1-☆ 概要報告書
意志が高まった時、誰もが目を惹かれる
名付けて『ソウル』という。
誰もが持っている。どこにでも存在している。
しかし、実際に使えるのは『己が何者か理解した人』のみである。
――――
一ヶ月と言うのは、実に曖昧な長さだと思う。長いようで短いし、短いようで長い。中旬くらいならば次の月の事を考えないのに、下旬になった瞬間に焦り出す癖は、どうやっても治せないので困ったものだ。
俺は十八歳だが、一ヶ月があっという間に過ぎていたという経験が既に、両手では数えきれない程にある。これは良い事なのかと言われると、首を横に振るだろう。
何故なら、大半の内容をこれと言って覚えていないからである。毎日同じ事をしていれば過ぎる時間は早く感じるし、何の刺激も感じない。
だがしかし、これから話す一ヶ月の事は、一日たりとも忘れなかった。それくらい濃厚で充実した日々を送っていた、というのが良い風である。
悪い風にいうと、毎日がサドンデスでいつ刺されてもおかしくない、まるで芸能界の闇に全身を突っ込んだ気分であった。
激動する一ヶ月の間に俺がやって来た事を、一言で表すならば『放浪』である。
俺は右目を
そうしたらどうだ、銀河を越えて『ユーサネイコー』という素晴らしい地獄へ降り立つ羽目になった。
だがここで何もせずに死ぬのは、地球にいた時と変わらないと悟ったので、この惑星を駆け抜ける事にしたのだ。
この一ヶ月の間に、俺は一つの王国を隅々まで調査する。時々別の国にも行く時もあったが、それはその時に話そう。
何故、一つの国に留まるのかという疑問が生まれただろうから、隠さずに答えるとする。とある事件を解決する為だと。
最も単純であり恐ろしいだろう、殺人事件が巻き起こっている。
犠牲者の数が大人数なので王国内に留まらず、世界中の警察や探偵が捜査しているが、有力な手がかりが全くと言って良い程に見つからないという、なんとも奇怪な事件なのだ。
分かっている事と言えば、これまでの犠牲者が全員同じ出身国である。勿論、この王国だ。そして考察されたのは、犯人はこの王国のどこかに住んでいるという事らしい。
『一般国民』として、日常に溶け込んでいる。一歩も外国へ逃亡しないから、これ程の人数を殺せたのだと専門家がそれらしい事を言う。
王国を代表し王室が、事件発生から十一年目にして、俺が無理矢理にでも入団した『国際世界調査団』へ正式に依頼をした。
八個の団があるが、担当する事になったのは王国に本拠地が置いてある団。そして無所属にも関わらず、俺もこの事件に関与する事にしたのだ。
何故なら、この事件は俺の目標と一致する関係があるのだから。
今思い返せば、もう既にどこかで犯人と出会っていたのかもしれない。見た目だけで判断するのが人間の癖であるが、そこを疑う事が解決への糸口となっていたのだろう。
だが、そんなに気張ってあらゆるモノを疑い過ぎずとも、犯人は必ず俺達の前に現れる。そういう天命だったのだ。
何故なら奴は『悪』で、俺達には『仁義』が魂に宿っているからだ。
お互いがお互いを望んでないのに、惹かれ合う。それこそが、この世の
ならば、それに従い運命を変えるのが、俺達の役目なのだ。
長々と話してしまったが、つまり何が言いたいかというと。
これは、日常を歩いて本物を暴く物語だ。
この一ヶ月の序盤で、二人の友達が出来た。えこひいき無しで『美少女と美少年』なのだが、どうか嫉妬せずに聞いて欲しい。
美少年はとても綺麗な顔立ちで、身長が俺よりも高いのに体重が軽い。学校とかだったら、それなりにモテていたと感じる。
だけど、失礼かと思うかもしれないが、彼に付いていける人は少ないと断言しておこう。
何故なら彼は『地雷』を持ち合わせていて、踏み抜かれたら最後、怒髪天を
その地雷の正体は、もう一人の友達となる美少女である。
俺自身の美的価値で話しているので、もしかしたら食い違うかもしれないが、彼女はとても可愛らしい顔立ちをしている。
だが、美少年の様に街中を歩いているだけでナンパされるような風貌ではなくて、寧ろ蔑まされるであろう貧乳である。
極め付きに命を狙われているという、前途多難な生い立ちを背負っている。これは彼女の家系問題が原因なのだが、どうせ後から知る事になるので、今は割愛させて頂く。
だが彼女の神髄は、ただ怯えて暮らしているのではなくて、いつどこで刺客に鉢合わせても乗り越えられるように、爆弾薬を持ち歩くという並外れた行動力がある部分だろう。
この説明だけで、美少年と美少女の概念が崩れ去ってしまったかもしれない。だが俺は、二人の本性を知った上でそう言っているのだ。
そんな二人と共に、普通のフリをして『一般人』の仮装をしているだけに過ぎない『真相』を見つける物語である。
これは『概要報告書』に過ぎないので、大雑把だし堅苦しく書いているが、次から幕を開くであろう本編では、俺達の心情を赴くままに表現しているので、どうか御安心して欲しい。
第一章では、怒涛の一ヶ月間の舞台となる『ケルリアン王国』に到着するまでの話でもしておこう。
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