壱(特)
『私...嫁入りなんかしたくない...』
私は、コハル。7月に家が決めた所に嫁入りしなければならい、人間で言うところの高校2年生くらいの歳の女の子。
嫁入りが近づくにつれて嫁入りしたくない気持ちが強くなる。
だって、私にはちゃんと私が選んだ好きな人がいるから・・・。
でも・・・。
『何バカなことを言っているの。あなたは決まり通り、嫁入りしなければなりません。』
父、母、祖母、それぞれがコハルに対し、嫁入りしろと説教をする。
狐達の世界では普通の結婚もあるのだが、コハルの家は狐世界でも由緒ある御家で、由緒ある御家同士婚約し、より良い子孫を残し繁栄させていかなければならいといった仕来りがあった。
もちろん、嫁入りと言うだけあって、メス狐はオスの家に嫁入りし奉公しなければならないのだ。
例えこの結婚が自分の意図するものでなくとも、家の為、一族の繁栄の為に・・・。
なので昔からメス狐は嫌でも我慢し、嫁入りして、奉公してきたのだから。
2匹の狐を除いては・・・。
『やっとあの馬鹿な女の悪行が許され、嫁入りが認められたんだぞ。嫌ですなんて許さない。お前はしっかり一族の為、お相手様の家の為、嫁ぎ、奉公しなさい。』
父が鬼のような形相で怒り、なにかと家の為と言い聞かせてくる。
私は家族が嫌いじゃない。
だから余計に苦しいんだ。
嫁入りは嫌だ、けど家族を想うならという気持ちもある。
そして何より・・・。
『お姉ちゃんのこと、バカな女だなんて言わないで。お姉ちゃんの悪口は言わないで。』
大好きなミハルお姉ちゃんのことを言われるのがすごく嫌だ。
ミハルお姉ちゃんは数年前に嫁入りした。
けど、嫁入り儀式の途中で抜け出し姿を消したと聞いた。
もちろん嫁入りは破談となり、嫁ぎ先の家は激怒した。
私の一族は嫁ぎ先に何度も謝罪した。
だが、その謝罪も意味は無く、私の一族は名家としての地位も名誉も失い、ミハルお姉ちゃんは、裏切り者、面汚し、などの汚名を着させられ、捜索された。
そして、嫁入りを抜け出し逃亡している中、捕まり、殺された・・・と。
いいえ。
私が殺されたと思っているだけ。
聞いた話では、逃げている途中で人間界に出て、その後、完璧に消息を絶ったとか。
それから時が経ち、ほとぼりも冷め、地位も名誉も少しづつではあるが回復し、嫁入りを認められた。
でも、家族や一族は今でもミハルお姉ちゃんを恨んでいる。
ミハルお姉ちゃんがこんなことをしたから私も辛い思いをした。コハルもミハルを恨んでいるだろうって言われるし、思われるけど・・・。
私はそんなこと思ってもないし、恨んでもないよ。
だって私はミハルお姉ちゃんが大好きだから。
今もこれからも。
それと、私の中でミハルお姉ちゃんは、私が嫁入りしなくてもいい様に、わざと、全員を敵にして、一族を裏切ってでも、こんなことをしたんだって、そう思ってる。
もし、ミハルお姉ちゃんが生きているのなら、もう一度おミハル姉ちゃんに逢いたい。
ミハルお姉ちゃんと共に・・・、共にじゃなくてもいい。
自由に生きたい・・・。
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