第4話 樫木美音という女性
付き合って1ヵ月が経とうとしていた。お互い試験期間に入り会える日が少なくなった。テスト作成に試験対策などをすると夜も遅くなってしまう夕飯を一緒に食べる余裕すらない。テストが始まっても忙しさは変わらない丸つけ、成績の処理など時間を要するものがたくさんある。こんな生活を2週間続けてやっと仕事がひと段落した。試験期間が終わると大きな休みが待っている。好きな人にやっと会えると心が弾んでいた。休みに入って最初の日に美音からメールが来た。スキーできる?今度学校でスキー合宿があるんだけど私滑れないんだ。と書いてあった。結構滑れると自分では自負してるから教えるよと返信した。次の週に一緒に軽井沢に向かった。俺は内心焦っていた簡単に引き受けてしまったが、これ一緒にホテルに泊まるってことだよな。交際1ヶ月で泊まりかよ。そんな事とはつい知らず美音は楽しいそうに新幹線の隣の席に座っている。車内アナウンスで軽井沢と流れ始めた。荷物を準備して新幹線を降りると雪景色が広がっていた。コインロッカーに荷物を入れゲレンデに向かう「どれぐらい滑れるの」と聞くと「初めて」と美音は答えた。リフトの乗り方を教えて頂上に向かう。ゆっくりと滑る練習をした。美音はなかなかに筋が良くすぐにボーゲンまでできるようになった。お昼ご飯をゲレンデのレストランで食べた。会計をし歩き出すと美音が俺の服を引っ張ったと思ったら一緒に倒れ込んだ「痛〜スキーの靴歩きにく過ぎ」と美音が言った。「美音はドジだな〜」と俺が言うと赤く染まったほっぺたを少し膨らませて不貞腐れた。こんな事をしてスキーを練習している間に日が暮れ始めた。「ホテルに行こうか」と美音が言った「おけー」と俺は返答した。ホテルの予約は美音に任せているので俺は何も知らない。チェックインして部屋に行くと俺はさらに焦った。いくら交際してても同じ部屋まだ1ヶ月。「ごめんね。今スキーシーズンでホテル1室しか取れなかったんだ」と美音が俺の顔を見ながら謝った。「全然付き合ってるからいいんじゃない」と高校生みたいな会話をした。部屋で一息つき食事に向かう。食事中に自分たちの過去の話になった。「なんで教師になったんですか」と俺が聞くと「長い話になるけど、私小学生の頃担任の教師が嫌いでさいつもクラスの問題を見てぬふり自分が担任に代わって解決しようと頑張ったけど無力で何も出来ずにいて自分を責めて腐ってたんだ。そんなこんなで大学に入ったんだけど大学でもずっと腐ってたんだ。なにしてたんだって話だよね。だけど大学入ってすぐに塾講師のバイトを始めたんだ。その時担当した生徒に教師になればって言われたんだよね。そうだこの無力感を活かすには、教師になって私みたいな生徒をうまないようにしようと思ったんだ。」これが教師になった理由かなと美音が言った。この話を聞いて俺は初めて美音という女性を理解できた気がした。部屋に戻り寝てしまった。こうして初めての宿泊デートの夜は更けて行った。
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