漁火① 到達点


 その日、船長は珍しくしっかりとした皺ひとつない服装をしていた。

 船団が帰港して陸での仕事をこなす日の事だ。

 天気も良く心地良い風が吹く日に彼はハラネスを呼び出したのである。

 そうして2人と何故か着いて来たフロドは列車に乗り、楽しい小旅行……という訳ではない。


「この際なんでフロドが居るのかは聞かんが邪魔はしないでくれよ?」

「オウ、気にすんな気にすんな」


 向かい合わせの座席に座り、ハラネスは興味なさげに窓を見て、フロドは対面の座席に脚を乗せている。

 側から見れば相当な威圧感のある3人だろう。


「よし……それじゃあ本題だ。薄々勘づいちゃいるだろうが、シロクジラの討伐はウチで請け負う事になった」

「当然だよなァ!腕ヨシ実績アリだもんよ」

「そこでだ、対シロクジラ用に開発されたイサナトリがあるんだが……そいつをハラネスに任せるのが最適だと考えているのが偉い人らを含めての共通認識だ」


 そこでようやくハラネスはその無関心な態度を改めて、半ば睨むような眼光で船長と目を合わせる。


「そうか、ならば乗ろう」

「ホントは飛び上がるくらい嬉しいんだろぉ〜」

「そうかもな」


 再び窓枠に膝を突き、興味なさげに景色を眺め始めたハラネスであったが、その拳は握りしめられている。

 感慨や激情が溢れて消えてしまわないように蓋をしているようなものだ。

 ハラネスにとってこの機会を得たのはやはり大きな意味を持っていた。


「受けてくれるのはまあ、分かっていた。だからこれから見に行こうと思ってよ」

「新型か!?凄いじゃねェかよハラネスよお!くっついて来て良かったぜ!」

「乗るのは俺だ」


 テンション高めのフロドを連れて、2人が向かったのは新たな技術が形となる場所……開発局だ。

 レンガ造の建物を前にして、胸の鼓動を抑えられないのは何もフロドだけではない。

 ハラネスも思わず期待に口角が上がる程には内心のワクワクを抑えきれないのだ。

 プレゼントを前にし、早く包装を破きたいと焦れる子供のように建物の中へと入ってゆく。

 そうして一行を迎えたのは馴染んだ人物だった。


「おぉ!ハラネスさん!フロドさん!」

「セファンちゃんじゃねェか!」

「元気そうだな」

「そりゃあもう良い空気吸ってますからね!」


 満面の笑みのセファンが手を振り駆け寄る。

 思わぬ再会にフロドは思わず抱き止めて、ハラネスも嬉しい感情を隠さずに顔に出していた。

 

「この存在感に満ちた船長を無視するとはいい度胸じゃないか。えぇ?」

「ははは!勿論歓迎しますよ船長!さあこちらへ!早く見せたくてウズウズしてるんです!」


 そう言ってセファンは足早に建物の奥へ歩いて行って、慌ててそれを追い掛ける。

 静かな知的労働の場所だというのに、セファンは構わず全身で喜びを表してはしゃぎ回って止まらない。


「いやぁ!ホントこの日の為に頑張って来たんです!努力が実るって素晴らしい事ですねぇ!」

「おいセファン、前を見ろぶつかる──」

 

