
近くには娘の
「滝林と言います。白岩さん、宮島議員、貴重なお話ありがとうございます。少し古い話で恐縮ですが、昔、日本に初期型の原子力発電所が多数存在していました。この近くだと
日本で生まれた訳では無いユージだが、よく日本を近代史を勉強しており環境問題についても詳しい。
「原発は当時、やはり夢の技術としてもてはやされましたが、スリーマイル島、チェルノブイリ、福島と大きな放射線漏洩事故が起き、核廃棄物も問題になりました。粒子分裂は非常に魅力的な技術ですが、原子力応用と同じような問題が起きる展開が予想されませんでしょうか? 私は心配です」
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