お家で映画

 オレと優花は、別々の高校に通っている。

 

 だから、優花がどんな人を好きなのかわからない。

 

 …

 

 でも、とりあえず優花がその人を大好きだということは、とてもよく伝わる。

 

 

 伝わるから…辛い。

 

 

 そんな優花が、オレに毎日変態脱却するため訓練してくれているのだけれど、なぜか優花が毎回めっちゃかわいい服装をしているからそそられてしまう。

 

 ‼︎

 

 もしかしてわざとか⁉︎

 

 そういう格好にも慣れなさいよ!ってことかーー⁉︎

 

 あー、それなら理解できる。ってか、わざわざオレの為にありがたい幼馴染じゃないか。

 

 しかし‼︎

 

 オレはそんな優花が大好きだから、そそられまくりで、慣れることなんてありえないのであった。

 

 

 …ごめんよ。優花。

 

 そんな変態幼馴染なオレは、本日優花の部屋で一緒に映画をみようと誘われている。

 

 

 なんて優雅な休日。

 

 好きな人と映画なんて…。

 

 

 

 でさ、結構有名な映画だったから楽しみにしてたんだけどー…

 

 …

 

 スズッ、スンッ、ウゥッ

 と、めっちゃ泣く優花。

 

 よかったー…。

 優花がとにかく泣き虫でよかった。

 

「優花ー…、泣き過ぎ〜」

 とティッシュを差し出した。

 

「いや…、真樹弥の方がめっちゃ泣いてるじゃ〜ん」

「ハハッ」

 

 そう!実は、オレも泣き虫だったのである。

 

 二人して泣きながら笑った。

 

 

「ティッシュ、濡れてたらごめんな。それオレのはなみずな。」

「いやー、きたな〜」

「うそだよ、ちゃんと捨てたから大丈夫。それ新しいやつだよ」

「あはは」

 と、泣いたり笑ったり大忙しだった。

 

 

 ふと隣をみると、まためっちゃ泣いている優花。

 

 優花…

 

 

 なのでオレは、泣いている優花が放っておけなくて肩を抱き寄せた。

 

 コテンっと、オレにもたれかかる優花。

 

 かわいい…お人形さんみたいじゃないかっ‼︎

 

「優花、泣くなよ。」

「うん、そんな真樹弥もね。」

 と言いながらお互い涙を拭きあった。

 

 そしてまた肩を抱き寄せた。

 

「真樹弥、なんで…抱き寄せたあとわたしの頭くんくんするの?」

 

 …ば、ばれていた。

 

 そう、オレは実は優花のシャンプーがいい匂いだったので、こっそり抱き寄せてはクンクンしていたのだ。

 

「あー、それはオレがあんまり泣くから濡れた犬みたいなニオイになってないかチェックしてたの。」

 

「え?なんで真樹弥が泣くとわたしの頭が犬くさくなるのよ?」

 

「え、だって…オレ優花の頭の上にめっちゃ涙とはなみず垂れ流してるから」

 

「やだ!汚いっ!」

 慌てて髪を確認する優花。

 

「うそだよ〜、ただすんげーいい匂いするからついブンブン蜂さんなオレは優花という花にそそられたっす。」

 と、正直にこたえた。

 

 すると優花が一緒固まった。

 

 そして…

 

「えっ…そ…そう?いい匂いならよかったー…」

 と安心した表情をみせた。

 

 あー…、もしかしたらオレでよかったーってことか?

 

 そうだよな。

 うっかり好きな人に頭嗅がれたらびっくりだもんな。

 

 ただの幼馴染で予行練習できて優花よかったな。

 

 デートの時は、もっとバージョンアップしたいい匂いさせてしまうのかな…

 

 チクショーー‼︎

 

 優花の未来の彼氏めーー‼︎

 

 

「真樹弥?どうかした?わたしの髪に何かついてる?」

 

 ‼︎

 

 オレはいつのまにか優花の髪を触っていた。

 

「あー、これはもしもシリーズだよ」

「え?どういうこと?」

「だから、映画をみていたら髪の毛くれくれ妖怪がでたらってやつ」

 

「な、なにそれ…」

「映画中よく現れる妖怪。知らない間に髪の毛全部奪われるやつ。気づいてよかったな。優花。髪の毛全部喰われるところだったぞ」

「え、そんな妖怪いるんだ。」

「うん。知らんけど」

「はぁ?知らんのかい!」

「まぁな。ハハッ…それより映画に集中集中‼︎」

 と、てをぱんぱん叩くと素直な幼馴染は、

「あ、そうだった。」

 と、映画に集中しだした。

 

 まったく素直な幼馴染だ。

 

 素直過ぎて心配になるオレなのでありました。

 

 ホッ。

 

 オレはついうっかり優花の髪を触っていたなんて。

 

 なんか…オレ…映画より優花をみてるほうが楽しい…かも。

 

 ジーッ

 

「ねぇ、真樹…」

 優花が話終わる前にオレは、

「好き。」

 と思わず口走っていた。

「えっ?」

「こっ…この映画、好き…」

 

「…あー、う、うん。ね!わたしも…す、好き」

「ありがとう」

「なんで真樹弥がありがとうなのよ!」

「はは…、たしかに。」

「もう、真樹弥ったら」

 

 …

 

 あぶねー‼︎

 優花みてたらいきなりこっち見るし、オレも急に心の声漏れたし…まったく。

 

 オレってば、油断も隙もありゃしないぜ。

 

 でも、声を大にして言いたい。

 

「好き。」

「えっ、うん。わたしもこの映画好き。」

「そうか。優花も好きか。」

「うん。好きだよ。」

「オレも好き。」

「ね、好きなんだね。」

「うん。大好き。」

 

 あー、なんか…少しスッキリした。

 

 優花は、映画のこと言ってるけど…オレは完全に優花に向けて好きを連呼した。

 

 スッキリしたけど、なんか消化不良です。

 

 まぁ…よしとしましょう。

 

 そんなこんなで、違う意味で映画を堪能するオレなのでございました。

 

 

 続く。

 

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