第5話 魔王にブチ切れる。

 散々魔物にブチ切れていたら魔王城の最深部に辿り着いていた。


「おめぇが魔王か」


「ふんっ、人間ごときが何のようだ」 


「まず言わせてもらうがよぉ? 人がわざわざ会いに来てんのに椅子に座ったまま脚組んで肩肘をアゴに乗せてるとかよぉ。それ見た人が不愉快になるとかわかんねぇの? そういう教育も受けてこなかったわけ?」


「なっ……なに?」


「こっちはおめぇが悪さしてるせいでプールで男友達と遊ぶことも遠目に女子の膨らみをバレないように眺めることもできてねぇの? わかるか? 中学二年生の貴重な学生ライフを失ってんだよ!」


「我には関係ない話しだ!」


「自分の事「われ」とか言ってんじゃねぇよ! はぁ? お前生まれたときから自分の事「われ」って言ってたの?」


「な、何がおかしい!」


「おかしいだろうが! 俺のクラスにもいるよ! 「ゆかはぁ〜」とか自分の名称を名前にする気持ちわりぃやつとかよぉ! どのタイミングで私から自分の名前に変えるんだ奴らは! お前もどうせ「今日から魔王だし俺じゃなくて我って言ってみよ。周りの部下に笑われないかな」とか考えた日があると思うと寒気がするわ!」


「ググッ……」


「図星じゃねぇかこらっ! で! 何で人間滅ぼしたいか一応聞いてやるよ! 手短に説明しろ!」


「今の人間の王は私が」


「我だろがっ! ひよってんじゃねぇぞ!」


「今の人間の王は……我が幼い頃に魔物の血統をすべて根絶やしにする政策を打ち出し、今まで人間達に干渉せず生きてきた魔物を次々と狩り出したのだ。私……我の両親と妹もその時に……だから我は人間への復讐を決めたのだ」


「あー! わかったわ! じゃあ全ての元凶はあのデブの王様ってことな?」


「そうだ」


「転移!」


「のわっ!」


「憎き王!」


 俺は魔法を使って王様を魔王城に転移させた。 


「なんで前掛してフォークとナイフ持ってんだこら? 人が魔王と対峙してる時にメシとはいい身分だなおい!」


「えっ? えっ? 魔王いるぅ!!」


 逃げ出そうとする王様の首根っこを掴み魔王の前に引きずってくる。


「謝れ」


「どういうこと?」


「魔王から話は聞いた! 全部お前が悪いんだから謝れ!」


「いや! ワシ悪くないし!」


「何もしてねぇ魔物を殺し始めたのはおめえなんだろ! じゃあオメェが悪いに決まってるだろうが!」


「あれは神官がこれからの時代は魔物のいない世界にしたほうが良いって言ったから!」


「国の頭張ってるやつが人のせいにしてんじゃねぇ! お前がなぜ王様なのかきちんと自覚しろ! この世界で起こってる間違いは全てお前のせいだ! お前が悪い! 都合が悪くなったら人のせいにすんじゃねぇ! お前は一年ぐらいで転勤を繰り返す大型チェーン店の店長じゃねぇんだよ!!」


「す、すいませんでした!」


「今後一切魔物に手を出さないと誓え! 誓わないなら俺がお前を蹴散らす!」


「今後魔物には絶対手を出しません!」


「おい魔王これでいいな! お前も大人なんだからもう人間滅ぼすとか言うなよ!」


「……わかった約束しよう」


「おし! これで終わりだ! 帰るぞ王様!」


「はい……」


 俺は王様と一緒に魔王城を出た。


「ちょっと待ってろ」


 俺は最後の街で覚えた全開で放ったら世界がハチャメチャになるぐらいの魔法を威力を抑えて魔王城にぶち当てた。


「これで満足か?」


「えぇぇぇぇ……謝ったのに……」


「謝って済んだら司法は終わる。王様なのにそんなことも知らんのか! イチから勉強しなおせ!」


 俺と王様は徒歩で城へと歩いていった。


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