 ハラネスの警告虚しく、そんな調子だから曲がり角で通行人と衝突し……更にそれが彼の上司であれば、先程までの浮かれた顔も蒼白となるというもの。


「ご機嫌ね。セファンさん」

「おぉぁ……そりゃもう、お日柄もよろしいので……」

「トルネも居るのか。いや当然か」

「私が手掛けてきた計画の最終段階だもの。全て見届けないと気が済まない」


 最終段階、つまり正式な銛撃ちにイサナトリを任せてシロクジラを討つ。

 これが今、動いている。

 ハラネスをコクピットまで案内するまでに、多くの人の不断の努力が紡がれてきた。

 トルネもセファンも自分が関われる最後の仕事を勤め上げたいのだ。


「ホラホラ早く見に行こうぜ!コッチか!?」

「あっ!フロドさん勝手に!」


 辛抱堪らず駆け出したフロドは廊下を勘だけで駆けて行ってしまう。

 それを追い掛けてセファンも何処かへ走り去り、残されたのは呆れ顔の3人。


「まあ、貴方を案内出来れば問題ないわ。行きましょう」

「ったく……なんで着いて来たんだよアイツはよォ……」

「楽しそうだった。……今日は良い日だな」


 窓から差し込む日差しを浴びながら廊下を進み、何重かの警備を抜けて厳重な扉を潜った先は格納庫。

 広々としたそこには薄明かりだけが差し込んで、音もなく静かにただ1機の小型飛行船……否、イサナトリが鎮座している。

 手も足も見当たらない黒く巨大な体。

 通常のイサナトリが球体に近い形状をしているのに対してこの機体はそこから大きく逸脱した長い形。

 通常のイサナトリの後部を引き伸ばし、増えた部分にブースターを埋め込んだそのシルエットはイサナトリというよりも、その狩猟対象であるクジラに似ていた。


「これが対シロクジラ用に開発してきたイサナトリ……名をサカマタ。高機動、高火力を追求した大型イサナトリよ」

「ヘェ、こいつァ凄いな」

「…………」


 圧巻の一言であるその威容を前に、ハラネスは言葉を失う。

 目を見開き、呆けて口を開けてしまう程にハラネスは衝撃を受けていた。

 内心に荒れ狂うような驚愕や混乱が渦を巻き、しばらくは立ち尽くしていた程。

 やがてそれらが納得という形でストンと腑に落ちて、近寄り装甲に手を伸ばす。


「これが有れば俺は……」

「シロクジラを倒せる。貴方なら出来る」


 トルネの言葉がハラネスの心へと入り込み、高揚が全身を駆け巡る。

 自身よりも遥かに大きなこの金属の塊を自在に操り空を飛ぶ。

 それを想像しただけで笑みが溢れる。


「最高だ。これこそ俺が求めていた──」

「ヨオ!うーっわ凄えな!」


 騒々しい闖入者……フロドがハラネス達とは別の扉からやって来て、やはりサカマタの姿に驚き声を漏らす。

 困った顔をしたセファンを引き連れて、何やら企んでいるニヤニヤとした表情をして歩いてくるので船長は思わず嫌な顔をしてしまう。


「フロドさんちゃんと許可!取ってくださいよ!?」

「オウオウ任せとけ。いやー信頼できる愛する兄上殿におきましてはご機嫌麗しゅう」

「連れてこなきゃ良かったぜ……」

「さぁて!トルネさんもよォ!命を救ってやった恩!ってもんが僕にあるよな?ん?」

「私に、出来る事なら……」


 明確に後悔と不安の影を表情に落とした2人を連れて、フロドはすぐさま何処かに行ってしまった。

 反対に面倒事から解放されたセファンは清々しいものだ。

 サカマタに触れ、隅々まで見回すハラネスの隣にやって来てニコニコと笑みを浮かべている。


「こんな物は見た事がない。お前も関わったんだろう?」

「ええ。ハラネスさんに乗っていただく為に全力を尽くしました」

「俺が選ばれるとは限らないだろう」


 この機体に乗るのは別の銛撃ちの可能性もあった。

 そう疑問を浮かべたハラネスに、セファンは悪戯な笑みを浮かべて答える。


「この機体はとんでもなく性能が良いんです。燃料が新しい物でして。これをフルで活用したところ、そのスピードが凄まじいのなんのって」


 実に楽しげに語るセファンであったが、事故と紙一重の事案を語るには些か軽薄すぎる印象であった。

 だが相手がハラネスだ。

 黙って聞いている彼も楽しげに未知のスピードへの想像を膨らませていた。


「だからこれを上手く制御して人が扱い易いようにする、というのが課題のひとつだった訳ですが……私は気にせずに性能を高めまして」

「そんな事をして大丈夫なのか?」

「だってハラネスさんは大丈夫だったでしょう?こうすればハラネスさん以外にこの機体が渡る事は無いだろうと考えたんです」


 平然と言ってのけるのはハラネスとその腕前への信頼の証明か。

 周囲に止められながらも意地で通したこの性能は、セファンの脳裏に最大限に機体性能を発揮できる乗り手の存在があったからこその半ば蛮行とも言えるゴリ押しによって実現したものだ。

