間接キスの仕方

 そしてカフェに入り飲み物を注文。

 

「いいか、優花。飲み物を頼むときは彼氏と違うものを頼め。そしてなおかつ同じ容器のものを頼めよ」

 と伝授してやった。

 

「なんで?」

「ふふ、それは後で教えてやるからそう慌てるな」

「ふーん」

 

 あーそうですか風な優花。

 

 もっと食い付けよっ!

 って思いつつ焦らしたオレも悪かったな。と、しばし反省。

 

 大人しく席について、

「まぁ、まず飲みなさいよ。」

 と促した。

 

 そしてまんまと飲み物を口にする優花。

 

「ふふ、飲みやがったな。」

「えっ⁉︎な…なに?」

「これはなぁ、実は…ここのドリンクは…」

 

 ゴクリと息をのみ真剣にきく優花。

「うん、このドリンクは…?」

 

 …

 

「美味いんですっ‼︎」

 と笑うと優花は、

「は?真剣にきいて損したわー」

 とガッカリ顔をするじゃないか。

 

 仕方ない。

 本当の事を教えてやろう。

 

「ほんとは…違う味ならさ、それも一口飲みたいなぁって言ってさ、間接キスできんぞ」

 と教えてやった。

 

 ほんとは、そんな事…好きなやつに伝授したくなかったけどね。

 

「あー、なるほどー。でもさ、なんで容器も同じやつがいいの?」

「あー、それは…もしもの時の保険だ」

「えっ?」

「あのですね、いざ間接キスってなるとドキドキしちゃって言い出せないってなことになりうるんですよ。だから、保険」

「ん?」

「ですからお客様、恥ずかしくて言い出せない‼︎そんなあなたに、容器同じだから間違えて飲んじゃった保険です。」

 と教えてやった。

 

「あー、なるほど〜。それ一口とか言い出しにくいときあるかもだねー。あとさ、一口もあげないって言われた時の保険にもなるね」

「おい…一口もあげないって…どんだけケチ男なんだよ」

「あ、だよね。それはもう別れを検討するかもだね。」

「うん。そんなやつは、さっさと捨ててオレんとこ戻ってこい」

「え?そもそも一度も真樹弥の元へ行ったことございませんよ?」

「あー、たしかに。」

「ねー」

 

 と、軽く微妙な告白まがいが没にされた瞬間でした。

 

 そして、軽くメンタルが潰れながらもドリンクを啜った。

 

「ちょっとぉ〜、それわたしのだしー」

 

 あ…

 

「うんめ〜、優花風味最高だ」

 と慌てて飲み間違えを、わざとやった風に言い返した。

 

「やだぁー、わざとわたしの飲んだんだ?」

「あー…まぁ、実践してやったとでも言っておこう。」

「しなくていいからー」

 と呆れ顔の優花なのでした。

 

「ごめん。新しいやつ買ってくるから」

 と席を立とうとすると優花は、

「いいよ。間接キスの練習だし」

 と、チュルチュルとドリンクを飲み出した。

 

 ⁉︎

 

 そ、そんな…

 

 めっちゃ真面目な生徒かっ⁉︎

 

「優花…そこは…無理して実践しなくても…いいんだぞ?」

「うん。無理してないし…」

 と言いながらもまだ飲み続ける優花。

 

 素晴らしい生徒さんです。

 

「まぁ…、そんなに真剣な生徒さんなら特別にオレがもっと恋愛を伝授してやるよ」

 と、オレは本気モードになった。

 

「よし‼︎次行くぞ」

 

 生徒を連れてオレはショッピングへと向かった。

 

 向かう途中、もちろん恋人繋ぎをした。

 

 こういうのは、きっと男からリードするもんだろう。

 

「えっ、手…」

「はい‼︎そうです‼︎あなたいいリアクションですよ‼︎」

 

 恋人繋ぎした瞬間、一瞬恥ずかしそうな表情をした優花。

 

 か、可愛かったなぁ♡

 

 でも…、それはたぶん…びっくりしただけだろう。

 

「彼氏に繋がれたとき、今の表情するといいぞ‼︎その表情、先生は一生忘れないぞ。頑張れよ‼︎」

 と、オレは応援した。

 

「あのー…、わたしっていつから真樹弥の生徒になった?」

「そりゃ、もちろん優花が間接キスした瞬間に決まってんだろぅよ」

 

「えー…、なんかキモいー…」

 

 …本日何度目でしょう?

