真犯人

文実に賭ける

第1話

真犯人


長野県にある集落で私は友人を待っていた。しかし1時間待っても誰も来ない。

バスが雪の影響で遅れているんだと思った。雪は強くなってきた一回ホテルに戻ろうと思い腰掛けていたベンチからゆっくり立ち上がった。


そんな時二人の男が来た「こんなところで何をしているんだ。」


私は迷わず「警察の方ですか」と聞いた。


男達は手帳を見せ「警視庁捜査一課の山木敏夫」「同じく阪上賢次と言います。」と言った。


山木が「なぜ我々が警察だと分かったのですか。」と聞いた。


私は答えた「2人もスーツのジャケットが奇妙に膨らんでいます。携帯を入れていたとしてもそんな膨らみは出来ない。考えられるのは胸のホルスターに入れている“拳銃”しかないかと。それにお二人とも雪が降る地域にいる人間の格好ではない。だから地方から来られた警察官だとそれに、格闘技をされている方の耳をされていますしね。」


阪上が「あなたは探偵か何かですか」と聞いてきた。


「私はただの推理オタクですよ」と答えた。


阪上が「話がしたい」と言った。


「お巡りさん達も同じホテルでしょうからホテルで話しましょう。この村にホテルは一つしかありませんからね」と笑いながら私は話した。


ホテルのロビーは暖かいウェルカムドリンクのホットコーヒーから湯気が出ている。冷たい手をポケットのカイロで温める。山木が話を始めた。


「もう一度聞きます。あの寒いバス停で何をされていたんですか。」


「友人を待っていました雪でバスが遅れていますけど。」と答えた。


私は「逆に何をしていたのですか」と切り返した。


山木は「捜査中の案件なのでお話しできかねます。ただ私から言えるのは、大きな声で言えませんがこの村は危険です。」

私は沈黙した。静寂な空間の中暖炉の火がパチパチと音を立てている。私の携帯が鳴った。バスがやっと到着したらしい。

「友人が到着したのでそろそろ…」私の問いかけに対し山木が立ち上がった「お時間ありがとうございました。」と山木が言った。私は軽く頭を下げ友人の元へ行った。友人の氷見と待ち合わせの場所で落ち合った。


氷見が私に話しかけた。「仕事の調子はどうだ」


「まあまあだね。」私の仕事は氷見だけが知っている。


ホテルに戻った山木達の姿はなかった。


チェックインをしてる時団体の客が隣に来た女2人と男2人だ。


このホテルは4階建で私達は最上階の部屋らしい。エレベーターに乗って閉を押そうとしたら団体客が「待ってください」と言いエレベーターに乗ってきた。「昔このホテルで殺人があったらしいよ」などと話しながら彼らは3階で降りた。私達は自分の部屋に入りでベッドで横になった。古いホテルなので壁が薄いのか廊下の声がよく聞こえる。外は吹雪で何も見えない。氷見がロビーでお茶を買ってくるといい部屋を後にした。聞き覚えのある声が廊下から聞こえる。山木の声だ。思わず耳を澄ませて聞いてしまった。ガチャという音がした非常階段のドアを開たらしく吹雪でよく聞こえない。「非常階段は大丈夫そうだ」というのだけは聞き取れた。しばらくして氷見が戻って来た。二人で積もる話をしていたら、あっという間に夕飯の時間になった。ロビーの横の食堂でさっきの団体と山木達が離れた位置でご飯を食べていた。団体客は3人しかいない。さっきまでは女がもう一人いたはずなのにと考えてしまった。氷見に「聞いているか」と聞かれて我にかえった。考えすぎか。

次の日の朝太陽が雪をキラキラっさせて眩しい。雪にてんてんと足跡があるその先になにかあるように見える好奇心に駆られた。防寒具を付け外に出ようとしたらフロントマンに呼び止められた。「昨日の吹雪で扉が開かないのでただいまホテルの周りを雪かきしております。少々お待ちください。」とのこと。少しがっかりした。部屋に戻ると氷見が起きていた。二人で朝食を食べに行く。ロビーを見ると山木達がバタバタして外に行った。ホテルの周の雪は除雪されたらしい。私も衝動が抑えられず「お茶買って来ると」氷見に言い張って山木を追いかけた。山木達は私がさっき気になった足跡を追いかけている。山木達が足を止めた。私も追いついた。山木達が見つめる先に目を落とした。そこには血で真っ赤になった包丁と紙に血で“警告する”と書いてあった。山木が私に気付き「この事は他言無用でお願いします。」と言った。包丁と紙を回収し山木達とホテルに戻り朝食を取った。朝食が終わるとロビーに昨日の団体がいた。ちゃんと4人いる。男と女いつも同じ席順だ