 そしてなによりトルネがそれを認めた事も大きい。

 どちらにせよ、それらの根本にはハラネスの行いがあり、本人と意図するところではなかったとしても自らの行いが巡り巡って戻ってきた結果だった。


「私達が作り上げた最高の機体……この夢を飛ばすのは貴方だ」

「そうか、俺もそれに応えよう。シロクジラは必ず仕留める。コイツでな」


 拳で軽く装甲を小突けば重い音が響く。

 頼もしい重さ、存在感が胸を熱くさせてこれを駆る日が待ち遠しい。

 ハラネスはこの瞬間、子供のようにはしゃぐ気持ちを抑え込むので精一杯な程だ。

 そんな静かで、ただ内的な感情が激しい主張をしている格納庫に、また別の楽しげな声が響いた。


「ヨォー!セファンちゃん!ちょっと来い!」

「フロドさん!許可取れたんですかぁ!?」

「あたぼうよォ!」


 フロドに呼ばれ、駆け出したセファンは数歩進んでハラネスへと振り返る。


「ちょっと行ってきます!」

「ああ、行ってこい。俺も少し風に当たる。昂り過ぎておかしくなりそうなんだ」

「ハハ、私もですよ」


 3人揃って外へ出て、セファンはフロドに引き摺られるようにして何処かへ行ってしまう。

 騒々しさから距離を置いたハラネスはひとり、興奮で熱った体に心地の良い風を受けて息を吐く。


「今日は良い日だ」


 そのまま何と無しに足を動かしぶらつき始めれば、周囲からは様々な音が聞こえて来る。

 何かを叩く音、何かを削る音、何かが動く音。

 発しているものが何か分からない音があちらこちらから響いて、しかし何処から聞こえているのかも分からずハラネスの周囲には静寂が満ちている。

 ただ緩やかに過ぎる時間の中でハラネスは大まかな検討を付けてサカマタのある格納庫を中心に一周するようにルートを決めて歩き始めた。


(思えば遠くに来たものだ)


