第2話 議論
王真は車に乗って、崇明大学のキャンパスに入る。
学生たちは三々五々、「自動歩道」に寄りかかって談笑している。人の群れの中を、じりじりと通り抜ける学生もいるし、さらに、頭がおかしくて、道の真ん中まで歩いている人も少なくない。
時々、急ブレーキをかけて、振り回された王真は吐き気がする。
「やれやれ、まあいい。サチコ、退け。自分で運転しょう。」王真はため息をつく。
「すみません、それはできません。公共の安全のため、人が運転のは禁止事項です。状況により、最悪の場合、不名誉自決も可能です。どうかご遠慮ください。」AIアシスタントは、依然としてきれいな声と述べる。
「堅苦しい言葉はやめとけ。別に、そんな真似をしねえよ。あくめで、口で言ってだけ、口で。」斉雲は車の手すりを握りしめる。「スピードは20キロ以内にしろ。というか、てめえ、これキャンパス内だろ?いったい、どれだけ早く運転すれば気が済むんだよ?」
「安全を確保した上で、できるだけ短時間で目的地までお届けします。この車の性能、センサーやプロセッサの演算速度を総合すると、60キロまでのは安全だと思います。運転ロジックを勝手に修正することは、公共の安全のため、禁止事項です。」AIアシスタントは無表情で言う。
「いずれ、情報科の連中に言って、あんたのロジックを更正する。あんたとの会話を想像して、頭がどんどんおかしくてきた。」急ブレーキはさらに多くて、王真は朝ご飯を吐き出ほど気が悪い。
また急ブレーキだ。
しかし、王真は車の中でどのように抗議しても、車の片側ガラスの完璧な防音の下では、すべては無駄だ。むしろ、昔のほうがいい、と王真は思う。
昔は、車を運転してトラブルに遭ったとき、窓を開けて罵るとか、ドアを開けて殴るとか、そんなことも可能だという。
「クソ……これもそれも。ただ歩道を歩くのは、できないか?」車窓から外で、道路を横断している学生はたくさん見える。
「えーと、いい。ここで止まれ。劉延じゃない?それ。」王真は力を入れて、車のドアを開けようが、走行中は開けない。
「サチコ、もういい、ここでいい。そして、車を家に運んで、ヘリコプターをここで待機する。もううんざりだ。陸路だめだ。」
劉延は足を止めて、振り向いて、車のそばに立って待っていた。ドアが開き、王真は車を降りて、ドアを強く閉めて、車の尻を軽く蹴った。
「だから言った、今の大学生は……」王真は文句を言う。「ちょっ……おまえまで?」
「寮はあそこだ。」劉延は前方のとある建物を指して言う。「どうやって行くの?」
「どうやって?ただ歩くて行って?どういう意味?」
「じゃ、道の向こうの自動歩道に行って、前の交差点から歩道橋に上がって、第三教室棟を通って、自動歩道に上がって寮に行くべきだ。」遠くて、確かに、歩道橋が見えるよう。
「まあ、仕方がない、そちの自動歩道を逆走しよう。」王真は妥協する。「たとえ崇明府情報統合システムに効用を精算しても、遠回りより、逆走のほうがいいかも。」
「そう言えば、中国人だろう?どうして日本語で?」劉延は疑問する。
「いいじゃない?みんな崇明大学のエリートだよ?日本語くらい、わからないやつがいないはず。」
「そりゃ……そうだけど。」
「なら問題ない。」
王真は劉延のあとについて、エレベーターで部屋に着いた。王真が劉延の新しい部屋に訪ねる、これは初めて。リビングはがらんとしていて、短いソファーが一つ、低いテーブルが一つ、寝椅子が一つ、そして、VR設備はあそこに置いている。大きな窓の外は、マンションばかりで、長江が見えない。
「やっぱり、床に落ちた窓から、長江の眺めはいなければならない。」王真は感慨深げに言う。
「田舎は田舎のメリットがあり、府心は府心のデメリットがある。」と劉延は言う。「たとえ大統領さんの官邸にいても、長江はまだ見えない。不可能なことは不可能だ、余計な文句を言うな。さて、本題に入りましょう。なにかご用?」
「それは……」と、王真はソファーに寄りかかって吟味する。「もし、もしよ、あくまで仮説に過ぎない。おまえは一人の背任行為を発見する。その人を生き残させても、社会に何のメリットもない……たぶん。なら、情報統合システムに告発するの?」
「もちろん。」劉延はためらわない。「これこそ、我々の義務だろう?」
「待て待て待て、これは人殺すよ?とある人が亡くなるよ?」王真は叫んだ。
「我々は、他人の命を奪う権利がない。大統領さんでさえない。」劉延は冷静に言う。「私はただ、情報統合システムに報告し、そして、計算力を分配して、その誰かの効用関数を再精算し、本人にアップデートの効用関数を知らせるだけ。自決するかどうかは当事者自身が決めることだ。」
「理論的にはそうだけど」と王真は言う。「実際、おまえが人を殺す。AIが人を殺す。AIから、効用関数がゼロ以降を知り以上、まだ自決しない人が、今まで聞いてない。AIの判断は絶対だ。」
「つまらない。」劉延はこれ以上、議論を続けたくない。「情報ビルに論文を読むべきだった。」
「待てよ。」王真は劉延を引き止めた。「まあ、正直、私自身のことだ。何かあったのかも。」
「何のこと?」劉延はソファーに座っている。
「崇明文芸社の人事課長、彼女が自決した。」
「適任でない社員は自決だ」と、劉延はゆっくりと復唱しながら考えている。「よくあることだよ。私には、論文が出せないなら、自決しなければならない。ほぼ毎日のことだ。」
「おまえの役目、わたしはわからないけど……でも、文芸社の件、私のせいかもしれない。」王真はため息をつく。「一昨日、2月6日のことだ。」
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