心のどこかでホッとした。ホットコーヒーを飲んで何やら話合いをしている。でも昨日いなかった女だけ水を飲んで氷を食べている。私達は部屋に帰った。部屋で私は氷見に朝起きた出来事を話した。氷見がその証拠品を見たいというため山木達を探した。ロビーで山木達を見つけ氷見の話をした。山木達は渋って見せようとしなかったがあまりにも氷見が見せて欲しいというので山木達は仕方なく見せた。氷見はそれを見るなり多分人間の血だと思うが鑑定を早くした方がいいと言った。氷見は解剖医として働いている。だから氷見の見解は多分正しいと私も補足した。山木が口を開いた「そうしたいのは山々だが積雪が…」阪上がそれに続く「私達も手詰まりなんだ」山木の携帯が鳴った。山木は席を外し私達も部屋に帰った。氷見と考え合っている間に日が暮れかけていた。「夕方になっちまったな」と私が言う。そんな時だったガタンという音が下の階からだ。急いで部屋を出てエレベーターで下に向かう。廊下にあの団体客がいる。山木達もだ。みんなが覗いている部屋を見ると窓の外にロープで吊るされた男がいる。団体客の一人だ。しばらくすると吊るされた男の目が開いた。死んではいなかった。男は自分の状況が掴めていない。男の重さに耐えきれずロープが切れた。すかさず私は走って窓の下を見た。男は動かない。山木達と急いで男の元に向かった阪上が男の首に手を当てて「ダメだ」と言った。山木は全員をロビーに集めるよう阪上に指示した。山木がロビーで男が亡くなった事を伝えた。亡くなった男は早乙女優吾というらしい。


私は「ここにいる全員が容疑者」とボソッと言った。


団体客の一人の女が私に向かって「容疑者てどういうこと。あれは自殺じゃないの。あの男二人は誰。」と言い放った。


私は答えた。「そのお二人は警察官ですよ。それにあれは自殺ではない。彼は自分が吊るされている状態に驚いていました。それに屋上には遺書も靴もありませんでした。それに自殺を図るならもっと高い建物を選びませんか?致死率が高いですからね。」


山木が話し始めた「では全員から事情聴取をします順番にお呼びしますのでお部屋でお待ちください。」


「私達も同席させていただけませんか。」と氷見が言い出した。


もちろん山木は首を縦には振らなかった。


「私からもお願いします」と頼んでみた。


山木は「まあ、貴方がいるならいいでしょう。ただし条件があります。まず最初に貴方に事情聴取を受けていただきます。」と言った。山木と阪上が私と氷見の前に座る。


山木が話す「まず貴方からお名前を教えてください。」


「申し遅れました私、公正取引委員会の岸本夏と申します。」


山木が「なぜ公取と解剖医が一緒にいるのですか。」と聞いてきた。


「今回私はこのホテルがこの村の宿泊業を独占していると告発を受けこのホテルへの調査をしていました。ですがこの山奥のホテルに一人も怪しく思われると思い友人の氷見に協力を頼みました。疑うのなら公取に確認していただいても構いませんと言った。」それを聞いた阪上が席を外した。数分後阪上が戻って来て「裏取れました」と山木に伝えた。


私が「どうでしょう?捜査情報の共有をしませんか。」と提案した。山木達もそういう事でしたらと情報を教えてくれた。山木達によると昨日この村で何かが起こるかもしれないというこの村の固定電話からファックスが警視庁に届いたらしい。しかし、長野県である以上警視庁の管轄ではない、そこで長野県警に情報を伝えたが本気にしなかったため警視庁が極秘に山木達を派遣したらしい。「私達に届いた告発もファックスでした。しかもこの村の固定電話から。今回の殺人にしろ何らかの繋がりがありそうですね。」と私が言うと、阪上も「私も同意見です」と山木に言った。山木は「引き続き事情聴取を進めましょう」と私達に言った。