 荷物を満載にしたトラックや、逆に荷物を下ろした身軽なトラックとすれ違う。

 広い道路には車の往来が多く、道の端を歩くハラネスはパワフルな排気の臭いを嗅いで思わず鼻を抑える。

 そうして何度目かのすれ違いを経て、鼻が我慢の限界を迎えたハラネスは横の細い路地に入ろうとして……足元の人影に立ち止まった。


「おっ……と」

「オゥ、すまんね。おや、アンタ……」

「?……ああ、採掘船の」


 地べたに座り込みタバコを楽しむ歯抜けの老人がひとり、ハラネスの顔を見て指を差す。

 ハラネスにも見覚えがあったその人は、セファンと初めて会ったあの採掘船に居た老人だ。


「何故ここに居る」

「仕事がないんでトラックの運転手をやってんのさ。化け物クジラのせいで採掘船団……いやそれ以外の船も空に出れないんでなぁ」


 シロクジラへの警戒から、航路は大きく制限されていた。

 あらゆる船が対象で、その為仕事にならないと嘆く人も多い現状。

 そこでこの老人は別の仕事を見つけるとは逞しく事である。


「そういう事か」

「なんでい自分から聞いたくせに興味なさげだ」

「思わず聞いてしまったが、別に知りたい訳ではない事に今気が付いたんだ」

「へへ、クジラ殺しの英雄サマは変わりモンだなぁ」

「なんだそれは」

「知らねぇのかい?酒場で船乗り連中が話してるぜ、ハラネスって凄腕の銛撃ちが居るってよ」


 当のハラネスは特段の関心は見せずに、そのようなものなのかと黙って老人の横に腰掛ける。

 懐からタバコを取り出し火を付けようとして……横から火を差し出される。


「すまない……ならその英雄を作ったのは、こんなふうに火を付けたアンタやセファンだ。あの時俺を飛ばしてくれたから、今の俺がある」

「嬉しいねぇ……それにあの煙たい船の中にいるよりも良い顔してるぜ、あんちゃん」

「そうか?……いや、そうだな」


 煙を蒸して時間を過ごし、吸い終わった老人が先に立ち上がった。

 吸い殻を踏み潰し、老人は歯抜けの笑顔でハラネスへと笑い掛ける。


「あんちゃんがもっとデカくなってくれりゃあ自慢話がひとつ増えるってもんよ。頑張んな」


 手を掲げ、そのまま老人は曲がり角へと消えてエンジンが掛かる音が聞こえて来た。

 休憩は終わりだ。

 トラックは走り去ってゆき、ハラネスは残るタバコを暫しの間楽しむと、サカマタの格納庫へ向けて歩き始める。

 気付けば日も傾いて、空は赤く染まり足元では影が長く伸びていた。

 様々な壁面に自身のシルエットを映しながら歩き進めると、俄かに騒々しい様子が耳に入ってくる。


「なんだ?」


 歩けば歩く程に主張を強めるその音への疑問を口にして、目的地に着いた時にハラネスはその騒々しさの根源を目にした。

 そこには当然のようにフロドが居て、何やら満足げに腰に手を当て頷いているのだ。


「何をしているんだ」

「ヨォ!ハラネス!見ろよコレ。僕の機体だ」


 フロドが顎をしゃくって示した方向には大きな人型がひとつ、サカマタの隣に立っていた。


「……イサナトリか?」

「おうよ。セファンちゃんと彷徨いてる時に見つけてな、兄貴とトルネに話を付けて貰ったんだ。開発中の新型……の試作機だ」


 そのイサナトリは隣のサカマタとはまた異なる方向で従来のイサナトリとは異なった。

 シルバーのボディは扁平で流線型。

 手脚はこれまでのものより長く、より人型に近いシルエットをしていた。


「試製サザナミ肆式。スラッと長い手脚が今まで以上に小回りを効くようにして、高速飛行時には手脚を折り畳んで推力を後方へと集中ってな」

「凄いじゃないか……俺の機体の方が力強いが」


 感嘆を漏らし、ただ既に自身の機体への愛着を持ったハラネスは愛機の素晴らしさの主張を忘れない。

 それに対してフロドは少々複雑そうな顔をして苦笑する。


「すっかりベタ惚れじゃんかよ……ま、戦う舞台が違うもんな。競うモンでもねェさ」

「どういう事だ?」


 明確に深みのある言葉にハラネスは疑問を抱き、フロドは大きく息を吐いて嫌な顔をしだす。


「ホレ、見えるか?あの機体の胸のところ……機銃だよ。あんなのクジラ相手じゃ意味がねぇ」


 クジラの分厚く、弾力に富んだ皮膚を相手に小さな鉛玉とは精々細かな傷を付ける程度にしか役に立たない。

