幼馴染がオレに、好きな人いるから練習で彼氏役をと、お願いしてきました。幼馴染が好きなオレは虚しくて変態になりました。

猫の集会

雑炊作っちゃいました‼︎

 オレは今雑炊を作っている。

 

 あらあら、体調崩してしまったのですね。と同情される方もおられるかと存じます。

 

 しかし‼︎

 オレはいたって健康そのもの!

 

 むしろ体調が抜群によろしい状態なのです‼︎

 

 じゃあ、なんで雑炊をこしらえていらっしゃるのか?って?

 

 なんか、携帯みてたら美味しそうな雑炊の作り方ってのがありましてね…えぇ、お察しの通りただ食べたくなってしまったから。というのがことの始まりなのです。

 

 

 まず五分でできてニンニクたっぷり卵もポトンですわ。

 

 どんな説明の仕方だよって?

 あぁ、そもそも詳しく説明するつもりなんてないのです。

 

 それよりも、早く熱々を啜り込みたい一心なのですから。

 

 

 というわけで、一口。

 

 リィ〜ルゥ〜リィ〜と脳内でまったりした曲が流れ出し、あたりはお花畑状態っすわ。

 

 うめ〜‼︎

 

「一口ちょうだい」

 

 ⁉︎

 

 お花畑から一気に強制送還。

 

 ⁈だれだっ

 

 …って、驚くまでもない。

 

 

 もちろんその声は、幼馴染の優花ゆかに決まってる。

 

「出たな、妖怪食いしん坊め」

 

 オレの言葉にムッと口を尖らせる優花。

 

「妖怪食いしん坊じゃないしっ。てか、わたし今アゴが痛くて大口あけてご飯食べられないの。」

 と、言いながらオレの雑炊に視線を落とす優花。

 

「ほら、あーん」

 オレのあーんにつられて大口を開ける優花。

 

「あーんっ…っいたっ」

 

「バカだなぁ。アゴ痛いくせに大口開けっからだろー」

 

「もう‼︎はめたわね‼︎弁償しなさいよねっ」

 

 弁償…⁇

 

 オレは咄嗟に携帯でとあることを検索した。

 

「ちょっと!聞いてるの⁉︎」

「あー、うん。聞いてるよ。弁償するんだろ。だから新しいアゴを…」

「なにが新しいアゴよ‼︎新しい顔みたいに言わないでよ‼︎」

「ほら、これでいいか?」

 オレは人間の骨の標本をみせた。

 

 …

 

 しばらく無言の後、優花は

「は?真樹弥まきやってアホなの?」

 とオレに冷たい視線を送った。

 

「だって、弁償なんだろ?」

 

「ちがっ…えっと…」

「弁償じゃなくて、お詫びって言いたかったんっすかねえ?」

 とオレがニヤニヤすると優花は、

「そ、それよ!そうよ!お詫びって言おうとしたのよ」

 と、言いながらいつのまにかオレの横で雑炊を食い出した。

 

 いつのまにっ⁉︎

 

 てか、優花はオレんちを自分の家のように思っている。

 

 たまに母さんが洗い忘れた茶碗とか洗ってるし…。

 

 世話好きババアと、オレはたまに優花を呼んでいる。

 

 そんな世話好きババアは、

「美味しい‼︎でかしたわ!」

 と、親指を立てた。

 

 オレも親指立て返しをした。

 

「ところで、お詫び…ってオレ何すればいいの?」

「あぁ、忘れてたわ。」

 

 ⁉︎

 なんだって‼︎

 

 オレってば、余計なことを…

 

 …

 

「そうねぇ、それならこれからわたしとデートしてもらえない?」

 

 ⁉︎

 

 い、いきなり…告白っすか⁉︎

 

 付き合おうすっ飛ばしてのデートっすか⁉︎と、目を丸くしてびっくりしていると、

「勘違いしないでよね?す…す、すきな人がいて…だから…その、練習をしたいの」

 と、いきなり恥ずかしそうにする優花。

 

「ススキな人?何?それは人間なの?それとも雑草?的な人間?」

「もう‼︎察しなさいよ‼︎」

 

「あー、はいっす…」

 

 あんまり唐突でオレは内心焦っていた。

 

 優花に好きな奴なんかいたのかよってね。

 

