変態測定

 何を見てしまったってさ…

 

 優花のさ…シャツのボタン…二番目のボタンがさ…外れてるんだよね…。

 

 でさ…でさー、ね?

 わかるよね…

 

 直視しては、いけないやつなんよ。

 

 たぶん一般常識とかマナーができる大人は、そういうの見ないんよ。

 でもね…みちゃうんですよねー。オレってやつはさ‼︎

 だって…オレはまだ子どもと大人のハーフみたいなもんなんでねぇ。

 と、無理矢理の理由を探すダメダメなオレ。

 

 でさ、あのー…

 

 あれは…まさか…意図的に⁈

 

 まさかオレは実験されてるっ⁉︎

 

 もしも第二ボタンが外れていたら男の反応は?みたいな⁉︎

 

 えっ?

 どっかに隠しカメラとか仕込まれた⁈

 

 んっ⁇

 いつのまに…っ⁈

 

 …

 

「なに?どうしたの?急に部屋の中キョロキョロしてさー?」

「いや…、カ、カメラ」

「え?カメラ?まさか‼︎まさかわたしのこと隠し撮りしてるの⁉︎」

「そんなわけあるかっ‼︎だいたいそっちでしょ⁉︎オレを実験してるの」

 

「実験?何よ、実験って⁈」

 

「それ…‼︎そ、その…ボタンだよっ‼︎」

 

 オレは思い切ってボタンを指差した。

 

「ほぇっ⁉︎い、いつのまに…⁉︎」

 

 …この驚きようは、まさかのハプニングか?

 

 ただのハプニングなんだな⁉︎

 

 …

 

 ホッ。

 

 どうやら、実験されていないようだ。ならよかったー。と一安心した。

 

 

 

 そしてボタンを慌ててしめる優花の手元をガン見‼︎

 

 とにかくガン見っ‼︎

 

 

 そして、何事もなかったかのように優花に本を渡した。

 

「ほれよ」

「あー、これこれー。ありがとう。」

「うん。レンタル料は、キスでチャラにしてやるよ」

 

 …

 

「へっ⁈」

 

 びっくりした顔でオレをみた優花。

 

「嘘だよー。」

 と笑うと優花は、

「キスは…できないけど、ハグくらいならしてやってもいいわよ?」

 なんて真顔で言ってきやがるじゃないかっ⁉︎

 

「いや…、さっきのは冗談だし。」

「ははーん、さては真樹弥くんは、チキン男かなぁ?」

 なんてニタニタしてオレを軽くバカにしてきた。

 

 

 くっ…

 オレは恋愛マスターなんだぞ⁉︎

 

 優花の先生なんだぞ⁉︎

 

 ハッ…ハグくらい…

 ハグくらい日常茶飯事さっ‼︎

 

 ってなわけで、急遽幼馴染をハグすることが決定いたしました!

 

 そんな大変な大イベントが開催されるってわかっていたなら、オレはもう…興奮して一睡も出来なかったんじゃなかろうか?

 

 しかーし‼︎

 

 突如決まったこのハグの開催は、ご安心ください。

 

 オレはたぁ〜っぷり睡眠をとったのでハグ日和とでも言いましょうか。

 

 えぇ、なんならハグのために筋トレをしていたと言っても過言ではない。

 

 まぁ、ここだけの話…筋トレはただの趣味だが。

 

 それはどうでもいい話だ。

 筋肉話ほど、どうでもいい話はないっ‼︎

 

 

 でもですよ…?

 筋肉にあまり興味なくとも…

 脂肪はぷよぷよでプルプルで、また別の話なんですわ。

 

 プルプル。

 

 いい響きですね。

 

 プルプルするやつに悪いやつは、いない‼︎

 

 だって、しっぽプルプルとかプリンプルプルとか、あとー…

 

 あれです。

 

 まぁ…秘密ですが。

 

 …

 

 

 では、プルプルはとりあえずおいといて、これからハグを開始いたしますっ‼︎

 

 

「優花、ウェルカム」

 

 オレは優花をそっと抱き寄せて優しく包み込んだ。

 

 そう、オレは知っているんです‼︎女性の優しい抱きしめ方を‼︎

 

 だってベテランですから‼︎…と言いたいところですが、全然初心者です。

 

 学んだのは…漫画やドラマからです。

 

 でも、たっぷりとお勉強したのであとは実践するのみですっ‼︎ってわけで…

 

 

 優しく優花を抱きしめた。

 

 おおぅ♡

 これがハグなんっすね‼︎

 

 幸せじゃーん‼︎

 

 

「優花、あったかい。」

「うん、真樹弥もあったかい。」

 

 温もりって、最高だ。

 どの癒しグッズにも敵わないくらいだ。

 

 ハグ…ハグという名の何か癒しグッズをどなたか発案してくれないだろうか。

 

 でさ…

 優花は…いつのまにこんなに小さくなってしまったんだ⁈

 

 幼稚園から小学生の頃は優花の方が大きかったのに…。

 

 優花…。

 

 オレは優花を抱きしめながら、このきゃしゃな優花をオレがずっと守ってやりたいと、心からそう思い、思わず感情が入り込みすぎて…

 

 優しく包み込んで…

 そのあと、ムギュムギュムギュ〜ってしていた。

 

「優花…優花〜」

 と。

 

 

「ちょっ…えっ…?」

 

 あまりの抱擁に動転する優花。

 

 ‼︎

 

 …やばい。

 恋愛マスターなのに…自分を見失っていた。

 

 …

 

「はい‼︎脂肪チェックおしまいっ‼︎」

 

 オレはまさかの…自分を見失っておりました。なんて言えずに、つい脂肪チェックなんて言ってしまった。

 

「えっ、そんなことしてたんだ…キモっ」

 

 と、軽く軽蔑されてしまった。

 

 …

 

「脂肪チェックなんて冗談だよ。身体測定だよ。えーっと、だいたい抱きしめたとき…このくらいだったから…腹まわりがー…」

 

 べしっ!

 

「やっぱ変態」

 と言われ頭をべしっとされてしまった。

 

 …

 

 あぁ、よいですとも‼︎

 オレは変態幼馴染さ‼︎

 

 ワハハハ‼︎

 

「ほれ、おかわりハグだ。オレという名のメジャーに包まれなさい。」

 

「いやです‼︎」

 と拒絶されてしまった。

 

 …

 

 ですよねー。

 

 まぁでも、ハグなんてできると思ってなかったからラッキーでしたよ。

 

 ありがとう神さま。

 きっとオレの日頃の筋トレを見てくださっていたのですね。

 

 だから、ハグのプレゼントなんてくださったのですね。

 

 その筋肉、持て余しておるのぅ。と‼︎

 

 そして、視力‼︎

 オレによい視力をオプションでつけてくださりあざます‼︎

 

 第二ボタン外れたとき、バッチリ脳裏に焼き付けました‼︎

 

 ハプニングのプレゼントも、神さまグッジョブ‼︎

 

 と、神さまにお礼を述べたのでございました。

 

 

 続く。

 

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