第2話 目撃者
栄養状態も悪かった。空腹を満たすことが第一であり、栄養バランスなどは二の次だった。
隆が小学校6年の時だった。小学校で肝油ドロップが配布された。学童の栄養補給を目指したものだった。
隆たちは思いがけないプレゼントに歓声を上げた。
その日、洋一の母・富江は子供たちの弁当を作るのが遅くなり、先に妹の和子を登校させた。
洋一が和子に弁当を届けるため教室に行くと、まだ音楽の授業から帰っていなかった。教室は森閑としていた。
洋一が何気なく教室を見渡すと、教卓に段ボールの箱が置いてあった。中に小さな丸い缶が並んでいた。
初めて目にするものだった。洋一は手に取った。何かが入っている。振ってみると、カランカランと乾いた音を立てた。
しばらく眺めていると、和子たちが音楽教室から帰ってきた。洋一は和子に弁当を渡して、教室に戻った。
ホームルームが終わると、洋一は担任に生徒指導室まで連れて行かれた。
「なんで居残りになったか、分かるやろ」
担任は訳の分からないことを言った。
洋一は最近おとなしくしていた。生徒指導室で遅くまで問い詰められたり、殴られたりするようなことはしていなかった。
洋一は首を傾げた。
「お前。6年生のクラスに行ったやろ。何しに行った?」
洋一は、和子に弁当を届けに行った、と答えた。
「それだけやないやろ。正直に言うてみ。肝油ドロップ、食うたやろ。お前がドロップの缶もっとるところ、見られとるんや」
担任は洋一のおでこを小突いた。
「まあ、今日はええわ。帰れ。6年の先生とも相談しとくわ」
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