「最初の方を呼んでください」と山木がフロントマンに言った。


「お名前と年齢を教えてください。」山木が女に問いかけた。


「近藤志保 25歳です」


「ご職業と早乙女さんとの関係を教えてください。」阪上が手帳を手に持ちながら話した。


「職場は製薬会社です。早乙女さんとは同じ大学の同じサークルでした。」


「ちなみになんのサークルでしょう?」私が口を挟むと阪上が嫌な顔をした。


近藤志保が答えた。「ミステリー研究会です。」


「なるほど」と言いながら私もメモを取った。


「では早乙女さんが殺されるような出来事に心当たりはありますか。」と山木が聞いた。


「知りません。」と近藤志保は答えた。


「最後に早乙女さんが殺される1時間前なにをされていましたか。」山木が聞いた。


「私疑われているんですか。」と近藤志保が少し強めに言ってきた。


「定型的な質問でみなさんにお答えいただきます」と阪上が切り返した。


「あの時はロビーでお茶を飲みながら本を読んで、見たい番組があったので部屋に帰りました。部屋に帰ってすぐにガタンという音が聞こえみなさんと合流しました。」淡々と近藤志保が答えた。


山木が「ありがとうございます。」と言い近藤志保の事情聴取は終わった。特に私が違和感を感じる供述も無かった。


もう一人の女をフロントマンが連れて来た。


山木が近藤志保の時と同じように名前と年齢を聞く。


「大葉茜 24歳です」


「近藤志保さん、早乙女さんと同じサークルですか。」と阪上が問いかけた。


「ハア〜、そうですけど」と少し息を吐いて答えた。私はそこに少し引っかかった。


「貴方は暑がりですか」と私は聞いた。


「別に普通ですけど」と大葉茜は答える。


「では早乙女さんが殺される前何をされていましたか。」山木が私との会話を割るように入ってきた。


「部屋で寝ていました。証言できる人はいませんよ残念ながら。」と笑みを浮かべて答えた。


「最後に早乙女さんが殺される理由について心当たりありませんか」と阪上が言った。


大葉茜は「特に…特にはないです。」と答えた。


引っかかる部分が多かったなこの大葉茜はと頭の中で考えた。


最後の容疑者だ。


「年齢と名前を教えてください」と山木が言う。


「西拓真 25歳です」


私達は何も問いかけていないが西拓真は勝手に話始めた。

「早乙女とはよく飯に行くぐらい仲が良かったんです。それなのに…」と泣きながら話す。


山木が「お気持ち大変わかりますが、今は事件解決に協力お願いします」と言った。


「早乙女さんが殺される前何をしていましたか。」と山木が聞く。


「フロントの横の大浴場で風呂に入っていました。」と泣きながら西拓真は答えた。


「最後に早乙女さんが殺される理由に心当たりありませんか。」と阪上が言った。


「特には」と西拓真は答えた。


「以上です。お部屋にお戻りください。」と山木が西拓真に言った。


「全員怪しいと言えば怪しいですね」と氷見が言う。


気付けば10時間になっていた。


一回部屋に食券を取りに帰り食堂に向かった。


食堂には山木と西が離れた所でご飯を食べていた。


「阪上さんは。」と聞いたら山木が「部屋で寝てるらしい」と言いながら飯をかき込む。3人で食事後ロビーを歩いてると阪上がフロントマンと話していた。山木が「何しているんだ」と聞くと阪上は「捜査を」と答えた。部屋に戻りしばらくすぎフロントに行った時間は2時過ぎみんな寝静まりフロントの明かりも消えている。2時30ごろに人の気配を感じると近藤もフロントにいた。暗くて気づけなかった。しばらくして私に近藤が喋りかけ「貴方は…」と言ったかとおもったら、足速に部屋へ帰って行った。


アラームが鳴った。起きると氷見が出かける準備をしていた氷見は野鳥観察に30分ほど行くと言った。昨日の夜中は吹雪いたみたいだ。積雪がかなりある。氷見と食堂で待ち合わせをした。私は食券を持ち食堂に向かい氷見と合流した。食堂には山木達が先に居た。ただ団体客は誰も居なかった。時間が違うのだろうと思った。食後部屋に戻ると扉に何かがつっかかり開かなかった。氷見と力ずくで開けるとそこにはけ、拳銃を手にして頭から血を流している近藤志保の姿があった。氷見が悲鳴を上げると山木達もとんで来た。阪上が「これは…」と言葉を失う。近藤志保は右利き、拳銃は左手これでは不自然だと思った。これは殺人だ。「硬直具合から死後4時間ぐらいかと」と阪上が言う。私は遺体が微かに濡れている事が不思議だった。それに遺体の靴の裏に小さな球体状のものがいくつもついていた。私は思わず「フッ」と笑った。「山木さん私は事件も独占の件も全て解けましたよ。みなさんをフロントに集めてください」