 人で言うならば少し固い木の葉に体を擦り付ける程だろうか。

 そんなものをわざわざ取り付ける理由はひとつ。


「コイツは人と戦う事を念頭に開発されたんだとよ。クソつまらねぇ豆鉄砲積みやがって」

「だがこれに乗るんだろう。ちゃんと有効な装備を載せてくれよ」

「当然。アンタがテストしてたロケット弾やら色々装備出来るって話だからな。僕の活躍に期待しとけ」


 大きさも形もまるで違う2機を前にすると、まるでこの世界に敵など居ないかのような、そんな気持ちが湧き上がる。

 フロドは拳を突き出して、ハラネスもそれに拳を合わせる。

 いつの間にか2人だかとなった格納庫の中で、コツリと骨に響くような小さな衝撃を分かち合あい、並んでイサナトリを眺めていると不意にフロドが口を開いた。


「アンタはなんで銛撃ちになろうと思った?ちなみに僕は憧れだな。親父が銛撃ちでさ、自慢話をよく聞かされたもんだよ。それがもう楽しそうで羨ましかったんだ」


 唐突な問いと共にフロドは過去を懐かしみながら楽しげに語り、ハラネスも腑に落ちて微かに笑う。


「なんだ、お前らしいじゃないか」

「そういうハラネス殿はどんなモンだよ?なんでそんなに銛撃ちに拘る?」

「俺は……このサカマタを見て腑に落ちた。子供の時、忍び込んだ解体工場でクジラの死体を見たんだ」

「ああ、前に聞いたぜ」


 ハラネスはその威容を力強く見つめて、そこに過去に見たクジラの姿をダブらせる。


「その時から何故か俺はクジラを狩るんだと、そう信じて疑わなかったが……あれは嫉妬だったんだ」

「とんでもねェ大物だな。初めて聞いたぜクジラ相手に嫉妬とか」

「だってそうだろう。強く、大きく、速い……人間を全てに於いて上回るんだ」

「そりゃそうかもしれないけどよ……」


 それはもはや呆れの感情だ。

 石ころが山に嫉妬するだろうか?

 ロウソクが虹に嫉妬するだろうか?

 そしてまさか人がクジラに嫉妬するだろうか?

 だがハラネスは嫉妬するのだ。

 その姿に憧れて、届かずに募らせたのが嫉妬だった。


「俺はそんなクジラに憧れて、そしてそんなモノに追い付けない自分に耐え切れなかった……っ。自由に空を飛ぶクジラを見ると我慢がならない、アレよりも俺の方が空に相応しいと思いたい……!」


 徐々に熱が籠るハラネスの言葉は、その勢いを増して格納庫の中で反響する。


「イサナトリなら俺をクジラと同じ空へと飛ばせてくれる、アイツらを狩る存在へと高めてくれる!あのサカマタは俺をクジラにしてくれるんだよ……っ!」


 最高潮へと達したハラネスの語りが、そこで急速に勢いを弱める。

 圧倒されていたフロドは息をする事を思い出し、逆にハラネスは先程までの興奮は消え失せて穏やかに胸元から首飾りを引き出して連ねた骨のひとつひとつに指を這わせた。


「そしてクジラは、死んでもその全てが後に生きるものの糧になる」


 これで終わりだと、指先から骨片を溢れ落として口を閉じ、沈黙が次第に訪れた夜と共に周囲を包む。

 薄暗い中で、ただ黙ってサカマタを見上げるだけのハラネスへなんと声を掛けてよいものかとフロドは顎に手を当て悩み……結局それらを全て放棄して誤魔化すように力強く背を叩く。


「そら!僕らはまだまだ、まだまだまだまだ死ぬには早い!もっと脂が乗ってから死にやがれっての!」

「っ!……まあ、俺はともかくお前はまだヒヨッコだからな」

「オイオイ馬鹿にしやがって。クソでけェヒヨッコの羽ばたきは嵐を起こすぜ」


 バンバンと何度かハラネスの背を平手で打って、フロドは頷く。


「ヨシ、これで良い。ハラネス、アンタがやって来てからというもの僕はサポートばっかだ。アンタは不安定で危なっかしいからな、僕が付いてやんなきゃダメダメだ」

「そうか?……いや、そうだな」

「うんうん、控えめなのがアンタの良いところだ。お陰で僕の活躍もしっかり主張出来るんでな」

「なら今度の狩りでは今までとは比べ物にならない最大の栄誉をくれてやる。今までの礼だ」

「楽しみだね。それでアンタは何を得る?」


 フロドの問いにハラネスはニヤリと笑いひと言答えた。


「俺は満足を得る」

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