クラスで人気の天野さんはゲーマー女子
握り飯
第1話 クラスで人気の天野さん
「あ、ずるい
「格ゲーで情弱は狩られる
俺は
関わりあうようになってまだ一か月も経っていないが、自慢できることが友達の少なさの俺にとって数少ない友人と呼べる関係になってきていた。
「あぁ、また負けた!自分に有利なゲームで、初心者の私をぼこぼこにして、東雲くんには人の心とかはないのかなぁ!?」
「俺は物事に取り組むときは全力で楽しめってじいちゃんに言われた日から、ゲームで手を抜いたことはない」
「じゃあ勉強とかも頑張っていい成績とらないとね」
「え、ああじいちゃんは勉強はほどほどにしろっていってたな、うん」
「ちゃんと勉強もしないとゲームできなくなっちゃうかもよ」
「う、だが最低限テストの点は取ってるはずだから。ダイジョブダイジョブ」
天野は学校では落ち着いた性格をしているが、俺の前では冗談を言ったりからかってきたりそんな普段は見れない一面も見せてくれるようになってきて、だんだん仲良くなれているのをひしひしと感じ心が温かくなった。
天野も俺のこといい友達と思ってくれているはずだよな……
まあ俺の家で一緒にゲームをしてくれてるし?少なくとも、よき友人だとは思ってくれてるよな、うん。
「どうしたの東雲くん、もしかして私に負けたらどうしようとか考えてた?」
「安心しろ、ウ○ハラの片腕と言われた俺が負けることはない。」
「いや東雲くん使ってるの○麗じゃん。どっちかというと倒されるほうでしょ」
今まで平凡な日々を過ごしてきた俺にとって想像もできないような光景だが、放課後に俺の家で集まりゲームをして、しょうもない会話をして、笑いあう。そんな非日常が俺の日常になりつつあった。
「あ、そういえば新作のポテコチップス買ってあるぞ。食べるか?」
「ほんと!?私の近くのコンビニじゃ売り切れてたから買えなかったんだよね。食べよ食べよ」
「おい、そんながっつくな食べ物は逃げないって」
最近の生活は天野のおかげで退屈しない。
なんで俺のような陰の者が天野とゲームをしているかというと、それは二年生になって少し経ったときに起きた一つの出来事が理由だ。
その日俺は知ってしまった、天野澪という女の子が驚愕するほど生粋のゲーマー女子だったということを。
◆
「なあ悠、お前このクラスで誰がタイプなんだ?」
春風が窓から体を吹きかける心地いい高校の教室で、東雲の友人である
篠崎は友達贔屓もあるかもしれないがかっこいい、そうモテる。
息をするように女の子から言い寄られる女誑しと言われても文句はいえないほど罪な男なのだ。
だが篠崎に彼女はいなく、理由を聞くと一年近く一つ上の先輩に片思いしているらしい。
ほかの女の子には目がいかないほど先輩に惚れている、でも根はまじめな篠崎らしいなと俺は思っていた。
俺はそんな篠崎が妬ましく思うことがあるが尊敬してる。
俺のようなあまりしゃべらないやつとも友達になってくれて、クラスでも孤立しないように色々してくれるとても心優しいやつなのだ。
「なんだいきなり、うーん……俺そういうのよく分からないんだよなあ」
「えぇ、それは嘘だろ。このクラス他と比べても可愛い子いっぱいいるから好きになりそうな子ぐらいいるだろ」
篠崎と比べ俺は恋愛どころか女の子ともまともに話すことがないので、この手の話題にはとても困るのだ。
でもタイプかぁ、誰か選ぶんだったら……
そう思い教室全体を見渡すと一人の女の子が目に入った。
「お、なんだお前も天野のことが気になるのか?」
「ち、違う!ただ……そう!ポニテいいなって、そう思ったんだ」
天野澪、俺と同級生で入学当時から主席で入ってきて、それで芸能人みたいに可愛いと話題になっていた。
同じクラスになるのは今年が初めてなのでどんな人物なのかは風の噂程度しか知らないが、成績優秀で困ったことがあればとりあえず天野さんに助けてもらおうという風潮ができるほどとても頼れる人らしい。
もう一度天野さんの方に目を向けるとクラスの女子が天野さんに話しかけていた。
「天野さん、数学のこの問二番がわからなくてさ。教えてくれない?」
「いいですよ、ここはね……」
「さすが天野さん!また助けられたよ」
「いえいえ、困ったときはお互い様ですよ」
さすが人気者の天野さん、また迷える人を一人助けてる。
やっぱ天野さんにはこう、華やかなオーラを感じるんだよな。
容姿端麗という言葉がぴったりで透けるような白い肌にすらっとしたモデルのようなスタイルで、くっきりした目鼻立ちの整った顔立ちをしており、みんなから可愛いといわれる理由がわかる。
俺的にはポニーテールの髪の下から少し見えるうなじが非常にいい、ポニーテールという髪型を考えた人は多分神なんだろうな。
あんなの考え付くのは天才としかいいようがない。
「ほんとにそれだけかぁ?俺はイイと思うぜ天野」
「まあ可愛いなとは思うけどね」
それだけ可愛くいて人気があるとやっぱり男子からの告白も絶えないらしいが、天野さんはそれらをすべてきっぱり断っているらしい。
それでも告白する奴らがまだいるのはそれだけ魅力的だからだろう。
だが俺はそんな無謀なことをする考えも勇気もないので、こうやって遠くから眺めて目の保養にするのがちょうどいい。
「お前も好きな子できたら教えろよ、応援してやるからよ」
「篠崎はまず自分の恋を実らせてくれ、好きなんだろ先輩」
「おう!俺は絶対諦めないからな」
「そのやる気ほんとに見習いたいよ」
そんな雑談をしていると昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴った。
「もうそんな時間か、じゃあまた後でな悠」
「また後で」
そういい篠崎は自分の教室へ戻っていく。
去年と違い別クラスになってしまったのは、しょうがないのだが篠崎以外友達がいない俺にとってこのクラスは凄く気まずい。
そうして憂鬱な午後の授業が始まった。
俺は授業を真面目に聞くことはほとんどない、物理がどうのこうの言われる話がとても苦手だ。
だからばれないようにペンを握り、机に突っ伏してすっと眠りについた。
そうやって夢の世界に入っているうちに帰りのホームルームになっており、先生が連絡事項などを話をしていて、刻々と待ち遠しい放課後の時間が近づいていた。
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