上海 in 2233

@nichitatsu

第1話 崇明

2233年、崇明ちょうめいは上海に代わって、中国最大の都市となった。そして、同年2月8日、株式会社崇明文芸社の人事課長李静りせいは、「不名誉自決」を受けた。


「悪いのは、おれじゃない」。同年2月6日、面接が終わったら、王真おうしんが崇明高等研究所の専用線路を通じて、崇明府情報統合システムに告発したとき、そう思った。


「役に立たない人が、いらない」。 誰でもそう思うだろう。

社会の発展は、均等ではない。

科学技術は急速に進歩したが、倫理準則はただ足踏みだ。ハイレベルな生産力は、ハイレベルな生産関係との適応が必要とし、数百年前の人々は、なんと、この自然の法則に逆らうことがあった。

彼らは、天賦の人権の誇りを、大々的に宣伝したが、天賦の義務には目を向けなかった。権利を主張する一人一人が、最後に、全ての人類に、破滅を招いた。


二度の世界大戦が、そんな短時間で、次々と起こったが;深い反省はなにもない、いささかの教訓も得られなっか。人々は依然として、科学技術の変革を迎え入れようとし、古い倫理を穏やかに改善し修復しようとする。

第四次世界大戦のあと、「現代人工知能の父」と呼ばれた、崇明大学情報学部名誉学部長近藤昭彦が、斬新なアーティフィシャルインテリジェンス・アーキテクチャ(AI Architecture)を提案し、効用関数の計算は可能になれた。やがて、旧倫理は末路に至った。功利主義は以前のすべての不要なものを一掃した。

一人の人間の続ける価値がゼロ以降の場合、その人は即座に死に迎えった。

シンプルな功利主義。


論理的連鎖は非常に明確だけど……2月8日の朝、AIアシスタントから、李静の自決のことを聞いたら、王真は深く深くため息をついた。ソファに嵌った彼は、黄浦江こうほこうのいい眺めに一目も向かなかった。

あくまで、王真は感性が理性を上回った人物で、言い換えれば、旧社会で育ったものだ。

人類という全体な概念に感じない、一人一人の具体的な生死を重視する。だからこそ、自分は李静を殺したという事実を、王真は、深刻に、心から受けた。まあ、間接的に、だけど。


「サチコ、劉延りゅうえんのところへ」。王真は自分のAIアシスタント、サチコに言った。

「はい、かしこまりました。劉延は大学の情報ビルにいます。現在の航路は混雑しており、推定待ち時間は五分となります。」AIアシスタントのきれいな声が空に響きました。

「ヘリコプターはいらん、車でいい。さっさといけ。どうせ、その辺のヘリコプターはあまり多くて、車のほうがより速いかも。」


王真ははソファから立ち上がり、出かけ、エレベーターで地下駐車場に行き、シートベルトを締め、アパートを出た。普段、ヘリコプターで田舎から町に入るとき、王真はあまり実感がない。今度、自ら車に乗り、橋を渡ると、崇明長江ちょうこうの両岸の多大な差が一目でわかった。ああ、差別社会はこれだろう。


北岸は崇明府の「府心エリア」、正真正銘の23世紀の国際的な大都市。残念だが、南岸の「田舎エリア」はあくまで22世紀の古い物に過ぎない。それさらに南のは、上海。上海、特に「上海人」という言葉は、強烈な侮辱的な意味を含めため、今はあまり使われない。


「上海人か。李静はそう言ったけど、死に至ったのはあまり……不快は不快けど、わたしはとても理解する。わたし、間違ったのか……」王真は独り言を言う。

「いいえ。情報統合システムに告発のは、とても自然の考え。無論、その行為も正しい、指摘の余地もない、と思います。」AIアシスタントはこう言う。

「独り言だ、回答の必要はない。おまえいま、運転手だろ?なら、ちょんと運転しろよ。余計な世話を焼くな。まあ、所詮、AIはAIだ。勝手に人間相手にとって、馬鹿馬鹿しい。」

「現代人工知能には、車を運転しながら会話をするのが簡単なものです。さきおしゃった通り、我々AIは、所詮人間のためのものです。王さんのアシスタントになるのは、わたしの光栄です……」再び、きれいな声は車内に響く。

「もういい、さっさと黙れ。」


崇明大学は崇明府の府心エリアの一つ、城橋区に位置する。キャンパス内は、広大な図信センタがあり、まるで崇明府のデータ処理センターと拮抗することができる。まあ、内装はちょっと古いけど。

三年前まで、王真はずっとここにいた。結局、学部卒、大学院に入ったとたん、大学は情報研究科以外の全ての大学院生を、田舎エリアに配属した。「いや、地代は高いし、うち、金もないし、仕方がない……だろう?」総長はそう言った。

この度劉延を訪ねる、田舎の貧しい人が町の豊かな親戚を訪ねるの悲しさ、王真は身に感じた。


「ああ、ようやく着いたか。崇明大学……本部。」

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