1-2 八つの団②

 さぁどんどん行くぞ。次は『クラフキュートパーシェ』という団だ。名前からして可愛らしい気がするのは、きっと気のせいじゃないだろう。



「ソフィスタは基本、男女ごっちゃです。だがここは、唯一のです!」

「やっぱりそうなんだ!」

「エレガンティーナイツとは違って、『綺麗』よりも『』が多いんです。なにせ、団長がとても可愛いらしいんですよぉ~」


『見た目だけです。全員逃げる未来が……おぉ、見えますねぇ』



 勇者さんはどこか遠くへ目を向けている気がする。テレスコメモリーの中身は見れないので、彼がどんな姿をしているかは分からないが。とにかく、ここの団長はがあるようだ。



「あそこはよくパーティーしていますねぇ。他の団の女子はしょっちゅう誘われているようです。男性は本当、極めて、稀に、たまぁ~~~~に…………」



 この言いようだと、男である俺は絶対にダメだろう。そんな花園に、野蛮な野郎が入ってきたら確実に追い出されるのは明白だ。女って恐ろしい生物なんだぞ、舐めてかかる奴らは『死』を覚悟したら良い。



「ですがご安心ください! こっちは男性オンリーですよ!」



 茶寓さんが書いたのは『オーバービーストハザード』だ。名前からしてワイルドで、俺は普通にカッコイイと思う。



「殆どがマッチョでヤンキーで、喧嘩ばかりしてますね!!」

「え、団員同士の仲が悪いって事ですか?」

「そうですね!」



 曇りなき笑顔で断言されたので、膝から崩れ落ちて四つん這いになる。終わったな、これが『詰み』ってやつか。マッチョというのは、一種の憧れにもなると思う。実際に見ると惚れる。だけど、ここはただのとしか思えない。



「本当に人助けしてんですかぁ!?」

「団長は『毎日喧嘩に明け暮れて、全身が血まみれ』という噂が絶えません」

「なんて物騒な噂なんだ。副団長は止めないんですか?」

「実はここの団、副団長はんですよ」

「えっ!?!?」



 どうやら、現時点でソフィスタの副団長はらしい。団長はマストだけど、副団長はのようだ。という事は、団長に歯向かう人がいないって事じゃないか。さらに物騒を極めて来やがった。


 茶寓さんは俺の隣にしゃがみ込み、一緒に項垂れてくれる。野郎共しかいないと言うから、淡い希望を胸に抱いたが一瞬で朽ち果てるとはな。



「一生無縁が良いなぁ」

「でも団長には会わないと」


『あの野郎……ッ!』


「? どうしました?」


『あ、いえ……何でもねぇです。次行きましょう』



 口調からして、確実に怒っていたように感じる。団長達に存在すら忘れ去られてしまっているから、憤怒は普通か。


 次は『ダークネスマーダー』という団らしい。とても暗そうな雰囲気だけど、英雄さんはどういう意図で付けたのだろうか。



「ここにも副団長がいませんね。本トリッキー集団なので頭を悩ませます」

「それ、大丈夫なんですか?」

「団長がヤバイです〜。自分好みではない人には、目もくれない」


『千道を見たらトイレでクソをするように、一発KOしやがりますよ』


「止めときます」



 無理だろ。『魔力がない』っていう部分では、十分なトリッキー要素だと思う。だがここの団長が言う『トリッキー』は、魔法を指しているのだろう。魔力が皆無の俺には、目もくれないだろうな。



「マジックショーが大人気なんですよ~!」

「えっ!? そ、それは見てみたいかも!」

「だからなのか、ここの団には色んながいます。勿論、団長も人間じゃない」



 この世界には人間だけではなく、妖精族とか魚族とか様々な種族がいるようだ。いつか会えると思うので、割愛させて頂こう。



『八人で人間なのは、凱嵐だけです。あ、おれと英雄も』



 色んな種族が一丸となって、世界を調査しているようだ。差別がないと完璧だが、どうしても魔力量の差とかで上下関係が出て来てしまう。どこの環境でも、こうなるのは必然なのかもしれないな。


 茶寓さんは次に『バブルバベル』を書く。ここが一番覚えやすい名前だ。短いし語呂が良いからだろうか。



「一番危険な団ですね」

「どうしてですか」

「『七不思議』がある程に、謎しかないんです。私ですら本拠地がどこにあるのか、知らんのですよ」

「それって大丈夫なんですかぁ!?」



 この俺にホラーをブチ込んで来るとは、良い度胸しているな。映画館で気絶した経験がある、俺に。行きたくないな。でも行かなきゃ。あぁ、ヤダヤダ。



「あぁ、団長さんは占い師です。なんと、百発百中と言われています!」

「凄ぇ!」


『インチキって言ったら自分でも気づかずに、海のモズクにされてますよ』


「まさかの完了形!?」



 次は『リンカルライフ』という団。ここもなんとなく覚えやすい。ちょっと壮大な雰囲気を感じるのは、何故だろうか。



「ここは『特別扱い』していますので、基本的に『DVC』へ来ません。どこで何をしているのか、全く解りません。連絡手段もゼロです」


『お前、権力低くねぇですか?』


「二代目と言えど、私はですからね! 本当は英雄さんです!

 昨日も今日も明日もその先も、書類を捌くのが私ですよッッ!!」



 社畜根性が根強くなってしまったようだ。その割にはすぐに拗ねるので、打たれ弱いらしい。茶寓さんのソウルは『記憶』なので、一見強そうに思える。だが実際は事を、相当気に病んでいるらしい。

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