狐の嫁入り・・・


陽日はまだ夢でも見ているような感覚から抜け出せていなかった。

呆然と立ち尽くし、嫁入り道中が消えていった場所をひたすら見ていた。


すると、近くの草藪からガサガサと音がし、何か生き物が飛び出した。

そして、その生き物は陽日の数メートル後ろで陽日を睨みながら立ち尽くす。

陽日もまたその生き物を不思議そうに見る。


『たぬ・・・き・・・さん?』


その生き物はたぬきだった。

陽日と狸は数分間見つめあった。

それから狸は背を向けその場からゆっくりと立ち去った。


そして陽日は、色々なことを思いながら、過去に見た狐の嫁入り道中と今見たばかりの狐の嫁入り道中を照らし合わせたり、髪飾りの謎を考えたり、頭の中をごちゃごちゃにしながら家に向かった。




-でも、私は、一つだけハッキリと頭と心に焼き付いたことがあるの。あの時の嫁入り道中のあの綺麗なお姉さんと今回の嫁入り道中のあの子、をしてた。悲しそうな。嬉しそうな。私にているような。-




そして、それ以降、不思議なことは何も起こらず、陽日もまた進学など他の考えることで追われ、狐の嫁入り道中のことは薄らとしか考えなくなり、そのまま一ヶ月と少しが経った。

陽日は夏休みに入り、宿題やバイト、友達と遊ぶ日々を過ごしていた。


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