 「皆さんお集まりいただきありがとうございます。では私の推理と事実を聞いていただけますか。」と私は話した。「まず私は公正取引委員会に岸本と言います。申し遅れてすみません。私はこのホテルがこの村の宿泊業を独占しているという告発を受け調査に来ました。過去20年間この独占状態が続いていたという書類がホテルにあり裏が取りました。そして過去にこの件を告発しようとした人がいた事も、ご存じですよねフロントマンの山崎賢さん。

氷見が「え、」と言った。「10年前このホテルの実態に気づいたであろうこの村の村長佐藤さんの行方がわからなくなっています。山崎さんあなたは、佐藤さんにホテルの実態を迫られ佐藤さんを厨房の包丁で刺してしまった。違いますか。」と私が聞くと山崎は崩れ落ちながら「仕方なかったんだよ。このホテルを守るにはよ」と言った。「協力者がいますよね。佐藤さんの遺体をあなた一人で処理できるわけない。そうですよね。警視庁捜査一課阪上賢次巡査部長」と私が言うと、山崎は「共犯などいない」と焦った。「もういいよ父さん。そうです。賢次の“賢”も父からもらいました。私達が佐藤さんを殺して死体を遺棄しました。」山木が「お前何をしたかわかっているのか」と怒鳴った。「すみません」と阪上は泣きながら言った。「その時の凶器ですよねあの血糊と一緒に置いてあった包丁は、今回の警視庁に届いたファックスであなたは10年前の殺人がバレるのを恐れ私と氷見と団体客できたみなさんをとうざけようとしたんですよね。」と私の推理に対して「全てバレてますね」と阪上は言った。「さてここからは今回の早乙女さんと近藤さんの殺人についてです。まず早乙女さんの殺人についてです。彼は薬品か何かで意識がない状態で吊るされ目が覚めて自分の状況が読めず動いたためロープが切れて転落死したさて犯人はだれか。そして動機は何か。犯人は大葉茜さんあなたですよね。」と私が言うと、大葉茜はものすごい剣幕で「なんで私なのよ」と言ってきた。私は話を続けた「貴方妊娠しているのではありませんか。先日みなさんがコーヒーを飲んでる際に暑がりなわけでもないのに水を飲んでいましたね。妊娠中はカフェインが取れないですからね。そして氷を食べていましたね。妊娠中体の鉄分が減るため体温調節がやりにくくなるので無性に氷が食べたくなるらしいです。」という推理に対して、大葉は「氷が好きなだけ」と開き直った。「貴方よく寝ますよね。妊娠中は眠くなる人が多いと耳にした事があると聞いた事があります。そしてその赤ちゃんは、早乙女さんとの子供ですよね。そして動機は近藤さんとの二股といったところでしょうか。食事の際も席順が決まっていたみたいですしね。早乙女さんの隣に近藤さんと。だから近藤さんも殺した。」山木が「待ってくれ。俺含め全員アリバイがないはずだがなぜ大葉茜とわかる。」と言った。「いい質問ですね。雪ですよ。屋上の雪に殺害後埋めて死亡推定時刻をずらしたんですよ。その証拠に近藤さんの服は濡れていたし靴には滑り止めの塩化カルシウムがくっついていました。」大葉茜が認めた。「そうよ。私のお腹には優吾との子がいた。なのに優吾は志保の方に行った私はそれを許せなかったでも志保のことを殺してはいない優吾を殺したことは認めるけど志保違う」山木が「今の話のどこをみてお前が志保さん殺しの星じゃないと思えるんだ。詳しい話は署で聞くから」と言い、大葉茜の手に冷たい鉄の輪をかけた。空が晴れて来て長野県警のパトカーのサイレンが村に響いてきた。山木に連れられ山崎、阪上、大葉は連行された。悲しい事件だった。「人の恨みは怖いと」氷見が言う。「でも大葉は本当に近藤さんを殺してないのかな」と氷見が私に再び話しかけてきた。私は「さあ」と答えた。なぜなら私がさっきのトリックを使って近藤を殺した犯人だから…

                                 

 完










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