第3話 ラアン

地下牢に続く階段を降りながらタバコを蒸す。

「俺が飼い主ねぇ……」

そんな玉でもないし腹心なぞ入らない。

だからこその飼い犬な気もしてくるがボスにそこまでの考えがあるかは俺にはわからない。

地下牢を見ていくと、確かに鍵のかかった牢が一つ増えている。

見張りに鍵をもらい地下牢から出ていってもらった。

「お前が俺の犬か?」

地下牢の中にいたのは小柄な男だった。

成人はしているのだろうが痩せ細っているのと長い髪のせいで子供に見える。

「……いぬ?」

壁を向いていたそいつに話しかけると振り向いてからぼそりとつぶやいた。

大きい赤い目が此方を除く。

「ああ、俺が今日からお前の飼い主だ」

「おれの飼い主」

わかっているのかいないのか、きょとりと首を傾けている。

ほんとになんにもわかっていないんだな。めんどくせぇ

「取り敢えず来い、ここじゃうるさくて話もできん」

「は、い」

返事はやけに流暢だと思いながら地下牢を出る。

見張りに心配そうな顔をされたが問題はないだろう。

取り敢えず自室に連れていくとするか。


「さて、お前の名前は?」

おそらくボスが届けさせたのであろう資料が部屋に置いてあった。

あの人はどこまで此方の行動を読んでいるのだろう。

資料を読みながら取り敢えず聞いてみる。

「なまえ……なんばー69?」

「……そうか」

取り敢えず資料読み込もう。そうしよう。


No.69、

種族 送り狼八咫烏

実験内容 風の異能

特徴

鼻がとてもよく異能を嗅ぎ分けることができる。

知能は低く身体能力は高い。

武術、暗器を会得。

ただし送り狼の血液が入っている為上位種である真狼、大口真神には逆らえない。

以下種族の概要

送り狼

日本固有種

人の影に憑き対象を転ばせることで糧を得る。

能力

影に入ることができる、多少なら動かせる。

目に見える範囲での影移動も可能。

八咫烏

日本の神

詳細不明


「役にたたねぇ……」

なんだこのふざけた資料は。

もう少し何かあるだろう。

実験の過程とか書かなくても良かったのか?

種族の説明も雑すぎだろう。八咫烏は導きの神として祀られてたんだったか?

調べないとダメだな。

ふと横を見ると最初に部屋に来た時の位置から一ミリも動いていないであろうヤツが立っていた。

まあ、何も言ってないからどうすればいいかもわからないんだろうな。取り敢えず名前が無いと不便だ……。

No.69…69…ろく……くろ、クロ?

「よし、お前の名前は《クロ》だ」

「くろ?」

「ああ、お前の名前だ」

きょとりと目を瞬かせ首を傾げている。

「……名前はわかるか?」

「……名前はなんばー69」

…予想はしてた

「今までな、これからのお前はクロ」

わかったか?と言うと頷いた。

本当にわかってんのかコイツ。

「あとは……俺の前以外では《ラアン》と名乗れ」

「らあん」

「本当なら自分でつけるもんだがお前のその様子だと無理そうだしな。気に入らなかったら自分で考えろ」

そう言ってやると少し考えた素ぶりを見せコクリと頷いた。


ラアン(No.69)

クロという名をもらった。八咫烏と送り狼のハーフ

実験体

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誰ヶ為ノ【Blue Moon】 なつめオオカミ @natsumeookami

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