第4話 中ボスにブチ切れる。

「ここまでよく来たな小僧」


 そこら辺に立っていた塔に上ってたら八階でやけに偉そうな騎士のモンスターに絡まれた。


「あんだてめぇ?」


「私は魔王様の右腕であるブラックナイトである」


「ブラックナイトだかサモーンハラスだか知らねぇけどよ。おめぇいつもここにいんの?」


「そうだ。私がこの塔を守っている」


「いつも?」


「いつもだ」


「二十四時間?」


「そうだ」


「魔王軍ブラック企業すぎんだろ! ファンタジー世界には労働基準局ねぇのかよ!」


「何を言う。魔王様にお使えしてるだけで幸せである」


「言うね。言う。言う。ブラック企業に洗脳されて働いてる輩は全員そんなこと言ってるんだわ! で、自分がどれだけ大変か言って散々クソつまんねぇ話し聞かされた奴が「じゃあ辞めて違う会社探せば」って言ったら「生活が出来ないから仕方ない」とか言うんだわ! てめぇの不幸自慢聞かされた時間返せって話だよっ!」


「何を言っている! 私は心から魔王様をだな!」


「じゃあお前は魔王が死ねって言ったら死ぬのな?」


「え……」


「どうなんだよ? 崇拝してんだろ? 死ねるんだよな?」


「死ぬのは……ちょっと」


「なら辞めちまえこんなところ!!」


「極論だ!」


「はぁ? ない頭でよく考えろよ? お前は今までここに来た奴らぶっ殺してんだよな?」


「そうだ。それが役目だからな」


「殺人じゃん」


「ん?」


「俺の国だったらお前が死刑だよ?」


「いや、ここ、世界違うし」


「世界が違ったら何してもいいのかよっ! 時代が違うから! 国が違うから! くだらねぇんだよ! お前の言ってることは田舎の古くせぇ風習で「長男は必ず家を継げ」とか言ってる老害と同じだからな! で! 今の時代になったら「今は時代が違うから」とか軽くいいやがんだよっ! まずてめぇらは子供の時に長男と差別されてた次男やその下の男達と女性達にデコの皮が擦り切れてなくなるまで土下座しろ!」


「話がこんがらがっているぞ!」


「何も違わねぇ! 殺した人達にも家族や友人がいるってことを少しでも考えなかったのかコラッ!」


「でも……仕事だし……」


「仕事だからって人殺していい理由にはならねぇんだよ!! じゃあお前俺が魔王倒す仕事だからって家族殺されても仕方ないって思うんだな! 怒らねぇんだな!」


「それは……」


「怒るだろうが! 悲しむだろうが! お前はそんな卑劣な事をやってたんだぞ! 少しは反省しろ!」


「私は……なんてことを……」


「分かったらさっさとこんな仕事辞めて家族の所へ帰れ! それで九時出勤六時退社! 土日祝祭日完全休日の仕事を探せ! 給料で見るな! わかったか!」


「はい!」


「わかったらいい! 家族を大切にするんだぞ!」


「ありがとうございました!」


 騎士のモンスターが吹っ切れた様子で階下へと走っていく。

 だが、もし後に報復されたら怖いのでこの前教えてもらった禁断の魔術ってのを試しに撃って跡形もなく消し去っておいた。


「ブラック企業で働いてる奴は次も嗅覚が鈍いからな。どうせ次に見つける仕事もブラック企業だったろうよ」


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