 キモい発言…。

 

 まぁ、いいんですよ。

 キモがられつつも、恋人繋ぎも間接キスもクリアしたんでね。

 

 そうっすね。

 もう開き直るしかないっすよ‼︎

 と、オレは開き直り全開で過ごすのでありました。

 

 

 相変わらず恋人繋ぎのままショッピングをしていた。

 

「あー、これ可愛いし、それも可愛いー」

 と、テンション爆上がりの優花。

 

「そんな優花が一番可愛いよ」

 と、冗談混じりで言ってみた。

 

「えっ…」

 と顔を赤らめる優花。

 

「あ…、うん…‼︎そ、そうだ‼︎今の表情忘れるな‼︎それだ‼︎」

 と慌てて先生に戻った。

 

 ホッ…

 あぶねー。

 

 先生キャラがなかったら、どう対処するべきだったんだよ…オレ…。

 

 と、自問自答。

 

 

 

 …

 

 

「あ、そういえばなんでアゴ痛くしたの?」

「あー、それは夜ご飯味見しようとして大口あけたらグキッてね…」

 

 …

 

「やっぱ、食い意地半端ねー」

「もぅ、だってあの時お腹空いててさ…」

「あー、そうっすかー。まぁ、でも好きな人の前では、大口開けんなよ?」

「わかってるってー。」

「なら、いいだろう。」

 

 アドバイスしつつ…メンタルボコボコっす。

 

 スポンジみたいにメンタルがボコボコのスカスカになり果てて、オレは家の前で優花に

「好きだよ」

 と真顔で言った。

 

「えっ…」

 

 固まる優花にオレは、

「合格‼︎その表情忘れるなよ‼︎テストにでるからな‼︎じゃーなー」

 と手を振り家へと入った。

 

 

 …

 

 あーあ。

 

 楽しかったけど…しんどかったわー…。

 

 

 

 

 そんな次の日、優花がオレの部屋にやってきた。

 

 

 そしてオレの顔をみるなり

「好きっ」

 と言ってきたじゃないかっ‼︎

 

「へ⁈」

 

 固まるオレに向かって優花は、

「あ、ごめん。告白の練習」

 と、いきなりのあげて突き落とし事件勃発‼︎

 

 なんだよそれ〜…

 

 そんな事件が発生したのでオレは仕返しという案件を思いついた。

 

 

 この前、オレの買った本を借りたいって優花がいうからオレは、

「あー、それな。待ってな〜、今とるからぁ〜」

 と言いながら座っていた優花にオレは優しく壁ドンをくらわし、

「えっと〜、どこだっけなぁ?」

 とわざと耳元で探すフリして囁いてやった。

 

「キャッ、く、くすぐった〜…」

 

 でしょうねー。わざとですからー。

 

「あー、あったあったわー」

 とまたも耳元で囁いてやった。

 

「ちょっと…、なんか今日…やたら近いし…何?」

 と、ワタワタする優花。

 

「ん?いきなり告白まがいしてきた仕返しにさ、どうだった?」

 

 …

 

「…どうって…ど、どうもないし‼︎それより早くどきなさいって‼︎」

 

 ‼︎

 

 いきなり優花がオレの手をどけようとした。

 

 オレは壁から手が抜けて、思いっきり優花の柔らかいところへとダイブしてしまった。

 

「おわっ‼︎」

「キャッ」

 

 …

 

 一瞬二人ともフリーズしたよね。

 

 えっ⁇どういう状況⁇ってさ。 

 

 で、すぐさま我にかえり慌てて離れたよね。

 

「あの…ごめん。これはわざと…」

「バカ‼︎」

 

 わざとじゃないって言おうとしたのに…思わず言葉が詰まってしまって、わざと。でとまってしまったので、頭を軽くパコンとされてしまった。

 

 …

 

 

 だって…だってさ…

 

 あんなん見せられたらさ…

 

 …

 

 続く。

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