 だって…オレ…優花のこと好きなんだもん。

 

 …

 

「そのススキ人間って、どんなやつ?」

 

「もう、ススキは忘れて!でもね、その人すっごくかっこよくて、高身長で優しくてイケメンで、髪が少し茶色くて、そんでもってさ、もうドキュンなのっ」

 と、ハートなおめめをする優花。

 

 …ドキュンって。

 

 

「あー、雑炊うめ〜」

「ねー、聞いてるの?」

 

 …

 

「うん。なんとなく」

 

 …

 

「あっそう、じゃ行くわよ」

 

 ⁉︎

 

 いつのまにか手際良く片付けを済ませる優花。

 

 はっやっ‼︎

 

 そして、オレたちニンニク族は街へと繰り出すのでありました。

 

 

 

 

 

「でさ、デートって…何すればいい?」

「そうねぇ、なんだろう?」

 

 立ち止まって考える優花にオレは壁ドンをしてみた。

 

「こういうこと?」

「えっ…ちがっ…てか、ちかっ…離れなさいよ」

 

 …

 

 ふぅ。

 

 違ったか。

 

「あ、じゃあこれだ‼︎」

 

 オレは優花をガシッと抑えてキスをしようとした。

 

「ちょっ…な、何すんのよっ‼︎」

「キス」

 

「…どのくちがいうわけ⁉︎」

「あ、このニンニク臭いくちが言ってます」

 

「バカっ‼︎」

「でもさ、優花だってニンニク臭じゃん?ならよくね?」

 

「いやよ‼︎ってか、デートってそんなんじゃなくて…、あ、映画とかショッピングでしょ。ほら、行こう」

 と、どさくさに紛れて手を繋がれた。

 

 ⁉︎

 はっ⁉︎

 

 いいんっすか⁉︎

 

 おてて…繋いでも?

 

 …でも、複雑ーー。

 

 嬉しいけど、優花には好きな奴いるんじゃん。

 

 なんだか複雑すぎたから、優花の手をニギニギしてやった。

 

「キモい…から。」

 と、てを咄嗟に離されてしまった。

 

 …うん。

 わざとです。

 

 だって…だって…なんか虚しいってかさ…複雑すぎたから…

 

 でも、自分から離すわけにはいかないじゃん。

 

 …

 

 それからオレたちは、ニンニク臭いからみんなから少し離れて座り映画をみた。

 

 

「いいか、優花。映画館では、みんなから離れて彼氏とすわれよ?」

「なんで?」

「この方がイチャイチャできるからな」

 

 …

 

「あー、そういうことか。ニンニク臭いから離れこじまにしたのかと思った。」

 と、冷めた感じておっしゃるからオレは

「今回は、それも一理ある」

 と、説明しておいた。

 

 そして優花の肩を抱き寄せた。

 

「はっ…ちょっと…」

「練習」

 

「えっ?」

「彼氏が映画館でこうしてきたらって練習でしたー」

 といいながら、オレはパッと手を離した。

 

 虚しい。

 自分からやっておいて…虚しい。

 

 一人虚しさ倍増中、いきなりなことが起こった。

 

 なんと優花がオレの手を握ってきた。

 

 ⁉︎

 

 はっ⁈

 

 何?

 

 コワイシーンでもないのにどうしたんだと優花をガン見すると優花は、毅然とした態度で、

「練習。彼氏と手繋ぐ練習だから」

 と言ってきたじゃないかーー‼︎

 

 そ、そうか。

 練習…か。

 

 でも、もう離して良くない?

 

「おねえちゃんの手は、細くて綺麗だねえ。舐めちゃいたいくらいだ。ジュルジュル」

 

「キモいからっ‼︎もう、練習にならないじゃないっ」

 

「練習だよ。もし、彼氏がいきなり入れ替わって隣に変態が現れたらっていうさ。」

「は?てか、映画みろ」

 

 …

 

「ハイっす。」

 

 優花は、たまにキレる。

 

 その口調がまた、しびれます。

 

 はい、ボクは…本当の変態なのかもしれません。

 

 

 そして、はたからみたらオレたちは…ただのイチャイチャカップルにしか見えないだろう。

 

 そんなバカップル風なオレたちは、映画を終えてカフェにといそいそと向かうのでありました。

 

 続く。

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