第2話 天野さんとゲームセンター

 ホームルームが終わり、待ちに待った放課後になった。

 チャイムが鳴るとほぼ同時に篠崎が入ってきた。


「なあ、悠今日暇か?」

「ごめん、ちょっと用事があるんだ」

「そうかぁ、じゃあまた誘うわ」

「次はいけると思うから。また遊ぼ」

「おう、また明日」


 篠崎には申し訳ない気持ちで別れ下駄箱で靴を履き校門を抜け、駅へ向かう。


 普段ならこのまま家に直行するのだが、今日は大事な用があるため少し遠いゲームセンターへ向かうため電車に乗った。

 最近流行っているアニメの限定グッズがUFOキャッチャーの景品に並ぶのだ。


 軍資金はたくさん用意出来たから是が非でも取りに行かなければ。


 ただコラボしたゲームセンターが学校の最寄駅より少し遠いのでちょっと面倒なのだが、この学校の人たちがいないという利点もあるので結構利用している。


 色々考えているうちに最寄り駅に着いた。


 ゲームセンターは駅から10分ほど歩いたところにあるため少し歩かなければならない。

 俺は昔からインドアなので歩きたくないのだがゲームセンターに行くにはここから行くしかない。


 そうやって歩いてるうちに目的の場所に着いた。


「久しぶりだなぁ、一か月くらいかな」


 最近はあんまり来れてなかったのでグッズが取り終わったら普通に遊ばせてもらおう


「さぁて目的のUFOキャッチャーはどこだ。お、あったあった」

コラボしてるアニメはよくあるハーレムアニメなのだが、俺はそういうラブコメが大好きだから結構ファンなのだ。


「早速とるか。一プレイ百円だから五十回はいけるな」


 お小遣いは毎月三千円なのであんまり無駄遣いはしたくない、だからできれば十回以内に取りたいところだ。


「やばいもう二千円分飛んだぞ。次は、次は取る」


 もう貯金があまりないんだ。ここで取れないと三日は寝込むぞ俺。


 俺がUFOキャッチャーと奮闘していると、入口の方から大きな声が聞こえてきた。


「あの、やめてください。私そういうの興味ないです」

「いいじゃん、合コンに来てくれればいいんだって。ね、いいでしょ」


 どうやら揉め事のようだ、女の子に大学生ぐらいの男三人が絡んでるようだ。

 そうゆうのは周りの目を気にしろと思うのだが男たちは、やめる様子がない。


 こういう状況になったらアニメの主人公たちは颯爽と女の子と男たちの間に入って助けに行くのだろうが、俺みたいなモブは助ける勇気がでない。

 ここは店員さんに助けを求めるのが現実的な対処法だろう。


 あれ、あの女の子どこか見覚えがあるな。

 だけどマスクをしているせいで全然思い出せない。


 頭の中で必死に思い出そうとしてると、男たちが女の子から荷物を奪おうとしていた。


「や、やめてください。それ大事なものなんです」

「へぇ~、じゃあ俺らについてきてくれるなら返してやるよ」


 あ、あれは俺が狙おうとしてたアニメのグッズ!?もしかしてあの人も俺と同じファンなのか、しかも俺の推しと一緒じゃん。

 だとしたらあの子は俺と同じ推しを持つ仲間!

 同じ趣味を持つ仲間としてもう放っておけない。

 それに人の物を奪おうとするとかもう犯罪だろそれ。


 俺は男たちの肩をたたいて俺はとても迷惑そうな顔で男たちに話しかけた。


「あのすみません、それ以上騒ぐなら警察呼びますよ。それに人の物を取るのは立派な犯罪だと思いますよ」

「誰だお前、俺らはこの子に用があるの。しかも人の物なんてとってねえし借りてるだけだよ、なあ」


 反省する様子もなく男たちはひしひしとむかつく顔で笑っている。


「なるほど……でもこの状況を警察が見たらどう思いますかね。間違いなくあなたたちが悪者に見えますが、一回警察の方に聞いてみますか」


 そういいスマホを男たちに見せた。


「わ、わかったよ警察はやめてくれ。おい帰るぞ」


 男は残りの二人に声をかけると速足で入口から出て行った。


 やばい超緊張した、まだ心臓が小刻みにどくどく鳴っている。

 やっぱり慣れないことはするものじゃないな、今回はうまく納得してどっかにいったが次こんなことになったら同じようにいくかわからないしな。


 詰められてた女の人は大丈夫かな、結構怖かったと思うけど。


「あの、大丈夫ですか?けがとかしてないですか」


 やっぱだいぶ疲弊してるな、そりゃ男三人に詰められてついてこいって言われたら怖いよな。

 あれ、てかやっぱこの人どこかで……あ!思い出した、この人――


「ええと……もしかして天野さん?」


 そう、マスクもしてるし髪型もポニテからロングになっていたためわかりづらかったが、あのオーラは天野さんからしか感じたことがない。

 

「え?……」


天野さんはなぜ名前を知っているのか疑問に思ったようで、ずっと俯いてた顔をこちらに向けてきた。


 数秒ぐらい経ってもなかなか気づかない。

 あれ、一応同じクラスなんだけどな。

 まあ俺のことを覚えてなくても無理ないか、学校じゃ空気みたいな存在だからな。

 自分で言ってて悲しくなってきた。

 なんか気まずいしそろそろ自分から名乗ろうとすると――


「し、東雲くん!?」


 あ、良かった、俺のこと一応覚えててくれたみたいだ。




 





 


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クラスで人気の天野さんはゲーマー女子 握り飯 @nigirimesi1003

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