第7話:僕とセフレちゃんの愛称。

そんなこんなで藍ちゃんと付き合い始めて約一ヶ月が経ち最初のなんとなく

ぎこちなかった関係もナチュラルに馴染んできていた。


敬語だった言葉もすぐにタメグチに変わった。


「ねえ、ねえ私、高岡さんのこと苗字で呼んでるけど、それだと他人行儀って

言うか、ぜんぜん親しみこもってないと思わない?」

「だから〜高岡さんのこと、これから(チチ)って呼ぶことにするね・・・」


「好きに呼んでくれていいけど・・・でもなんでチチなの?」


「それはね、私が子供の頃、お母さんが見てた「ぽっかぽか」ってドラマ中で

娘のあすかちゃんが、ご両親のことをチチ、ハハって呼んでたの・・・だからね」


「あ〜そうなんだ」


「でね、あすかちゃんが両親のことをなんでチチ、ハハって呼んでたかって

ことなんだけどね」


「あすかちゃんが2歳くらいの時にね、母親の麻美さんが近所の方とあすかちゃんを抱っこして話をしている時に、近所の方に「ご両親はご健在なんですか?」って

聴かれて「はい、父も母も」って答えたところ後であすかちゃんに、あれなぁに?

って聴かれて麻美さんが「チチはお父さんの事、ハハはお母さんの事だよ」って

教えたら次の日からご両親のことをチチ、ハハって呼ぶようになったんだって」


「だから〜高岡さんも私のお父さんみたいなもんだから・・・」


「ほう〜・・・」

「だけど、そのドラマかなり古くない?」


「再放送・・・」


「あ、再放送・・・なるほどね」


「だからね、これからはチチって呼ぶね・・・そう呼びたいから・・・」


「普通に俊介とか俊ちゃんとかじゃいけないの?」


「あのね、たとえばね、ふたりでレストランとかに行ったとして私がチチの

こと俊ちゃんなんて呼んでるのを他のお客さんが聞いたら変に思っちゃう

でしょ」


「みんな私たちのこと見て絶対、親子だって思うでしょ」

「娘がお父さんのこと俊ちゃんなんて呼ばないよね、普通はパパかお父さん

でしょ?」

「だからね、普段から俊ちゃんなんて呼んでたら、きっとそういう場所でも

うっかり俊ちゃんて呼んじゃうでしょ・・・だから、ね?」


「かと言って普段から「お父さん」って呼ばれるの嫌でしょ」


「さすがに、お父さんはな・・・」

「パパってのも嫌だし・・・なんかパパ活みたいでさ・・・」

「うんじゃ〜チチでいいよ」

「ってかチチって呼ぶのも、変じゃないか?」


「いいの・・・もう決めたんだから」


「そうか?・・・じゃ〜僕は藍ちゃんのことハハって呼べばいいのか?」


「なんでよ・・・私の方がずいぶん歳下なんだから、さすがにハハってのは

おかしいでしょ」


「そうか・・・たしかに変だな」

「じゃ〜・・・なんて呼ぼう・・・・・・ん〜そうだな普通に藍ちゃんで

いいか・・・」

「そうだ・・・閃いた・・・藍ちゃんのこと、これからアイアイって呼ぶわ」


「アイアイ?・・・うん、それでいい・・・アイアイでいいよ」


で、アイアイは僕の彼女、恋人なんだから、なんて言うか本当ならそろそろ、

結ばれたっていいと思うんだけど・・・。

まだハグだってチューだってまともにしてないし・・・。


小心な僕は、アイアイが欲しいなんてまだ言えない。

アイアイだって自分のクチから、そんなこと言いにくいだろうし・・・。


おじさんが23才の乙女を汚しちゃうなんて、そんなことできないでしょ。

中学生みたいにバカみたいなこと言ってると思うかもしれないけど、

こんなおじさんになっても僕の今の気持ちはやっぱり中学生のままなんだ。


アイアイに見つめられると、おじさんはつい目を伏せてしまう。

僕を助けてくれた彼女にトキメキ感じてる自分がいる。


アイアイと一緒にいると本当に若返えってる自分がいる。

僕が彼女を引っ張ってるんじゃなく、彼女が僕を引っ張ってるんだ。

アイアイを中心に僕の世界は回ってるんだな。


昔、バイクに夢中になってた時期があったけど、またバイクに乗りたいって

思うようになって来た。

これもアイアイ効果なのかな。


つづく。

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